#61:蠢く影
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【前話のあらすじ:ヘンリクを手にかけた、その重さに苦しむアーノットの前に、五大公爵家の一角、ブラスター家当主のヘインツ・ブラスターが現れる。ヘンリク派閥の処遇のほかに、レイのことを……】
王立ラザリス学園。レイとセドリックの寮室。
「レイ様!お怪我はありませんでしたか??」
グラヴェル家は、アーノット派だったが、前線に立つことはなく、後方での指揮に終始していた。
「ああ。お前は、前線には、行かなかったようだな」レイは淡々と告げた。
「あ、はい!行きませんでした!というか、行こうとしたのを父に止められまして……僕が出れば、戦がすぐに終わってしまいますからね!」
セドリックが満面の笑みを浮かべる。
「レイ様!何を考えていらっしゃるのですか?」
レイは、学園での仮死状態の事件について、考えていた。
仮死状態になった者のうち、寮内で発見された5人は魔族の仕業。寮外で発見された2人はヘンリクの仕業。
しかし、魔族の目的が分からなかった。
魔石を埋め込むのは、リアンの手口に似ていた。
「会いに行く必要があるな……」
「レイ様!どちらへ行かれるのですか?」セドリックが追いかけてくる。
「ついてくるな」冷たく言い放ったレイを見て、セドリックがニヤニヤし始める。
「ええ、ええ、邪魔しませんとも。レイ様も男ですからねぇ。デュフフフ……」
(誤解を解くのも面倒だな……)
気色悪い声を漏らすセドリックに背を向けて、レイはリアンのいる、王宮の地下牢へと向かった。
「リアンに会いたい」レイの言葉に少し、門番たちは戸惑った。
「え、ええ……その構いませんが……」
レイは違和感を覚えながら、鍵を受け取り、地下牢へと向かう。
地下牢は薄暗かった。ジメジメとしていて、居心地がよくないことは想像に難くなかった。
リアンは、地下牢の最奥に収監されている。
「リアンに会いたい」そう言って、レイは受け取った鍵を、牢番に示す。
「あ、はい。こちらです……」
牢番がレイを地下牢の最奥へと誘う。
「それでは、私はこれで」牢番が立ち去っていく。
レイは牢番の気配が遠のいたことを確認すると、鍵穴に鍵を差し込みながら、自身の魔力を流す。
扉は、鍵と特定の人物の魔力がなければ、開かない。
今は亡き、ルーヴィンス王、レイ、ゼノの魔力のみが適用されているはずだった。
グゥゥウウ。ガキン。グウィン。
変な音と共に扉が開く。
「……!!」
リアンがいた。ただ、地に伏したまま、動かなかった。
「リアン!!」
レイが駆け寄ると、リアンの口が揺れる。
何かを言っていた。
「何だ!?何と言った!?もう一度言え!」
「……聖者……」リアンの瞳から生気が失せ、その手はぐったりと地に横たわった。
ダッダッダッ。
「何事だ!?」「……!!」
「レ、レイ男爵を捕らえろ!」
確かにこの扉は、レイとゼノの魔力によってのみ開く。
ただ、それは魔法の話。魔術は別の話だ。
レイたち、フィルス大村で設計した扉の認識システム。
勿論、他の者の魔力で開かないように対魔法のための対策を幾重にも施した。
しかし、魔術に対しては、施しようがない。原理は知っているものの、魔術はそもそも威力重視。
力技で破られてしまえば、それまでの話だ。
「レイ……」
アーノットだった。
「捕らえろ!」 アーノットの命が下る。
「縄はいらない。どこに行けばいい?案内しろ」誰もレイに縄をかけようとはしなかった。
アーノットの執務室。
そこには、山のように上奏文が積み上げられていた。
それは、五大公爵家を含む、数多の貴族たちからだった。
勿論、五大公爵家の指示だということはわかりきっていた。
「そうか……これだったのか……」
五大公爵家がレイを陥れようと、策を練っていることはわかっていた。
それゆえに、当然、今回の件も、五大公爵家の策であることは明らかだった。
「陛下!アストラル商会会頭、ゼノが拝謁したいと申し出ております」
「通せ」レイの配下の誰かが来るとは思っていた。
重厚な扉が開き、ゼノが流れるように入ってくる。
その目に、焦燥が浮かんでいることは、誰が見ても明らかだった。
「陛下……」アーノットは”礼は不要だ”と告げた。
ゼノは微かに頭を下げると、息せき切って、話し始める。
「陛下、レイ様がそのようなことをなさる御人ではないと、理解しておられるはずです。第一、レイ様と私の魔力でしか、開けられぬ以上、レイ様が入った後にそのような凶行に及べば、レイ様が疑われるのは必定。陛下、御考え直しを!」
ゼノの言うことは最もだった。あの頭の切れるレイが、自分が最も疑われる状況で、凶行に及ぶことは、少なくともありえなかった。
なにより、レイが蛮行に及ぶ奴ではないということは、アーノットもわかっていた。
「五大公爵家でしょうか?」ゼノがアーノットの目をじっと見つめる。
「余からは何とも言えん。が、その可能性もある」どこに聞き耳が立てられているか、わからなかった。
ゼノは、アーノットの立場を察したようだった。
「私の考えでは、魔族かと……」
魔族。可能性としては、考えていた。ただ、ここ何十年も見ていない。
「証拠はあるのか?」証拠がなければ、五大公爵家が引き下がることはない。
ゼノは首を横に振った。
「魔族の仕業だと証明するには、魔族を捕らえる必要がありますが、それほどの技量を持った者を……私は知りませぬ」
状況は悪くなる一方だった。
魔族を捕らえる技量を持つ者。二人の脳裏を掠めたのも、やはりレイだった。
そうなると、魔族を仮に捕らえたとしても、魔族とレイが共謀したと、五大公爵家が主張すれば、それこそ対抗策は皆無だった。
「ゼノ……三日後に文議が行われる。どちらがよいと思う?」
「私に魔族を捕らえることはできません」
「そうか……」
地下牢での大罪人殺しと魔族との共謀。
どちらの罪が重いかは、明白だった。
国外への追放か死刑か。答えは決まっていた。
「レイ様に会ってもよろしいでしょうか?」ゼノの言葉にアーノットは頷いた。
地下牢。そこは、かつてリアンが収監されていた、劣悪な環境。
ガチャン。
そんな重々しい音と共に、牢の扉が開く。
レイは静かに座っていた。
「レイ様!」ゼノが近くに駆け寄る。
勿論、レイの指示を聞くためだった。
「「聖者」と呼ばれる者、あるいは集団を探せ。魔族と関係があるということは、十中八九、冒険者だろう。それと五大公爵家を探れ。特に、リアンが死んだ日の行動を」
ゼノの震える肩に、レイがそっと手を置く。
「国を出る準備を進めておけ。内密にだ。任せたぞ」
二人の蠢く影が時折、陽光に照らされ、鈍い輝きを放っていた。
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【今話の極小情報:】今回は、五大公爵家の一つ、「グラスナー家(武)」について
・グラスナー家の当主:フェルディオ・グラスナー。
・グラスナー家の財源:傭兵や冒険者のギルド長をはじめとする、武人たちとの関係性が強い。王都の騎士団や、王直属の近衛騎士団、禁軍もすべて、グラスナー家の手中である。それゆえに、貴族からの多額の献金がグラスナー家の主な財源である。
・前北方国境守備軍長、ドビスも、グラスナー家の派閥の一人。
【お読みいただきありがとうございました】
次話は、ゼノ奔走……
ふっと二言:「投稿スピードが遅くて申し訳ないです。頑張ります!ー引き続き、応援・お付き合い頂ければ、幸いです」
――――――――【他作品も全力執筆中!】
更新をお待ちいただく間に、こちらの作品もご一読いただけると幸いです!
・『神々の審判ー選定された最強の「駒」は、五度目の「今世」、「神」を屠るー京亮ver』
「演じるのは少し疲れるけど、楽だった。でも、そっちがその気なら、「本気」で屠りに行くよ、だいぶ疲れるけどね」
理不尽な運命を、圧倒的な力で覆す!
【無双×成り上がり×転生×最強×ゲーム】—―「普通」を辞めた俺の叛逆の狼煙が高々と上がる
・『生涯、病室だった俺、異世界で自由な体を手に入れたので、天下を獲ることにした~11歳で村長になった追放貴族、現代知識と圧倒的な力で、最弱国家の最弱領地の底辺村から最強国家に魔改造する~』
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