#57:運命の時
「引き続き、応援・お付き合い頂ければ、幸いです。」
【前話のあらすじ:レイは、バンデリオン王国軍侵攻の報を受け、ジュゼップ達を迅速に殲滅することを決意。そして戦場は……】
バルコス山脈は今や、見る影もなくなっていた。
土砂が積もり、木々が倒され、道はすべて獣道に変わり果てていた。
「ジュゼップを見つけました!」ダンが気絶したジュゼップを引きずってくる。
「ドーバとマダスはどうした?」
「ドーバ!発見!」「マダスいましたぁ!」ポールとブライスは低い呻き声を漏らしていた。
「ヘンリクは何を考えている?どこまでがヘンリクの仕業だ?」
「ひっ!ばっ化け物!」「ううぅぅ」
レイの冷たい瞳に二人は足がすくんでいるようだった。
「ううっ……」ジュゼップが低い呻き声を漏らす。
「おい!起きろ!」バルムがジュゼップを蹴り飛ばす。
「うぷっ」ジュゼップが呻く。
「おい、ジュゼップ!」バルムの怒声にジュゼップの肩がビクッと震える。
「ジュゼップ、全て話せ。嘘をつけば首を飛ばす」レイは低い声を出した。
ジュゼップがコクコクと首を縦に振る。
「「傍受型の魔導アイテム」はお前の仕業か?」
「レイ、どういうこと?そんなのいつ?」
「さきのバンデリオン王国戦の時にゼノについていたものですね?」クロムが口をはさむ。
「ああ。お前一人の仕業ではないだろう?あれは、少なくとも、この国やバンデリオン王国の代物ではないだろう。どこのものだ?」
「し、知りません。ほ、本当に知らないのです」
「てめぇ、嘘つくんじゃねぇ!」ガストンが声を張り上げる。
「ほ、本当に知らないのだ!本当だ!この期に及んで嘘はつかない!」
わめき続けるジュゼップに、レイは少し息を吐く。
「ジュゼップ。ラザリス学園での仮死状態の事件のうち、最後の二つはお前の仕業だな?」
ジュゼップは顔を上げなかった。
「ジュゼップさんよぉ、死にたいのか?」バルムがドスのきいた声で脅すと、ジュゼップはあっさりと吐いた。
「そうです。私です。私の息子にやらせました。令嬢には、魔力を逆流させるブレスレットを渡させ、子息には、散歩中、人目につかないところで、贈答品として、密かに渡させました……」
ジュゼップは、がっくりと肩を落とし、縮こまっていた。
「レイ様、どうされますか?この男。なんなら、殺しますか?」ロブが笑顔で聞いてくる。
「国法で裁く。俺が裁いて、波を立てたくはないからな。とりあえず、亜空間にしまっておく」
レイたちは、軍を整えると、すぐにシレハ村へと向かった。
バルムら、ベルナ大村軍は、そのまま王都のアーノットのもとへ向かうようだった。
シレハ村。
「ゼノ。報告しろ。どんな状況だ?」
「膠着状態ですね……この私の采配とエルガン殿の武があれば、なんのこれしき……」
「膠着状態だと!?」
「あ、でも、勿論、ここから、殲滅するところでした!はい、今すぐ、殲滅に移らせていただきます。このゼノにお任せを!」
ゼノが走り去っていく。
「おかしいですな、レイ様……」ゼファールがレイに小さく漏らした。
ゼファールの言う通り、この戦は、どうにも、レイには腑に落ちなかった。
「クロム。敵を探ってこい。意味は分かるな?」
「お任せを」クロムが執務室を出ていく。
「どういう意味ですか?」ロブがゼファールに尋ねる。
「きっと、とっくにお兄様が負けていてもおかしくない。そうでしょ?」
シアの言葉にレイは頷いた。
敵は二十五万。対して、いくら国境北塞に魔導砲があるとはいえ、エルガン軍と合わせても、八万。話にならなかった。
なにより、魔導砲によって、先のバンデリオン王国との戦は、勝敗が決まった。
そのことは、バンデリオン王国もわかっているはずだった。
ムルゼフといえど、策を講じるはずだった。
それなのに、バンデリオン王国軍は、国境北塞を攻め、あまつさえ、黒岩の森には、一兵たりとも来なかった。
ゼノは強い。武はないが、知はある。
防衛戦には長けていた。実際、黒岩の森にバンデリオン王国軍が攻め込もうものなら、七割近くは相殺するだろう。
少なくとも、ゼノの策に、バンデリオン王国軍が気づいたとは思えなかった。
その違和感に気づいたからこそ、ゼノはあえて、膠着状態に付き合っていた。
「レイ様!」ゼノが駆けてくる。その顔はいつになく真剣だった。
「賊が退きました!今すぐ、王都にお戻りを!奴らの狙いはレイ様です!」
クロムが戻ってくる。
「レイ様。奴らの装備は軽装。落とす気は、元からなかったと思われます」
バルムは王都のアーノットの元へと向かった。対して、レイは、引き返して、バンデリオン王国軍の元へ向かった。
アーノットは、即位してから、さらに人を信じなくなった。そして、この時期での内乱。
王座というのはそういうものなのかもしれない。
「ゼノ、万一に備えて、そなたたちは引き続き、ここに留まれ。身軽な俺とクロム、それからニーナの部隊だけでいく」
「な!?レイ様!」ゼファールの声がする。
「ゼファール、お前を連れていくことはできない。バンデリオン王国軍が攻めてきたことは、当然、陛下も知っているであろう。その状況で、”元”とはいえ、お前を連れていくわけにはいかない」
ゼファールは、少し何か言いたそうに口を開こうとしたが、ゼノに小突かれ、思いとどまる。
「ゼノ、後を頼む」「お任せを」
夕日が空を染めていた。
その頃、王都 セント・エルメリアの少し外。
「「「殺せぇぇぇぇぇえええ!!」」」
アーノット派閥とヘンリク派閥の貴族たちが、苛烈な死闘を繰り広げていた。
「注進!陛下!レイは、バルムらベルナ大村軍を向かわせたようです。レイ自身はシレハ村に!」
「なんだと!?レイめ!父上に気に入られていたからと調子にのりおって!余は国王であるぞ!」
「お兄様!レイにそんなつもりはないはずよ!」シリスがアーノットを諫めようとする。
「アーノット、落ち着きなさい!」カリスティアもそれに続く。
リーゼロッテ王妃が、ルーヴィンス王に続いて亡くなった今、アーノットを止められる者は、もはやいなかった。
運命の時が迫っていた。
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【今話の極小情報:】今回は「ゼノの策」について
・ゼノは黒岩の森に、銀鈴草を紛れさせていた。これによって、その銀鈴草を踏んだ兵士たちは、体が動かなくなり、無防備になるのであった
・勿論、自分たちは、星の雫を服用することで、銀鈴草の痺れ及び毒を無効化している
【お読みいただきありがとうございました】
次話は、決裂!?
ふっと二言:「王座というのは孤独。特に、アーノットにとっては、父であるルーヴィンス王に認められたかったという思いがあったので……果たして、運命は……ー引き続き、応援・お付き合い頂ければ、幸いです」
――――――――【他作品も全力執筆中!】
更新をお待ちいただく間に、こちらの作品もご一読いただけると幸いです!
・『神々の審判ー選定された最強の「駒」は、五度目の「今世」、「神」を屠るー京亮ver』
「演じるのは少し疲れるけど、楽だった。でも、そっちがその気なら、「本気」で屠りに行くよ、だいぶ疲れるけどね」
理不尽な運命を、圧倒的な力で覆す!
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⇧※本作です。これからもお付き合いのほど、よろしくお願いいたします!




