#46:頼みがある
「評価人数、増加、感謝です!とても執筆の励みになります!!」
【前話のあらすじ:クロムはレイに自身の過去を語った。孤児だったこと。「メルド」という暗殺ギルドに所属していたこと。そして、レイの暗殺の依頼を受けたこと……】
「……ムルゼフは、待てなかったのです。というのも、グリフィス王は昏睡状態とはいえ、崩御なされば、国法により、王位継承権はレイ様に移ります。そうなれば、自身が摂政をやるにも、レイ様の許可が必要になるのです。そうなれば、レイ様の側近らが、ムルゼフの要求を吞むことはないでしょう。なにより、グリフィス王を蝕んでいる毒は、すでに、取り除けるものではなく、いつ崩御なさっても不思議ではありませんでした」
「そこで、ムルゼフは、我らに渡すはずだった依頼報酬の一部を使って、軍の大半を抱き込み、さらに、文官のほとんどを自身の手中に収めました。もとはといえば、我らが二の足を踏んだこと、さらには、「メルド」が秘密裏に送っていた暗殺者が、ヘルヴァンたちによって、始末されていたことが大きな要因でした……」
「とにかく、ムルゼフは、一気に反乱を起こしたのです。第一から第四王子を自らの手で暗殺し、グリフィス王をも刺殺しました。一晩にして、グリフィス王の派閥は粛清され、ムルゼフが実権を握ったのです」
クロムたちの計画は根底から崩れ去った。
ムルゼフが王宮を掌握した以上、クロムたち「メルド」に、もはや選択肢はなかった。
ただ、そのムルゼフにも一つだけ、計算違いがあった。
グリフィス王に忠誠を誓い、金にも恐怖にもなびかない者たちが、精強だったことである。
「ムルゼフは、当初、反乱を起こし、グリフィス王や第一王子をはじめとする、王子を暗殺し、レイ様を殺す気はありませんでした。まず、第一に、レイ様が生まれて間もなかったこと。すなわち、御しやすいと思ったのです」
「第二に、レイ様の派閥やグリフィス王の派閥が、自分になびくと思ったこと。王宮は、ムルゼフの手の者で埋まっていると言っても過言ではないほど、多くの者がムルゼフになびきました。特にグリフィス王がお亡くなりになってから、レイ様のもとに残った者は、ほとんどおりませんでした。グリフィス王の直属の近衛騎士団の面々、そして一部の臣下たち、数十名が、レイ様のもとに集い、ムルゼフの調略を跳ね除け続けておりました。彼らの結束は固く、ムルゼフの離間策も徒労に終わりました。そこで、我らが動くことになったのです。ムルゼフには、自らの正当性を主張するために、どうしても『最後の一人』、すなわち第五王子の命が必要でした。自身に背を向ける者を排除できない限り、ムルゼフは常に恐怖に怯え続けることになるからです。レイ様のもとに集った面々は、皆、優秀な人材でしたから」
このままでは、「メルド」のボス、バーツの欲する資金は、手に入らない。
そのため、バーツは、クロムたちに、レイを殺すように指示したのだった。
クロムは、十五年前を思い出す。
王宮の尖塔が、夜空を裂くようにそびえていた。
その尖塔には、目的の赤子がいた。
石段を駆け上がっていく。
背後では怒号と金属音が幾重にも重なり、まるで嵐の中にいるようだった。
それが、なんだか生ぬるく感じられた。
足音、呼吸、鎧の擦れる音――すべてがゆっくり聞こえる。
迷いはない。
迷いを持つには、あまりに長く戦いすぎたのかもしれない。
門を抜けた瞬間、近衛騎士団が壁のように立ちはだかった。
白銀の鎧、統制の取れた隊列。その姿は誇り高く、クロムたちにとっては、面倒な存在だった。
「構え!」
号令と同時に、剣が一斉に抜かれる。
なんら反応することはなかった。いつも通り、踏み込んでいく。
最前列の動きを読む。
半歩ずらし、懐へ入る。
相手の体勢を崩し、その隙を仲間が突く。連携は簡単だった。言葉は交わすことなく、機械的に実行する。
打ち合いは長引かせない。 一瞬で決める。
それが生き延びる術だとクロムは知っていた。
数を減らし、道をこじ開け、階段へと辿り着く。
そこには、怪物がいた。
ゼファール。
王直属近衛騎士団団長。
ゼファールは、静かに剣を構え、こちらを見下ろしていた。
「ここから先は通さぬ」
短い宣告。
そして、空気が変わった。
初めて、足がすくんだ。恐怖という感情を初めて悟った。
自分には、到底たどり着けない強さ。そんな気がした。
踏み込んだ仲間が、弾かれるように崩れる。
もう一人が応じるが、その動きすら読まれていた。
速く、重く、正確だった。
「下がれ!」
クロムはそう叫んだが、すでに機を逸していた。
二人はその場に倒れ、動かなくなった。
胸の奥が、わずかに軋む。
……強い。
しかし、退くことはできなかった。
ギルドの為でもあったが、そう易々と逃がしてくれる相手ではないとわかっていた。
一歩踏み込む。刃が交わる。衝撃が腕を伝い、足元の石が鳴る。
押されているわけではない。けれど、簡単には崩せなかった。
互いに間合いを測り、呼吸を読む。
ほんの一瞬の油断が、”死”を意味していた。
その均衡を破ったのは、背後から響いた怒号だった。
「やっちまえ!」
黒旗を掲げた兵が廊下へ雪崩れ込む。
ムルゼフの反乱軍だった。数百人。対するはゼファール一人。
ゼファールの視線が反乱軍へ向く。
「貴様らよくも!」
ゼファールは自分のことなど、眼中にないかのように、反乱軍へと向き直り、嵐のように斬り込んだ。
白銀の背が遠ざかっていく。
――今だ。
そう思って、クロムは駆けた。
振り返ることはなかった。
倒れた仲間の姿も、胸の軋みも、今は置いていく。
長い廊下の先。重厚な扉。その前に、三人の男が立っていた。
ヘルヴァン。ベント。ゴラン。
グリフィス王に最後まで忠誠を誓った者たちであり、第五王子の護衛の中で最も厄介な存在。
「来たか、暗殺者め……」
ヘルヴァンの声は落ち着いていた。
「退いた方が身のためだ。その赤子を置いていけ」
「それはできん」
即答だった。
クロムは地を蹴った。
ベントの踏み込みを受け流し、ベントの体勢を崩す。
ゴランの横薙ぎをかわし、距離を詰める。
三人同時の連携。悪くはなかった。
ただ、三歳で剣を握った。
遊びではなかった。選択肢もなく、ただ生き残るために剣を握った。
数多の死地を越え、身体に刻まれた動きは、自身を幾度も救ってきた。
相手の癖が見える。重心の偏り、呼吸の乱れ、視線の動き。
そうすると、一手先が読めるようになる。
ほどなくして、ベントが膝をつき、ゴランが後退する。
ヘルヴァンは強かった。しかし、クロムの方が速かった。
ヘルヴァンの剣を弾き、喉元へ刃を向ける。
勝てる。そう思った時だった。
「……頼みがある」 ヘルヴァンが言った。
クロムは眉をわずかに動かした。ただ、死を前にして、何を言うのか、少し興味があった。
「私たちを殺すのは、もっと先にしてくれないか」
意味が分からなかった。
「十五年後、必ず、そなたにこの首を差し出そう」
ヘルヴァンはそう言って、壮大な計画をクロムに話し始めたのだった。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
cf.)F:1~20 E:21~50 D:51~90 C:91~150 B:151~220 A:221~260 S:261~300
【今話の極小情報:】引き続き、読者の皆様が忘れていらっしゃると思い、お節介を少し。
今回、ご紹介するのは、ボリス(ガラム村)とグランツ(ガラム村)のステータス。一応、二人の初登場は#24の「熊族のボリス」と「ドワーフのグランツ」として登場しております。
現在、ボリスは、モントス村の温泉を満喫中!グランツは、なんでも魔剣の製作に精を出しているようです!
ボリス:【名:ボリス 年齢:28】【MP:60】【ステータス】武力:220.B(250.A) 知力:40.E(70.D) 統率:150.C(160.B) 政治:50.E(70.D)【サブステータス】兵法:30.E(50.E) 馬術:50.E(60.D) 陸戦:220.B(240.A) 海戦:150.C(160.B) 工作:130.C(150.C) 諜報:40.E(70.D) 農耕:50.E(120.C) 商業:40.E(90.D) 建築:160.B(220.B) 成長:160.B(160.B) 忠誠:100【固有スキル】--【スキル] 剣術(B) 体術(B) 探索(E)
グランツ:【名:グランツ 年齢:36】【MP:100】【ステータス】武力:120.C(150.C) 知力:160.B(170.B) 統率:150.C(200.B) 政治:100.C(100.C)【サブステータス】兵法:100.C(100.C) 馬術:60.D(70.D) 陸戦:120.C(180.B) 海戦:120.C(130.C) 工作:250.A(260.A) 諜報:100.C(120.C) 農耕:130.C(140.C) 商業:150.C(160.B) 建築:120.C(160.B) 成長:120.C(130.C) 忠誠:100【固有スキル】--【スキル] 体術(E) 鍛冶(A) 錬金(D)
【お読みいただきありがとうございます!】
次話は、約束!!
~高評価やブックマーク、感想・リアクション等いただけるとありがたいです!~
ふっと二言:「投稿が遅くなって申し訳ないです。クロムのセリフとナレーションになっちゃうので、どうしても単調になってしまう、と悩んでいたら、クロムが再現すればいいのでは!?と気づきました。少しでも楽しんでいただければ、嬉しいです!ー引き続き、応援・お付き合い頂ければ、幸いです!」
――――――――【他作品も全力執筆中!】
更新をお待ちいただく間に、こちらの作品もご一読いただけると幸いです!
・『生存のアップデートー神々の審判に選ばれた最強の「駒」は、四度目の人生で神を屠るー』
「審判は受けてやる。だが、従うとは言っていない。」
理不尽な運命を、最強に成りあがって、破壊する!
【戦×無双×成り上がり×圧倒】—―密かに成りあがった俺の、神々への叛逆が今始まる。
・『生涯、病室だった俺、異世界で自由な体を手に入れたので、天下を獲ることにした~11歳で村長になった追放貴族、現代知識と圧倒的な力で、最弱国家の最弱領地の底辺村から最強国家に魔改造する~』
「窓の外を眺めるだけの日々は終わった。今度は俺が、世界に眺められる番だ。」
不自由を極めた過去を、最強の自由で塗り潰す!
【戦×無双×成り上がり×領地経営】 ――病室を抜け出した俺の、天下取りが今始まる。
⇧※本作です。これからもお付き合いのほど、よろしくお願いいたします!




