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#52:仮死状態

【ブックマーク増加、リアクション増加、ありがとうございます!大変、執筆の励みになります!】

「昨日は投稿できず、申し訳ないです。次は、12:00~13:00の間に投稿します!」


「引き続き、応援・お付き合い頂ければ、幸いです。」


【前話のあらすじ:学園の入学式を迎えたレイ。セドリックと寮で相部屋になるという悲劇はあったものの、学園生活は、無事スタート。しかし、ほどなくして、学園では、不審な事件が続き、それにより、アーノットの評判は刻々と下がっていくのであった……】

空までが悲しみに暮れているかのような重苦しい曇天。  

王国全土に響き渡った鐘の音は、エルメリア国王ルーヴィンスの崩御を告げる弔鐘であった。

王都は深い沈黙に包まれた。

五日間の服喪期間中、すべての娯楽は禁じられ、人々は黒い装束を身に纏い、王宮へと続く大通りで祈りを捧げた。

しかし、その静寂の裏側では、亡き王の遺言を巡って、どす黒い欲望の渦が巻き起こっていた。


「……次期国王は、第一王子アーノットとする」

遺言の内容が公開された瞬間、廷臣たちの間に軽い動揺が走った。

第一王子アーノット。

短気で短絡的にしかものを考えられない男。

それが、廷臣たちの評価だった。

さらに、アーノットには、ラザリス学園での「連続仮死状態事件」の容疑がかかっており、その噂は、今や市井まで広がっていた。


即位式は服喪期間が明けた直後に行われる予定となっていた。

王宮では、その準備が厳かに進む一方で、不穏な囁きが止むことはなかった。

「本当に、アーノット殿下で良いのか?」

「学園での評判を聞いたか? 逆らう者を次々と不審死させているというではないか」 「それに引き換え、第二王子ヘンリク殿下は聡明で、軍部からの信頼も厚い……」

アーノットの噂同様、その声も、また、奔流となって王都の市井にまで流れ出していた。

 

服喪期間の三日目。

レイは、呼び出しを受けていた。  

相手は、第二王女シリス。

彼女はレイに対し、王都の北にある古びた広場へ来るよう、伝言を寄越した。


指定された場所に現れたのは、質素な町娘の格好に身を包み、フードを深く被った少女だった。

勿論、レイもまた、魔法で髪の色を変え、目立たない冒険者のような装いでその場に立っていた。

無論、今、二人が会えば、王位継承権争いに関わる動きとみなされ、厄介なことになるからであった。


「……来てくれたのね、レイ」  

フードの隙間から覗くシリスの瞳には、疲労が色濃く浮かんでいた。

「こんな状況で呼び出して悪いわね」

「事情はわかっております。王宮は大変なようで……」  

レイの言葉に、シリスは力なく首を振った。

「大変どころじゃないわ。アーノット本人の耳にも入っているもの。自分の部屋で家具を壊して暴れ回っているわ。『なぜ俺を認めない!』ってね。……あんな態度じゃ、火に油を注ぐだけなのに」


シリスは周囲を警戒するように一度視線を走らせ、声を潜めた。

「今、王宮は地獄よ。アーノット以外の王子たちが、こぞって臣下を取り込もうとしているわ。特に第二王子のヘンリク派の動きは露骨だわ。あいつらはアーノットの評判が悪いのをいいことに、自分が王位を狙っても正当性があると考えているのよ。市井に流れているアーノットの悪評……あれの半分以上は、ヘンリクたちが放った嘘よ」

「……あとの半分は、事実(自業自得)ということですか」

「ええ。でも、私はアーノットといた時間が長いから分かるわ。アーノットは確かにプライドが高くて、傲慢で、臆病な男よ。でも……自分を破滅させるような大それた計画を立てられるほど、頭が回る男じゃないわ。レイもわかっているでしょ?悲しいけどね。とにかく、少なくとも、私の知るアーノットには、そんな度胸はないわ」

シリスの言葉には、アーノットが得体のしれない策謀の渦中にいることへの危惧が含まれていた。

「誰かが、裏で糸を引いているということですか?アーノット殿下を陥れるために」

「私はそう確信しているわ。どっちについてほしいと頼みに来たわけじゃないわ。真実を明らかにしてほしいの。それが私の頼みよ。私はこれ以上、動けないわ。他の王子の目があるから」

レイは無言で頷いた。

シリスの危惧は、レイが抱いている違和感と完全に一致していた。


シリスと別れ、学園へと戻る道中。  

人気の途絶えた森の入り口で、一人の男がレイを待ち構えていた。

派手な装飾の外套を羽織っているが、その中身は肥え太り、卑屈な笑みを顔に張り付かせた中年の男だ。

「おやおや、レイ殿。こんなところでお会いできるとは、運命に感謝せねばなりませんな」

レイはこの男を知っていた。面識はなかったが、嫌いな男だった。

「……セルドス町の町長、ジュゼップ殿に御挨拶申し上げます」


ジュゼップが卑屈な笑みを浮かべて歩み寄ってくる。

その背後には数人の私兵が控えている。

「何を、そんな、頭を上げてくだされ。本日は、我が主君であらせられる第二王子、ヘンリク殿下からの『贈り物』をお持ちいたしました」

ジュゼップは懐から羊皮紙を取り出し、広げて見せた。

そこには、ヘンリク派に加われば将来の爵位と広大な領地を約束するという、生々しい利権の言葉が並んでいた。

「レイ殿、貴殿のような御方が、今にも崩れそうな殺人鬼の泥舟に乗っている必要はございません。ヘンリク殿下こそが、この国の真の主。今こちら側に付いていただければ、新時代における最高位の椅子をご用意いたしましょう」

ジュゼップの瞳には、底知れぬ強欲と傲慢さが透けて見えていた。

レイは冷ややかな視線で、差し出された羊皮紙を一瞥した。


「お断りします」

「……は?」  ジュゼップの笑みが凍りつく。

「私はどちらの派閥にも興味はありません。ましてや、自分の利益のために国を揺るがすような真似をする者たちに、貸す肩など持ち合わせておりませんので」

「これだから卑しい出の者は!言葉を選べ! これはヘンリク殿下からの直接の誘いなのだぞ! もし断れば、貴様もアーノット派の残党として処刑してやる!それでもいいのか!」

「思うに、学園の事件はアーノット殿下の仕業とは思えませぬ」

「な、何を根拠に……!」

「……失礼、用が済んだようですので帰らせていただきます」

レイは背を向けて歩き出した。

「……貴様! 後悔させてやるぞ! その高潔さがいつまで持つか、牢獄の中でじっくり後悔するがいい! 薄汚い平民上がりが……!」

背後から飛んでくるどす黒い悪態を、レイは聞き流した。

彼らのような小物に構っている時間はなかった。

       

学園に戻ったレイは、事件の内容を整理していた。  

現在、仮死状態になった者は合計で七人。  

そのうち五人は、寮の中で仮死状態になっていた。

「ヘンリク派の貴族の令息または令嬢」「学業成績が悪い」以外の共通点としては、彼らのうちの五人が「寮の一階」に部屋を持っていたことだ。

一階は、高層階に比べて窓からの侵入が容易であり、逃走経路も確保しやすい。

そして、犯人が内部の人間、あるいは寮の構造に詳しい者であれば、人目を避けて行動することは十分可能だった。

寮内での五件は、明らかに「物理的な侵入」を前提とした手口に見えた。

そして、レイには、それが作為的に見えていた。

魔法を使えば、魔法痕(まほうこん)が残る。

だからこそ、魔法を使わずに侵入できる一階を選んだ。

辻褄は合っていたが、腑に落ちなかった。

魔法を使いたくない理由がわからなかった。魔法痕が残ると言っても、”魔法が使用された”ということしかわからないからだ。

魔法の”質”がわかるだけなのに、それをあえて隠す理由がなかった。

相当な魔法の使い手だ……とか、そういう抽象的な話。

証拠になるとは思えなかった。


そして、残りの二人。  

一人は食堂での食事中。もう一人は、白昼堂々、庭園を散歩している最中に、突然、仮死状態になっている。  

この二人の部屋も確かに一階だったが、事件が発生したのは自室内ではなかった。

「寮内での五人と、学内での二人……。明らかに状況が異なりすぎる」

「……まるで、別の意図を持った二つの事件が、同時に進行しているようだ」


そんな思考を巡らせていた時だった。  

レイの背筋を、氷のような寒気が走り抜けた。

「……っ!?」

全身の産毛が逆立つ。  

それは、これまで学園内で感じてきたどの魔力とも違う、異質な波動だった。  

禍々しく、冷酷で、生命の根源を否定するような、どろりとした闇の感覚。

「この魔力……まさか……!?」

レイは即座に立ち上がった。  

魔力の源泉は、やはり一階のようだった。  

レイは音を立てずに扉を開け、廊下へと出た。  

セドリックのいびきが微かに響く。


夜の静寂に包まれた寮内が、今は異常な圧迫感を伴っていた。

一歩、また一歩と階段を下りる。  

階下に近づくにつれ、空気は重く沈み、鼻を突くような不快な臭いが強まっていく。

(来る……!)

レイは右手に魔力を集中させ、いつでも迎撃できる態勢を整えた。  

曲がり角の先、暗がりの奥に、輪郭の定まらない「影」が揺らめいているのが見えた。  

それは人の形をした化け物だった。

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

【今話の極小情報:】今回は、「ルーヴィンス王の死」について。

・ルーヴィンス王が亡くなったことにより、多くの廷臣たちは安堵していた。というのも、ルーヴィンス王は、レイのフィルス大村の視察を終えて、王都の政治の在り方についても、”レイ”から意見をもらうと廷臣たちに告げていた。

本来であれば、王都がさらに発展するであろう”吉事”だったが、廷臣たちの多くは、レイの出が卑しいことや、男爵位であること、そして能力が高いことを理由に、レイを頼ることに反対していた。


しかし、本当のところは、自分たちの不正や横領がバレるのが怖かっただけである。

ルーヴィンス王が、民のために慈善政策を行うよう、廷臣たちに命じたが、廷臣たちは、施行のための費用の多くを着服していた。

それゆえに、民にルーヴィンス王の政策が伝わることはなかったのである。

【お読みいただきありがとうございました】

次話は、不穏な動きが……


ふっと二言:「読者の皆様の中には、ルーヴィンス王の崩御には、なにか裏が……と深く考えてくださる読者の皆様もいらっしゃるかもわかりませんが、"裏"はないです。筆者的には、"裏"をつくりたかったのですが、筆者のちい脳的には、裏をつくれなかったようです……ついに、ジュゼップが降臨しました。ノクティアは??いつ??と思われている(どなたも思っていないかもですが……)読者の皆様、この事件に幕が下りた後、登場です。ー引き続き、応援・お付き合い頂ければ、幸いです」


【12:00~14:00の間に、新作を公開する予定です。新作は、各国の神話と異世界、そして地球を融合させた長編(第1章~第5章までを予定)です。【成り上がり】×【無双】×【最強】×【育成】×【神】ご一読いただけると、幸いです。】

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