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#41:天下をお獲りください

「リアクション、増加感謝です!」


~引き続き、ブックマーク・評価・リアクション・感想等くださると、執筆の励みになります!!~

「どういう意味だ?」レイは冷静に聞いた。

「レイ様は、バンデリオン王国の正当な血筋の第五王子であられます……」

レイは少し黙る。

自分はエルメリア王国の者ではないかもしれない。

そう思ったことは幾度もあった。

けれど、同時に、シレハ村の村長として、フィルス大村の大村長として、このエルメリア王国で、「天下を見たい」。

そんな思いも抱いていた。


「証明できるか?」レイの声は少し(かす)れていた。

「ヘルヴァン様を覚えていらっしゃいますか?」ゼファールが唐突に言った。

「……ああ。先の戦いで……」

「ヘルヴァン様から預かった伝言がございます。ヘルヴァン様が亡くなり、もし私が生きていたら、レイ様に届けるようにと仰せつかっていた伝言です」

「もし、私もあの戦で死ねば、伝言ごと闇に葬られる手筈でした」


「伝言ならば、証拠にはならないはずだ。俺にとっては……」

「レイ様。ひとまず、最後までお聞きください」

「レイ様は、なんでも黒岩の森に捨て置かれていたところを、当時のシレハ村の村長、オルヴァン殿に引き取られたとか」

「ああ」

「レイ様は、捨て置かれたのではなく、逃がされたのです……」


ゼファールが語り始めたのは、十五年前の凄惨な政変の記録だった。  

その当時、王弟だったムルゼフは、裏で横領や不正をして得た資金を利用して、文官や武官の多くを買収し、虎視眈々と王位を狙っていた。

時の王、すなわちレイの父には、レイを含め、五人の子供がいた。

バンデリオン王国は、国法で、男児にのみ、王位継承権があり、王子が存在しない場合のみ、王の血縁に最も近い者が王位につくことができた。


そこで、ムルゼフはレイの兄たちを次々と「事故」や「病気」に見せかけて暗殺していった。

レイの父は、何度も取り調べたが、審問を担当する武官や文官は、既に皆、ムルゼフに取り込まれた者たちだった。


そして、最後に残ったのが、まだ赤子だった第五王子、すなわちレイだった。


「レイ様はまだ産まれたばかりで、最も殺害が容易でした。しかし、ムルゼフは暗殺者を差し向けるも、幾度も失敗しておりました。その直接たる要因が、ヘルヴァン様、ベント殿、ゴラン殿なのです」

「俺の護衛だったのか?」

「……さようです」

「そうか……」

ゼファールは話すのをやめた。

レイが目を閉じていたからだった。

誰に聞かせるでもない言葉だった。ただ口から流れ出るように漏れていく。

「俺は……俺は、命懸けで護ってくれた者たちを、己の刃で斬り捨てたのか……」

レイは話の続きを聞くのが怖くなっていた。

こんな感覚は初めてだった。

なぜもっと早く教えてくれなかったのか? 今更、考えても仕方のないことのように思えた。


「続けろ。大丈夫だ……」レイは小さく呟いた。

ゼファールはレイを少し見つめると、意を決したように口を開く。

「ムルゼフはそれまで、王位簒奪を目論むものの、実行に移すことはありませんでした。醜聞がたつことを避けるためです。しかし、いくら暗殺者を送っても、どの殺害方法を試みようと、ヘルヴァン様やベント殿、ゴラン殿によって防がれていました。そこで、ムルゼフは王位簒奪を実行に移すことにしたのです」

「ムルゼフは、レイ様を確実に葬るため、天下最高と呼ばれた暗殺者を雇いました。その素顔も身長も、性別さえも、誰も知らない、けれど、全ての依頼を達成している暗殺者でした。それが……」

「クロムなのか?」

既に答えがわかっていた。 ただ、なぜだか、自分から言う方がいいと思った。

「そうです。クロムです。さらに、ムルゼフは、万全を期すため、自身も反乱を起こすことにしたのです。時が来て、十五年前の冬の日、ついにムルゼフは反乱を起こしました。既に、武官や文官の多くがムルゼフに従い、レイ様に従ったのは、ヘルヴァン様らをはじめ、一千名ほどでした」


「我らは多勢に無勢で、相手にもなりませんでした。なにより、クロムが強く、ヘルヴァン様とベント殿、ゴラン殿の三人がかりでも、苦戦を強いられていました。そこで、ヘルヴァン様は、侍女に、どこかに隠すように命じたのです。その結果、レイ様は黒岩の森の安全な場所に隠されたのです」

「父や母、その侍女はどうなった?それにクロムがそう易々と逃がすとは思えないが?なにより、ムルゼフが王となった以上、なぜ、ヘルヴァンやそなたらは生きていた?」

「まず、先王は崩御なされました。体外的には、御病気に倒れたとなっておりますが、ムルゼフが毒殺したというのが真相でございます。母君は、レイ様をお産みになって、すぐに亡くなられております。侍女は、戦の最中に亡くなっております。そして、それによって、レイ様の居場所がわからなくなり、レイ様がシレハ村の村長になったという噂を耳にし、レイ様が生きておられるとわかったのです」

「だから、あの時、攻めてきたのか?」

「いえ、あれはムルゼフの独断ですが、我々の派閥の者にレイ様の姿を確認させる機会ではありました……」

「……なぜ、そなたらは生きている?」

「レイ様がお亡くなりになられていたら、我々も殉ずるつもりでしたが、レイ様の生死が確認できなかったため、生き延びることにしたのが一つ。もう一つは、ムルゼフの命令です。ムルゼフとしては、バンデリオン王国の軍事力を削ぎたくなかったのでしょう。かといって、我々を信用することもできず、戦となると、我々は真っ先に矢面にたたされました……」


「わかった……だがクロムは……」

「クロムは、ヘルヴァン様やベント殿、ゴラン殿を殺せたのに、殺さなかった。そう、ヘルヴァン様は仰っておりました。なんでも約束をしたそうです」

「約束……?」

「はい。しかし、その内容は、今となっては、クロムしか知りませぬ。ヘルヴァン様は、私に約束のことは教えてくださいませんでした……」


「クロムは敵ということか……」レイは淡々と呟いた。

クロムはバンデリオン王国との戦で、フィルス大村のために力を尽くした。

ゼノとアストラル商会、()いては、シレハ村やフィルス大村のために、力を尽くした。

そう思っていた。


レイは寂しそうに笑った。

「ゼファール、俺は、きっと地獄に落ちるな……」

「レイ様……約束のことはわかりませんが、少なくとも、クロムは「敵」ではないのかもしれません、今は」

「どういう意味だ?」

「クロムは、私を陥れる証拠を捏造しましたが、ムルゼフの捏造の証拠をレイ様に教えたのもクロムです……」

「そうか……あの男はクロムだったのか……」

そう言われれば、納得はできた。ただ、クロムだと見抜けなかったことが、少し恐ろしかった。


「とにかく、クロムを敵だと決めつけるのは早計なように思います」

ゼファールはそう言うと、じっとレイを見据えた。

ゼファールは思い切ったように口を開いた。

「レイ様は王位につかれますか?大半がムルゼフに従っているとはいえ、ムルゼフに従っていない者や従ったフリをしている者も多くおります。二年程、お待ちいただければ、兵力も整います」

「ゼファール、それは保留にさせてくれ……」

「なぜですか!?御父君を殺したのはムルゼフです!なぜ、なぜためらうのですか!レイ様のために、苦渋の選択をした者もおります!レイ様のために辛酸を味わった者もいるのです!レイ様のため……」


「ゼファール!!」レイは片手をあげてゼファールを制した。

レイの声が、後ろの馬車にまで響いたようで、ゼファールの妻が「ヨシヨシ」とあやしているのが聞こえてくる。

「ゼファール。俺はフィルス大村のレイなのだ。俺は今の俺が好きだ。今の仲間が好きだ。それを捨てることは俺には……」

「では、バンデリオン王国とフィルス大村をレイ様が治めてください!」

「フィルス大村はエルメリア王国の領土。バンデリオン王国の領土ではない」

「レイ様」ゼファールが少し言葉を区切る。

「天下をお獲りください。エルメリア王国もバンデリオン王国とさして変わりません。なにも今すぐにとは申しません。ただ、頭の片隅にでも置いていただければ、今は構いません」

レイは沈黙した。  

自分を拾った世界、自分を狙った世界。クロムの意図。

わからないことだらけで、そして考えたくないことだらけだった。

夕日が鮮やかな朱色を伴って、差し込んでくる。

その(やわら)かな光がなんだか、とても憎らしく思えた。

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

【今話の極小情報:】今回は、十五年前の政変について軽く補足を。

・反乱後、ムルゼフは、「レイが産まれてすぐのため、摂政として、レイが成人(15歳)するまで、王位につく」と国外に宣言した。しかし、レイが戻らないため、王位継承権をもつムルゼフの一族が、今も、なお高位にいるのである。

・約束:ベント、ゴラン、ヘルヴァンがクロムにかけた言葉から推測できるかもしれない。

【お読みいただきありがとうございます!】

次話は、クロム……


~高評価やブックマーク、感想・リアクション等いただけるとありがたいです!~ 


ふっと二言:「18時くらいと言っていたのに、1時間遅れてしまい、申し訳ないです……十五年前の政変等、もしかしたら、わかりにくいかもなので、感想欄等で、わからなければ、ドシドシ質問してください。—―引き続き、応援・お付き合いのほど、よろしくお願いいたします!」 


――――――――【他作品も全力執筆中!】

更新をお待ちいただく間に、こちらの作品もご一読いただけると幸いです!


・『夢のストーリーを現実で再現しようとしたら、天下を獲る必要性が出てきた件』

「俺の夢ってこんなんだっけ?セリフとかパターンとかそんなんで満足する、ちんまいやつだったか?いいや、違う!もっと壮大で、ロマンティックで、圧倒的な、そう、天下統一だったはずだ!前世で、内は制覇した。今世は外を獲りに行かなければ……!!」

【戦×成り上がり×勘違い×自主的追放×無双×領地経営】—―内(家)に逃げた男が外(世界)に飛び出す英雄譚!


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「窓の外を眺めるだけの日々は終わった。今度は俺が、世界に眺められる番だ。」

不自由を極めた過去を、最強の自由で塗り潰す!

【戦×無双×成り上がり×領地経営】 ――病室を抜け出した俺の、天下取りが今始まる。

⇧※本作です。これからもお付き合いのほど、よろしくお願いいたします!

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