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#53:新たな王

【ブクマ増加・評価いただき、ありがたいです。引き続き、応援・お付き合いのほどよろしくお願いいたします!】

「投稿が遅れて申し訳ないです……」


「引き続き、応援・お付き合い頂ければ、幸いです。」


【前話のあらすじ:ルーヴィンス王が崩御し、喪に服す間にも、アーノットの評判は刻一刻と下がっていく。そんな中、レイは、ヘンリク派閥に誘いに来たジュゼップの誘いを断り、不審事件の糸口をつかむ……】

その影は、どろりとした闇のように蠢いていた。  

人の形をしてはいるが、おぞましい殺気が漏れている。

影は、ヘンリク派閥の男子生徒の首に手をかけていた。

「—―万象を隔てる不可侵の理よ、位相の彼方にて境を定めよ。内と外を断ち、因果を拒み、干渉を否定せよ。—―境界隔絶(アブソリュート・バリア)


次の瞬間、廊下の風景がガラス細工のように砕け散り、レイと影は、星すら存在しない無限の闇へと引きずり込まれた。

「……ほう」  影が、初めてその「口」と思われる部分を歪めた。  

人の声を真似た、金属を削るような不快な発声。

「人間風情が、この私を隔離したのか。なるほど、この空間ならば、いかなる破壊を撒き散らそうとも現実には影響せぬというわけだ。賢いな、小僧」

影が膨れ上がり、漆黒のローブを纏った青白い肌の男へと姿を変える。

「私は魔族の貴族、ゼノス。人間、名を名乗る必要はない。貴様の肉体は、まもなく私の『魔術』の苗床となるのだからな」

「魔族か……やはり、アーノットの仕業ではなかったようだな……」  


「ククッ……赤を超え、蒼を捨て、光を喰らいし黒の炎よ。我が掌に凝縮し、焼き尽くしたまえ—―黒焔弾(ダーク・フレア)!」

ゼノスが短く詠唱すると同時に、大気を焼き焦がすような黒い火球が放たれる。

それは通常の火魔法のような「熱」ではなく、どす黒い魔力を帯びたおぞましいものだった。

別の世界から強制的に引きずりだしてきた、そんな異質な魔術だった。

術式を構築し、展開するのではなく、別の世界で完成したものを、そのまま転送した、そんな感じ。

 

「天より降りし白銀の王冠、大地を覆う氷の守護者、透き通る絶対の盾となれ—―氷王の(アイシクル・ディフェンス)!」

レイの前に瞬間的に形成された極低温の盾が、黒焔弾を真っ向から受け止める。

衝撃が亜空間を震わせる。

「なに……魔法で私の魔術を相殺しただと!?」

その瞬間、レイはゼノスの前から姿を消していた。


ドスッ。ゼノスの腹に、短剣が深々と刺さっている。

「馬鹿な……魔法を囮に使うとは……貴様、本当に人間か!?」


レイは素早く後方に跳んだ。魔術に刺した短剣が小刻みに揺れていた。

「ガ、アアアアアアアアッ!?なぜだ……グアアアッ!」


ドォォォォオオン。

「自爆か……大きな組織のようだな……」

断末魔の叫びとともに、ゼノスは跡形もなく、消滅した。  

亜空間が衝撃に耐えられなくなり、解除される。  

そこには、何事もなかったかのように静まり返った寮の廊下が戻っていた。

「魔力……」

ゼノスが爆発した後、大気中には、わずかに魔力の残滓が浮遊していたことに、レイは気づいていた。

ゼノスは、人間から魔族に変えられた男だった。レイにはそんな気がしていた。


ルーヴィンス王の崩御から五日が経過した。  

服喪期間が明け、エルメリア王国には新たな王が誕生しようとしていた。


王宮の大広間。  

黄金の装飾が施された玉座の前で、第一王子アーノットは跪いていた。  

大司教が神妙な面持ちで王冠を掲げ、彼の頭上に静かに載せる。

「—―ここに、エルメリア王国新国王、アーノット・エルメリアの即位を宣言する」

本来であれば、万雷の拍手と歓声が上がるはずだった。  

しかし、この即位式では、粛々とした拍手がところどころから漏れ聞こえているに過ぎなかった。


即位式の翌日。  

王宮の執務室は、ルーヴィンス王の葬儀の時以上の重苦しさに包まれていた。

「……どういうことだ!なぜ、出仕している者がこれほどまでに少ないのだ!」  

アーノットの怒声が室内に響き渡る。  

近衛騎士が、ビクッと肩を震わせる。

「そ、その……御病気とのことで……」

「なぜだ!俺は正当な遺言によって王になったのだぞ!それにもかかわらず、出仕している貴族が二割などありえないであろう!俺を侮辱してるのか!」

「それが……市井、および貴族たちの間で、信じがたい噂が流れておりまして……。アーノット陛下が、ご自身の即位を確実にするため、魔族と契約を交わしたという……」

「なっ……!?」

「さらに、学園で仮死状態になった生徒たちが、すべてヘンリク殿下派の有力貴族の令息や令嬢であったことも、その疑念を深めております。彼らは『我が子を傷つけた王には従えぬ』と……」

「ふざけるな! 誰だ、そんな根も葉もない噂を流した奴は!俺が斬り捨ててくれるわ!」

アーノットは机の上の水差しを掴み、壁へと叩きつけた。

破片が飛び散り、騎士たちが身を縮める。

税の徴収、法の執行、軍の運用。

そのすべてが、アーノットの手から零れ落ちようとしていた。


同じ頃、レイは学園の保安室を訪れていた。  

そこには、最初に仮死状態になった生徒、すなわち寮内で仮死状態を発見された学生たちが横たわっていた。

「……やはりな。魔力量が、事件前よりも不自然に増大している。魔力量だけ見れば、宮廷魔法師クラスだろう……」

 

次に、レイは学外で倒れた二人――食堂と庭園で被害に遭った生徒が横たわる、ベッドに近づく。

「魔力量は増えていない。ただ、魔力の一部が、不自然に逆流しているのか……」


レイは立ち上がり、懐から魔導通信機で、第二王女シリスを呼び出す。

『レイ!?何かわかった?アーノットは、短気だからか、自分の派閥の人間にすら、声を荒げているわ。私、貴方の村に避難してもいいかしら?』  

シリスの淡々とした声が響く。

「事情はわかりましたが、しばしお待ちを……私の方では、準備が整いました」

『準備って……何の?』

レイは窓の外、遠くに見える王宮を真っ直ぐに見据えた。

「出仕を拒否している貴族たち、アーノット陛下、ヘンリク殿下を始めとしたすべての王族、そして被害に遭った生徒の親たち。彼らを王宮へ呼び出してください。私はその下の、王宮前の大広場で『実演』を行います。勿論、民衆たちにも周知していただきたいのです」

『実演!? 一体何をするつもり?』

「この事件の真相、そしてアーノット殿下の仕業ではないこと。それを、全国民と貴族たちの前で証するつもりです」

「本当に大丈夫なの?勿論、集めることはできるけど、失敗は許されないわ」

「わかっています。ご安心を。アーノット陛下の派閥に入る気は、シリス殿下と同じく、毛頭ありませんが、真実を明らかにするつもりです」

「……ありがと、レイ……二日後でいいかしら?」

「構いません」 レイは迷いなく答えた。

シリスが短く息を呑む音が聞こえる。

『……分かったわ。もし、貴方が失敗したら、一緒にどこかに亡命でもしましょ。ふふっ……』

通信を切られ、レイは静かに目を閉じた。  

二日後。  

勝負の時は迫っていた。

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

【今話の極小情報:】今回は、「魔法と魔術の違い」について。

魔法と魔術の属性は同じ。

魔法は、自身の体内の魔力を抽出して、術式を創造し、構築した後、展開するもの。

対して、魔術は、自身の体外にある魔力を自身の体に取り込みつつ、その魔力に属性を直接付与し、放つもの。

魔術は、自身の体内にある魔力が多く、さらに、魔力を内包する器が広くなければ、魔術を使うことは不可能である。

また、体外の魔力を一気に取り込む必要があるため、魔族の様に、角や翼といった、魔力の貯蔵器官が必要である。

【お読みいただきありがとうございました】

次話は、不穏な動きが……


ふっと二言:「投稿が遅れてしまい、申し訳ないですー引き続き、応援・お付き合い頂ければ、幸いです」


【12:00~14:00の間に、新作を公開する予定でしたが、18:00~に私用でずれ込みそうです。申し訳ないです。:新作は、各国の神話と異世界、そして地球を融合させた長編(第1章~第5章までを予定)です。【成り上がり】×【無双】×【最強】×【育成】×【神】:ご一読いただけると、幸いです。】

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