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#32:かかったな

リアクション増加感謝です!執筆の励みになります!

~引き続き、ブックマーク・評価・リアクション・感想等よろしくお願いいたします~

「本当は12:00~で上げるつもりが遅くなってしまいました……」


【前話のあらすじ:レイの策は、バルム村にエルガンの本軍を撤退させることで、フィルス大村が孤立したと思わせ、バンデリオン王国軍を二手に分かれさせることであった。一万VS十一万の戦が幕を開ける……】

三日後。

バンデリオン王国軍三万は、「黒岩の森」を我が物顔で進軍していた。

重装兵の軍靴が地を踏みしめるたび、低く鈍い衝撃が大地を揺らしていく。

鎧と鎧が擦れ合う金属音、魔導装甲の駆動音、魔獣の荒い吐息。

それらが折り重なり、森に本来あったはずの静寂は、今や影も形もなくなっていた。


先頭を行くのは、この軍勢の象徴である魔獣部隊であった。

体長三メートルを超える装甲熊アーマード・ベアが、分厚い鋼鉄の外殻を軋ませながら進み、太い前脚で倒木を容易く踏み砕く。

その背に跨る魔導兵は、片手で手綱を操りながら、周囲を一瞥し、薄笑いを浮かべていた。


その脇を、影狼シャドウ・ウルフの群れが走る。

音もなく、影のように木立を縫い、黄色く光る双眸が森の奥を射抜いていた。

「はっ、これは、森も泣いてるんじゃねえか?これだけ踏み荒らされりゃ、敵も震えが止まらんだろう!」

「そもそも敵なんているのか? 森の中腹地点だというのに、矢の一本も飛んでこねぇ」

魔獣に跨りながら、兵たちは笑い交じりに言葉を交わす。

全身を覆う魔導装甲は軽く、機動力重視の代物だったが、それでも中々の耐久性がある。

歩調は揃い、呼吸は乱れない。

彼らは幾多の戦場を生き抜いてきた、選りすぐりの兵だった。


軍勢の中央。

ひときわ大きな魔導馬に跨り、隊列を見下ろす男がいる。

バンデリオン王国の猛将、ドゥラハム。

漆黒の甲冑は幾重もの傷を刻み、それら一つ一つが彼の戦歴を物語っていた。

周囲に立つ兵は無意識に背筋を正し、その存在感だけで場の空気が引き締まっているようだった。


ドゥラハムは森を見渡し、鼻で笑った。

「ふん……鼠一匹見当たらんな。エルメリアの腰抜けどもめ。怖気づいたようだな!密偵によれば、国境守備軍もベルナ大村に退いたようだ。見捨てられれば、怖気づくのも、仕方あるまいだろう!まあ、手加減はせんがな!!ガハハハッ!」

「将軍、敵影なし。進軍は極めて順調です」

「当然だ。抵抗する胆力があれば、ここまで姿を隠すことはしない。ここまで近づく前に迎撃に来るはずだからな!」

ドゥラハムにとって、この侵攻は戦争ですらなかった。

戦術も、駆け引きも必要ない。ただ数と力で押し潰すだけの作業。

いわば、一方的な狩りであった。

この森に、自分たちの進軍を止められる存在が潜んでいるなど、この時、誰一人として疑ってはいなかった。


「……ん?」 ドゥラハムは、馬上で微かに首を巡らせた。

確信めいたものではなかった。

ただ、それは、歴戦の武人が幾多の戦場で培ってきた、言葉にならない違和感だった。

森の空気が重い。湿気とは違う。

肌にまとわりつくような、嫌な粘り気を帯びた圧迫感が、じわりと肺に沈み込んでくる。


「……何だ。この臭いは」

眉を(ひそ)めた瞬間、鼻腔を突き刺すような刺激が走った。

土でも、腐葉でもない。焦げた薬草のような、強烈で異質な臭気。

その瞬間だった。

「前方より煙が! 白煙が発生しています!」  「視界不良です!十歩先すら見えません!」

報告と同時に、森の奥から、濃密な白煙が這い寄ってくる。

煙は地を這い、木々の根元を舐めるように広がり、あっという間に隊列を呑み込んでいく。

「ちっ……」 ドゥラハムは一瞬だけ舌打ちをし、即座に判断を下した。

それは、将としては咄嗟の判断であり、当然の判断だった。

「うろたえるな!子供騙しだ。風魔法で吹き飛ばせ! 視界を確保するのだ!」

後方の魔導師たちが一斉に詠唱に入る。

詠唱を終えると、次の瞬間、森を揺るがす突風が巻き起こり、枝葉を引き裂きながら吹き荒れた。


しかし、煙は消えなかった。

それどころか、突風に煽られた白煙は、森の奥深くに潜んでいた“何か”を巻き上げ、さらに濃く、さらに広く拡散していく。

「ギャウンッ!!」  「グアアアァッ!!」

最初に悲鳴を上げたのは、人間ではなかった。

装甲熊が、巨体を震わせて暴れ出す。 

影狼たちが地面を転げ回り、鋭い爪で自らの鼻先を掻きむしる。

「な、何だ!? 魔獣が制御を――」

「手綱が効かん! 止まれ、止まれッ!止まるのだッ!!」


それは単なる煙ではなかった。

レイが仕掛けたのは、森に自生する薬草の中でも、特に粘膜を激しく刺激する「燻り草」を、湿った古木と共に不完全燃焼させた特製の煙。

人間にとっては不快な刺激臭であり、魔獣にとっては、耐え難い激痛となる代物だった。

鋭敏すぎる嗅覚が、仇となる。

「ギャアアッ!ゲホッ!目が!鼻が焼けるッ!」

「暴れるな! 落ち着けぇッ!」


装甲熊が咆哮し、前脚を振り下ろす。

その一撃で、ドゥラハム軍の歩兵が二人、紙屑のように吹き飛ばされる。

影狼の群れが錯乱し、敵味方の区別もなく噛みつき、隊列は瞬く間に乱れていった。


「貴様ら、何をしている! 落ち着け!」  「魔法の小細工だ! これしきのことでうろたえてはならん!」

ドゥラハムの怒声が響く。

だが、その声は、悲鳴と咆哮と金属音にかき消されていく。

煙の中では、上下も左右も分からない。

視界は奪われ、命令は届かず、足元では、倒れた兵が混乱の中で踏み潰されていく。

敵の姿が見えなかった。ただ、ついさっきまで共に肩を並べていた魔獣が、味方のはずの魔獣が牙を向き、襲い掛かってくる。


「将軍! 前方、混乱しています!」  「後方も制御不能です!」

報告は、もはや報告になっていなかった。

悲鳴に近い声が方々(ほうぼう)から飛ぶ。


森が、牙を剥いた。ドゥラハムにはそう見えた。

黒岩の森は、侵入者を拒むように白煙を吐き出し、三万の軍勢を、静かに、確実に、内部から喰らい始めていた。

戦場は味方と味方が潰しあい、倒れた味方を味方が踏みつぶしていく。

まさに、「地獄絵図」だった。


煙と怒号が渦を巻く戦場。

その混乱の中心からわずかに離れた場所、大樹の根が絡み合う影の奥で、息を殺して戦況を見据える一団があった。


静寂の中、低く澄んだ声が落ちる。

「—―ターゲット、確認」

巨木の枝に身を預けていたニーナが、魔導弓を引き絞る。

弓身を流れる魔力が、淡い光となって彼女の指先を淡く照らしていく。

魔法アイテムによってニーナの眼前には、立ち込める煙の向こう側、獣や人の発する「熱」が鮮烈に映し出されていた。


ヒュン。

放たれた一矢は、風を裂き、煙を貫き、混乱する歩兵の脇へと吸い込まれた。

装甲が重なり合う、その最も薄い継ぎ目を正確に射抜かれた兵士は、短い悲鳴を上げる暇すらなく崩れ落ちる。

「敵襲! 敵だッ!」 恐慌にも似た叫びが上がった、その瞬間だった。



「オラァ! いくぞ、てめぇら!仕事だ!!」

雷鳴のようなガストンの怒号と共に、ガストンの巨大な戦斧が唸りを上げる。

横薙ぎに振るわれた刃は盾も鎧もまとめて吹き飛ばし、敵兵が次々と宙に舞っていく。


「無茶せずに行きますよ、皆さん」

ガストンの部隊が突撃したと同時に、ロブの隊もまた、突撃を敢行する。

ロブの双剣が、敵陣を駆け抜ける。

装甲の隙、関節、首元—―生きるために必要な場所だけを、無駄なく断ち切っていく。


レイが率いる二千の精鋭。

彼らはこの三日間、寝る間も惜しみ、この地形を身体に刻み込んできた。

どこに足を置けば音が鳴らないか、どの角度から斬れば即座に離脱できるか。奇襲と撤退、その繰り返し。

 三万という巨大な軍勢は、確かに圧倒的な力を持っていた。

しかし今、その三万の軍勢には、二千本の鋭い針が、絶え間なく突き立てられていた。


「小癪な……小癪な、小癪なァ!」

ドゥラハムは激昂し、唾を飛ばして叫んだ。

怒りに任せ、自らの剣を抜き放つ。

「全軍、構わず突撃せよ! 敵は少数だ! 囲んで叩き潰せ!」


命令と共に、軍勢が一斉に動き出す。

混乱の中で既に数を減らしていたとはいえ、それでもなお二万。

身軽な甲冑を纏った兵士たちが地を揺らし、森を踏み荒らしながら進軍してくる。


その様子を、レイは木々の隙間から冷静に見つめていた。

レイの口角が静かに上がった。

「……かかったな」 確信に満ちた声。

「全員、退くぞ!」

レイの合図と同時に、全員が一斉に背を向けて走り出す。

あからさまな撤退。

足並みを意図的に乱し、何人かは転び、何人かは「逃げ遅れた」ように見せる。


「逃がすか! 追え! 一人残らず屠るのだ!」

ドゥラハムの叫びに呼応し、二万の軍勢が雪崩のように追撃を開始する。

森の奥へ、さらに深く、敵の得意とする地形へと。

そのことに気づく者は、まだ誰もいなかった。

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

cf.)F:1~20 E:21~50 D:51~90 C:91~150 B:151~220 A:221~260 S:261~300

【今話の極小情報:】今回は、読者の皆様が忘れていらっしゃると思い、説明を少し。

~今回、ご紹介するのは、ゴメス(ビサ村)とドラン(ビサ村)のステータス。一応、二人の初登場は#22のビサ村の力自慢×2。現在は、御二方とも、立派なビサ村警備隊の一員です(笑)~


ゴメス:【名:ゴメス 年齢:500】【MP:2000】【ステータス】武力:150.C(180.B) 知力:150.C(180.B) 統率:140.C(160.B) 政治:120.C(140.C)【サブステータス】兵法:100.C(100.C) 馬術:100.C(130.C) 陸戦:150.C(170.B) 海戦:150.C(160.B) 工作:200.B(230.A) 諜報:220.B(250.A) 農耕:170.B(180.B) 商業:130.C(150.C) 建築:210.B(230.A) 成長:150.C(160.B) 忠誠:100【固有スキル】--【スキル] 剣術(D) 体術(C) 投擲術(D) 精霊魔法(C) 探索(A)


ドラン:【名:ドラン 年齢:500】【MP:2200】【ステータス】武力:140.C(170.B) 知力:180.B(190.B) 統率:100.C(120.C) 政治:130.C(150.C)【サブステータス】兵法:100.C(140.C) 馬術:140.C(160.B) 陸戦:150.C(170.B) 海戦:160.B(180.B) 工作:130.C(160.B) 諜報:120.C(130.C) 農耕:170.B(230.A) 商業:120.C(130.C) 建築:200.A(220.A) 成長:150.C(160.B) 忠誠:100【固有スキル】--【スキル] 槍術(C) 体術(D) 投擲術(C) 精霊魔法(C) 探索(B)

【お読みいただきありがとうございます!】

次話は、レイの策、第二弾!!


~高評価やブックマーク、感想・リアクション等いただけるとありがたいです!~ 


ふっと二言:「今回の「極小情報」に載せたゴメスとドランさん。いかつい名前でありながら、ドワーフでなくエルフなんですね。そうそう、ここで筆者ならではのマウントを一つ。筆者がドゥラハムだったら、レイが撤退した時点で、即時撤退か、追わずに慎重になります。と言いたいところですが、筆者もレイに追われています(笑)。さっさと続きを書いてほしい、とのことです(笑)。今日は、もう少し投稿予定です!他作品にも追われていますが、引き続き、応援のほど、よろしくお願いいたします!」


――――――――【他作品も全力執筆中!】

更新をお待ちいただく間に、こちらの作品もご一読いただけると幸いです!


・『生涯、20時間睡眠だった俺、夢で組んだ必勝パターンで異世界を攻略する ~無能と蔑まれた公爵家三男の、理想再演・無双譚~』

「夢を追う。non。夢を負うんだ。夢が現実だったらいいのに。non。現実を夢にするんだ。TOPを狙う。non.non.non。そんなの後からついてくる。狙うべきはTOP(テクニカル・オキザリ・プレイ)だろ??」

夢と共に最強に!

圧倒的な「勘違い(相互)」×「成り上がり」×「無双&夢想」×「最強」!!


・『【武の極致】と【フェンリル】の力を以て、三つの世界で覇者となった俺』

「動かないだけの者に何がわかる。動けば変わる。今はそう信じろ。」

【戦×無双×成長】 →天下を争う軍記モノです!※後々、魔法や異世界系に変わっていきます!

※初期、1話あたりの字数1万字ちょっと、と長すぎるので、#1-52~からご一読いただけると、字数的にも、よりスムーズかなと……


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・『生涯、病室だった俺、異世界で自由な体を手に入れたので、天下を獲ることにした』

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