#49:どうかご無事で
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「投稿が遅れてしまい、申し訳ないです。明日は朝の6時に投稿します」
【前話のあらすじ:ヘルヴァンたちの計画にのることにしたクロム。ヘルヴァンはそんなクロムに「奇妙な約束」を持ちかける……】
「先のことで、そなたに頼みがある」
ヘルヴァンの声は、外の喧騒とは対照的に、静かだった。
石室の壁に映る影が、小刻みに揺れていた。
遠く、金属がぶつかり合う乾いた音が断続的に響く。
どうやら、ゼファールがまだ外で反乱軍を踏みとどめているようだった。
「未来の話だ」
未来。
信じてこなかった言葉の一つ。
暗殺者にあるのは、始まりと終わりだけ。
明日が来る保証など、どこにもない。
そういう世界で生きてきたからなのか、そういう世界から抜け出そうしているからなのか、どこか「未来」という言葉が新鮮に感じられた。
「お前とキールがレイ様を連れて国外へ出れば、ムルゼフは王位へつくだろう」
ヘルヴァンは地図に指を置いた。揺れる灯りの下、その指先だけが妙に確かに見えた。
「最初は摂政と名乗る。レイ様の生死を探らせながら、慎重に権力を握るだろう」
「そして頃合いを見て、第五王子は死んだとでも発表して、正式に王位に就く……」
俺が言うと、ゴランが低く鼻を鳴らした。
「やりかねねぇな」
「その時、我らは従うつもりだ」
ヘルヴァンの視線が鋭くなる。
「従わなければ殺されるだろう。逆に、従えば生き残れるはずだ。無論、信用されることはない。最前線へ送られ、激戦地で使い潰されるだけだろう。いわば、消耗品としての役割を強いられることになる」
淡々と語られる未来図。
従えば、それはきっと、明るい未来ではないはずだった。
ヘルヴァンやベント、ゴランたちもそれはわかっていた。
その上での、覚悟の選択だった。
「やがてムルゼフは、派閥を一つにするだろう。勿論、物理的にだが。そして、内乱が収まり、国が安定すれば、隣国のエルメリア王国へ向かうだろう。エルメリア王国の土地は豊かだからな」
部屋の空気が重くなる。
「安定は、欲を生む。特にムルゼフのような輩は、外へ力を示したくなるはずだ。必ず、エルメリア王国に侵攻するだろう」
クロムは腕を組んだ。
「ずいぶんと先を読んでいるが、それは、今、必要な事なのか?」
「必要だと思う。これは、私の思いつきだ。だが最も確実な方法だろう」
ヘルヴァンは、真っ直ぐ、クロムを見つめた。
「もし、エルメリア王国を攻めることがあり、なおかつ、もし我らが生きていれば、必ずや前線に送られるはずだ。その時に我らを殺してくれ」
それが奇妙な約束の始まりだった。
「戦で手を抜くことはない。我らだけでなく、兵の命がかかっているからな。ゆえに、もし我らが戦に勝てば、そなたたちは、レイ様を連れて、安全な場所へ落ちのびてくれ。そして、戦の勝敗に関係なく、そなたは、我らを殺せ」
クロムはその意味が理解できなかった。
奇妙な依頼だったからだ。「殺してほしい」ではなく「殺せ」。
「なぜ俺なのだ?」
「他に託せる者はここにおらん」
「ムルゼフの下で責任を問われ、見せしめにされるより、自ら選んだ終わりの方が、我らとしても納得がいく。まあ、我欲というやつだな」
ベントがヘルヴァンに続いた。白い歯を見せ、明るく笑っていた。
「わかった。ただ理由を説明しろ。興味がある」
「ふむ。我らが死ねば、ゼファールを投獄という形で守れる。ゼファールは有能だ。ゼファールを失うということは、ムルゼフというより、バンデリオン王国にとって痛手だ。わざわざ国力を大きく落とす真似はさすがのムルゼフもしないだろう」
外で響く衝撃音が一段と、強くなっていた。
ゼファールが持ちこたえているが、限界が近づいているようだった。
「何が言いたい?それならば、今、そなたらをここで殺し、ゼファールと第五王子とキールを連れて行くのと同じだ」
「平たく言えば、ゼファールは堅物なのだ」
「我らがいる限り、ゼファールは国を捨てぬ。我らとゼファールは長い時間を共に過ごした。それは、時に足枷となるのだ。我らが死んでも、代わりはいくらでもいる。だが、ゼファールの代わりはいないのだ。そなたもわかっておろう?あやつの武は」
たしかにゼファールは強かった。恐怖という感情を理解したのが、ゼファールと対峙した時だった。
「それに、我ら三人は同じ軍の将と副将。もし、誰かが生き残れば、残った者も責めを負うことになる。そうすれば、ゼファールにとっては、より重い足枷となる」
「複雑な男なのだな。ゼファールという男は」
「そうだな。忠の男でもあり、義の男でもある」
忠義。また知らない言葉だった。
「少なくとも、我らが死ねば、ムルゼフはここぞとばかりに、ゼファールに敗戦の責を問うだろう。そして、ゼファールの妻子を人質に取るはずだ。そうすれば、ゼファールが、ムルゼフに逆らうことはなくなるからな」
「つまり、家族を救い出すことで、恩を売り、ゼファールとやらが恩義を感じたことにつけ込んで、第五王子のもとに連れて来ればいい、そういうことか?」
「そういうことになるな」ヘルヴァンは少し目を細めた。
自分が既にいない未来を語っている。
「正当な王子という旗印。家族を救うという理由。両方が揃えば、ゼファールは国外へ出るだろう」
「我らもできることはする。無為にこの命を散らすわけにはいかない」
「エルメリア王国に侵攻するまでに、レイ様側に密かに忠誠を誓う者たちを少しずつエルメリア王国へ移す。商人、傭兵、学者……身分を変え、名を変え、密かに繋がりを保つ。その組織はいずれ、レイ様の再起の際の手足になるようにそなたが育ててほしい」
クロムはしばらく黙った。
ヘルヴァンは十五年と推測した。
しかし、それは十年先、あるいは二十年先のことかもしれなかった。
その時、自分は何をしているのだろう?
暗殺者に戻っているのだろうか。それとも――。
「……その時が来れば、引き受ける」 短く答えた。
ゴランが笑った。
「未来を語る暗殺者か。なんか似合わねぇな」
「黙れ」 どこか胸の奥が妙に静かだった。
そうと決まれば、動きは迅速だった。
ゴランとベントが扉を開き、回廊へと飛び出していく。
「追え!第五王子の護衛だ!捕らえて、居場所を吐かせろ!!」
怒号と足音が遠ざかっていく。
ヘルヴァンは白い毛布を丸め、抱きかかえた。
「これで少しは追手を引き付けられるはずだ。心配するな。これは、道中で燃やしておく。レイ様は、戦火の中で、お亡くなりになった。それが今は、事実だ」
ヘルヴァンはレイの額に愛おしそうに触れた。
「レイ様。どうかご無事で」
ヘルヴァンは、クロムたちに背を向ける。
「頼んだぞ」
扉が閉まる音がする!
「ヘルヴァンだ!」「逃がすな!」「第五王子がいるぞ!」
「行きましょう」
キールと共に裏庭へ走る。 月明かりが石畳を照らしていた。
敵の姿はなかった。
地下道の蓋を開けると、湿気と冷気が押し寄せてくる。
「……ここを通るのですね」「安全だからな。誇り高い連中は、こういう場所を嫌う」
暗闇を進んでいく。
水滴が滴り落ちる音が、時折、鮮明に響いてくる。
やがて出口に辿り着いた。外に出ると、黒岩の森の匂いが肺に満ちてくる。
(誰かいる……!)
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cf.)F:1~20 E:21~50 D:51~90 C:91~150 B:151~220 A:221~260 S:261~300
【今話の極小情報:】引き続き、読者の皆様が忘れていらっしゃると思い、お節介を少し。
今回、ご紹介するのは、ヘンリクとバーツのステータス。
一応、二人の初登場は#43の「第二王子のヘンリク」と#45の「「メルド」のボス、バーツ」として登場しております。
現在、ヘンリクは、アーノットと喧嘩中!バーツは、死んだと思われています……
ヘンリク:【名:ヘンリク 年齢:25】【MP:1000】【ステータス】武力:160.B(220.B) 知力:200.B(220.B) 統率:210.B(230.A) 政治:200.B(210.B)【サブステータス】兵法:220.B(220.B) 馬術:150.C(160.B) 陸戦:220.B(220.B) 海戦:170.B(180.B) 工作:160.B(170.B) 諜報:140.C(150.C) 農耕:150.C(150.C) 商業:140.C(150.C) 建築:160.B(160.B) 成長:140.C(140.C) 忠誠:--【固有スキル】--【スキル] 剣術(B) 体術(B) 風魔法(B) 探索(D)
バーツ:【名:バーツ 年齢:40】【MP:100】【ステータス】武力:240.A(250.A) 知力:200.B(230.A) 統率:250.A(250.A) 政治:100.C(100.C)【サブステータス】兵法:200.B(200.B) 馬術:160.B(170.B) 陸戦:220.B(250.A) 海戦:220.B(250.A) 工作:250.A(260.A) 諜報:250.A(260.A) 農耕:30.E(50.E) 商業:100.C(130.C) 建築:120.C(130.C) 成長:150.C(160.B) 忠誠:--【固有スキル】--【スキル] 剣術(B) 投擲術(B) 体術(A) 探索(A)
【お読みいただきありがとうございます!】
次話は、ついにリアン登場!!
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そっと一言:「投稿が遅れて、申し訳ないです。クロムの回想、もう少しだけお付き合いください……引き続き、応援・お付き合い頂ければ、幸いです!」




