#50:初めて救われた
「投稿が遅れてしまい、申し訳ないです。」
「誤字報告について:誤字があり、申し訳ないです。加えて、誤字報告感謝です!」
「・#14の「金貨一石」の箇所修正しました。ご指摘いただくまで、"誤字"に気づきませんでした!教えてくださり、ありがとうございます。また何かお気づきの点がございましたら、教えていただけると幸いです。筆者も、今一度、全文を確認してみます。
・#11の主人公の"名前ミス"は、修正しました。ご指摘ありがとうございます!最も大きな"ミス"、教えてくださり、感謝です!また何かお気づきの点がございましたら、教えていただければ幸いです。筆者も、今一度、全文を確認してみます。
・#4の極小情報の"乙"の部分ですが、わかりにくくて申し訳ないです。筆者としては、乙といういわば、「お疲れ様」という皮肉で使用しています。外面を取り繕っても、中身が伴わなきゃ意味がないよね?という筆者的には、"皮肉"めいた意味で使っていて、その後の、"オワコン"という言葉も、それを受けて使っております。文体を崩す形にはなっているので、読者の皆様が、誤字だとお思いになるのも当然のこと。反省して、ルビを振っておきました。ご指摘、ありがとうございます。細かなところまで気づいていただけて、ありがたい限りです!
誤字報告を頂いたのは、初めてでしたので、対応にあたふたしてしまいました。申し訳ないです。
また、文章を読んで、親切にも誤字報告をくださり、ありがとうございます。筆者の至らなさを痛感するばかりですが、これからも、応援・お付き合い頂ければ、幸いです。
~ブックマーク・評価・リアクション・感想等くださると、執筆の励みになります!!~
本日の投稿は、この#50からスタートです!どうぞよろしくお願いいたします!
【前話のあらすじ:ヘルヴァンの描く未来を聞き、その意味を理解したクロム。一行は、王宮を脱出し、クロムとキールはレイを連れて、「黒岩の森」に……】
(誰かいる……!)
黒岩の森は、夜になると呼吸を始める。
風が梢を撫でる音も、草を踏む微かな圧も、すべてが何かの意志のように、不気味に感じられる。
けれど、今のは違った。 “隠している”者特有の気配だった。
俺は足を止めた。 キールも察したのか、レイを抱いたまま、わずかに距離を取る。
「先に言っておく」
小声で告げる。
「危なくなったら、俺が時間を稼ぐ。迷うなよ。王都に入ると、“エクリプシア”という店がある。有名な店だから、わかるはずだ。そこに向かえ」
クロムが、個人として、買った土地に建つ、娼館兼奴隷商館。
クロムのバンデリオン王国外の任務用の拠点の一つだった。
“エクリプシア”の実態は、クロム個人にはらわれる、情報と資金の集積所だった。
キールは頷いた。 月明かりが、その瞳を白く縁取る。
「……必ず」
「誰だ?」 少し高い声が闇を裂いた。
男が立っている。
足元に、目の光るゴブリン。手には淡く脈打つ魔石。
ゴブリンの様子が変だった。さらに魔石を与えているのか?
魔物は、通常、魔石を一つしか持たない。
そして、魔石とはいわば”心臓”のようなもので、一体の魔物に、二つ存在することはない。
男が近づいてくる。
(チッ……面倒だな……)
「通りすがりだ」
「そうか。この森を通りすがる者はいないがな」
男の指先が揺れた。 ゴブリンが跳ぶ。
速い。そして、通常より踏み込みが深かった。
刃を振るう。いなす。足を払う。
キリがなかった。斬っても斬っても、増えてくる。
「今だ」
俺は視線だけでキールに合図した。
キールが音もなく後退し、闇に紛れて、走り去っていく。
「見えていますよ」
男が魔石を握り直す。
ゴブリンが数体、キールを追いに行ったようだった。
「ちっ……!」
俺は間合いを詰め、次々と薙ぎ払った。
集中が乱れる。こんなことは初めてだった。
キールの気配が、徐々に遠ざかっていく。
ハァハァ。
「いやぁ、正直驚きましたよ!どこかの傭兵か何かですか?とにかく、貴方ももらいますよ」
パッ。
粉が舞った。 体が沈むような、甘ったるい匂い。
「……眠り粉」 「正解です。さきほどから、撒いていたんですけどねぇ。貴方は常人ではないようなので、私のお手製です。」
視界が滲む。 男が近づく。
意識が沈んでいく。
最後に思ったのは、キールたちが森を抜けたかどうか、それだけだった。
目を開けたとき、森の匂いは消えていた。
石造りの部屋。
拘束はない。ただ、身体が少し火照っていた。
視線の先で、檻の中の魔物が唸っていた。
男が右手を軽く振る。
次の瞬間、魔物は閃光と共に消えた。
ドォォォオオン。
「……なるほど。爆発か」
「ご名答。君にも同じ魔石を入れさせてもらいましたよ。あの女は取り逃がしてしまいましたが、大した脅威にはならないでしょう」
男は微笑む。
「私はリアン。君の名前はクロムですね?名前など、どうでもいいですが、指先一つで、どうとでもできる、それをゆめゆめ、忘れないでくださいね。貴方の命は、私の手のひらにあるということを」
俺は黙っていた。どこで、自分の名前を知ったのかはわからなかった。
ただ、どうやら、赤子がいたことには気づいていないようだった
本来なら、ここで終わらせていた。自害は、暗殺者の礼儀だった。
未来の話。ヘルヴァンの言葉が蘇る。
初めて、生き延びたい、と思った。
甘い幻想かもしれない。自分に”未来”はないのかもしれない。
けれど、その”淡い甘さ”を、手放したくなかった。
「命令は単純です」 リアンが言う。
「固有スキルを持つ者に魔石を埋め込むこと。この魔石は、制御装置にもなりますし、爆発装置にもなります。爆発の威力はお分かりかと」
「それと盗聴も可能です。隠し事はできませんよ」
どうやら、音声が振動波となり、リアンの起動装置に届く。
どこかで、音声を遮断できれば、盗聴されない。
そう思ったものの、少なくとも、自分には、遮断する術はないように思えた。
最初の標的が「ゼノ」だった。
「王都にゼノという者がいます。商人くずれの男です。固有スキルを持っています。魔石を埋め込んで来てください。くれぐれも他人者に悟られないように、穏便に頼みます」
裏稼業と何ら変わらなかった。
暴漢に襲わせ、俺が助ける。
恩を売る。
そういう筋書きだった。
ゼノ。
軽薄そうで、無謀で、すぐに前に出る。
けれど、誰よりも周囲を見ている、そういう奴だった。
二人きりになることはなかった。
会うときは、常に市井だった。警戒心が強かった。妹のシアがいたからだろう。
妹に”ゾッコン”の兄。よくある構図だ。
魔石を埋め込む隙はなかった。
ある日、ゼノが言った。
「二人で話したい」
扉の外には妹のシア。
完全な密室ではないが、魔石を埋め込むには絶好の機会だった。
ゼノは笑っていた。
「お前のこと、調べたぞ」
心臓が一拍、跳ねる。表情は変えない。
「何も出なかった。全くといっていい程な。普通の人間。王都に来て、暮らしている多くの住人の一人」
当然だった。裏稼業の者は、偽の経歴を複数持っている。バレることはなかった。
「だから逆に分かった。勘っていうやつだな。俺の勘は、よく当たるんだ。そうだな、足がつくのを嫌う仕事だろ?暴漢を助ける動きは手を抜いていた、そうだろ?」
俺は黙っていた。
ゼノは続けた。
「俺はお前を友だと思ってる」
友。
信じられない言葉だった。
「暴漢から助けてくれたからじゃないぞ。お前がいい奴だからだ」
「……あれが仕組まれてたとしてもか?」
俺は思わず聞いた。
ゼノは笑った。
「関係ない。お前が今、ここにいる。俺を支えてくれている。それだけで十分だ」
胸の奥が、妙に温かくなった。
魔石を埋め込む手は、動かなかった。
それで、結局、今に至る。
キールは、エクリプシアに辿り着いたことがわかった。
「赤子はどうした?」
魔物に追われたとき、このままではレイも捕まる。
だから茂みの中に隠して、自分が囮になった。
魔物は、通りかかった冒険者が倒してくれた。
急いで戻ったが、レイ様はいなかった。
キールからその事を聞いて、王都中を探したが、結局見つからなかった。
運命とは酷なものだ。
レイがゼノに会いに来た。
生きていた。なぜか安心した。
迂闊には動けなかった。
キール同様、いや、キール以上にレイの存在をリアンに知られるわけにはいかなかった。
「レイという者がいます。シレハ村の村長をやっている男です。魔石を埋め込んで来てください。固有スキルを持っています。それとゼノは中々、埋め込む機会がないようですね?引き続き、機会を伺ってください。隠密に済ませるのが、最も重要ですからね。なに、まだ焦るほどでもないですよ。頼みましたよ」
悟られるわけにはいかなかった。
そうこうしているうちに、時が来た。
約束の時が。
「それでいい」ヘルヴァンはそう言った。
進むしかなかった。レイの成長は凄まじく、小細工などしなくても、バンデリオン王国の王座につきそうだった。
自分の仕事は終わった。
ヘルヴァンの描いた未来。少なくとも、自分ができることはやった。
この先、どうすればいいのだろうか?だまし続けた男がもう一度、信用を得る。友を得る。未来を生きる。
それでも、”未来”に絆されている自分が、矮小な存在に見えた。
ゼファールがレイに話したはずだ。
レイは間違いなく、来る。魔石を埋め込む最後の機会。
そこで、俺は初めて救われた。
レイ・バンデリオン。ただの赤子。自分が初めて、自分の意思で護った者。
いつしか、護られていた。
「レイ様、私は貴方にお仕えしたい。こんな私でもお許しいただけますか?」
本心だった。
「救われたのは、俺の方だ。俺は、この手でヘルヴァン、ベント、ゴラン。護ってくれた者たちの息の根を止めた。苦しい。そんな一言では済まされない。死にたかった。自分を殺してやりたかった。天下を得るために、自分を護った者を手にかけた自分を」
「キールに言われた。「坊ちゃま、クロムを救ってはいただけませんか?」。救われた。お前がそう言った時、俺もお前に救われた。護ってくれた者を自分の手で救えた。ヘルヴァンたちの業は俺が背負う。だから、俺に仕えろ。俺と共に生きてくれるか、クロム?」
クロムは静かに頭を下げた。
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【今話の極小情報:】今回は、「クラウン」と「ヴィルヌ」について。
ーギルドとは、商業ギルドや冒険者ギルド、鍛冶ギルドなどその道の専門家が集っている、協会のような集会所のことー
・「クラウン」:暗殺ギルド 第一位。「クラウン」は元々、クロムを引き抜こうとして、何度も声を掛けていた。しかし、そのクロムに、メンバーを殺され、初めて依頼に失敗(依頼者はバーツ)。「クラウン」のボス、バートレットは、クロムに恨みを持っている。
・「ヴィルヌ」:暗殺ギルド 元第二位。「ヴィルヌ」は、暗殺ギルドとして、名を馳せていたが、ある時、突然、組織ごと消えた。どこかに存在するという人もいるが……
【お読みいただきありがとうございます!】
次話は、やっと学園編!!
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ふっと二言:「クロムたちが「黒岩の森」からエルメリア王国を目指したのは、国境には、反乱軍がいることと、森は検問がないからです!!ー引き続き、応援・お付き合い頂ければ、幸いです」




