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#28:天下を取るつもりか?

~ブックマーク・評価・リアクション・感想等いただければ、執筆の励みになります~


【前話のあらすじ:垂直都市ガラム村にやってきた一行。そこで、超高層建築物や風圧式昇降機(エア・リフト)。、水洗式トイレ(セパレート・サニタリー)と技術力の高さに驚嘆した一同。次に案内されたのは……】

一行が次に案内されたのは、ガラム村の中核を成す施設、「大工房」だった。

岩山をくり抜いて造られた巨大な空間に足を踏み入れた瞬間、ルーヴィンス王たちは思わず身構える。

かつての工房を知る者なら、ここは灼熱と轟音、そして汗と(すす)にまみれた「地獄」を想像しただろう。

赤熱した炉の前で職人たちが叫び、素材を抱えて駆け回り、空気は重く、息を吸うだけで肺が焼ける、そんな場所。


しかし、ルーヴィンス王たちが思い描いた光景は、そこにはなかった。

「ようこそ、レイ殿。そして、王家の方々」

腕を組み、仁王立ちで一行を迎えたのは、ガラム村の村長ダレイである。

「ドワーフの者たちよ、礼は不要だ。そなたたちの頑迷さは知っておる」

「感謝する、大王よ」ダレイが軽く頭を下げる。

彼の背後では、巨大な運搬路—―魔導駆動のベルトコンベアが、低く安定した唸りを響かせながら一定の速度で動いていた。

熱せられた鋼材が、その上を静かに流れ、職人たちの前を次々と通り過ぎていく。

騒音はあった。けれど、混乱はなかった。(せわ)しさもなかった。

すべてが計算され、整えられていた。


「これが、レイに教わった『ライン生産方式』ってやつだ!」

ダレイは誇らしげに胸を張る。

「一人が最初から最後まで打つんじゃねぇ。加熱、叩き、焼き入れ、研磨……それぞれの工程を、最も得意な奴が受け持つ。その場を動かず、流れてくる品に魂を込めるんだ!一品入魂てやつだな!」

視線の先では、バルドをはじめとするドワーフたちが、寸分の狂いもない槌さばきで鋼を打っている。

打撃音は一定のリズムを刻み、まるで巨大な楽器の合奏のようだった。

「これで、生産量は以前の五倍を超えたんだ!」

バルドの言葉に、王族たちの間に小さなどよめきが走る。


「大王よ。工房が、昔ほど熱くないだろう?」

バルドがそう言って、天井を指さした。

そこには無数の銅管が巡らされ、冷却水が静かに循環している。

「『セントラル・クーリング』だ。ロブの旦那が作ってくれた水冷システムが、余計な熱を根こそぎ奪ってくれる。おかげで俺たちは、一日中、集中力を切らさずに槌を振れるってわけさ」


ルーヴィンス王は、ゆっくりと工房全体を見渡していた。

職人の勘と根性に頼るだけではない。組織として、仕組みとして、人を支える構造。

それがこの村には自然な形で存在していた。


「……職人の腕だけでなく、組織そのものが力を生んでいる。これが、ガラム村の真の姿か」


次に案内されたのは、村の最下層に設けられた「ガラム大浴場」だった。

工房から回収された熱が、地下を巡る管を通じて運ばれ、巨大な岩風呂を常に最適な温度に保っている。

湯煙の向こうでは、仕事を終えたドワーフたちが肩まで湯に浸かり、豪快に笑っている。

いまや、そこは疲労を癒やすための、村人全員の憩いの場になっていた。

「工房で出た余熱を、村人の癒やしに変えたのか……」

ルーヴィンス王は、湯気の向こうの光景を見つめながら、深く息を吐いた。

「レイよ、これが、『排熱リサイクル』とやらの循環か。無駄が一つもないな……」

レイは静かに頷いた。


この村は、単なる工業拠点ではない。

働く者を守り、癒やし、循環させる、その高度で豊かな国家としての形を、すでに完成させていた。

その事実を、ルーヴィンス王は、湯煙の中に浮かぶ笑顔を見て、はっきりと悟ったのである。

「我々もこのような村を国へと変えていかなければならぬな……」

ルーヴィンス王は自嘲気味に笑った。


ローヌ村、モントス村、ガラム村の視察を終えて、ルーヴィンス王は、ガラム・タワーの最上階テラスに、レイと並び立っていた。

すでに夜は深く、空には雲ひとつない月が浮かんでいる。


眼下に広がるのは、闇に抱かれながらも確かな存在感を放つ垂直都市の光景だった。

各階の窓から漏れる魔導灯の明かりが、岩肌を螺旋状に縁取り、塔全体を淡く照らし出している。

それはまるで、夜空に突き立てられた巨大な宝石のようであった。

そして、その明り一つ一つが、人の営みそのものが結晶化したかのような、華やかで賑やかな(きら)めきを放っていた。


「シレハ村とビサ村は入れぬのであろう?」

「さようです……」

二人の間に沈黙が流れる。

吹き抜ける夜風が、衣の裾と髪を揺らし、遠くで歯車の低い稼働音が微かに響いていた。

「……レイ」

沈黙を破ったのは、ルーヴィンス王だった。

視線は都市の光景に向けたまま、重みのある声が降りかかる。

「一つ、聞いておきたい。そなたは、この圧倒的な技術、この五つの村が持つ力をもって、何を目論んでいる?」

王はゆっくりと顔を向け、探るような目でレイを見る。

「王都か。あるいは隣国バンデリオンか。武力をもって平らげ、天下を取るつもりか?」

それは非難ではなく、むしろ、為政者として、当然の問いだった。

レイは答える前に、もう一度、眼下の都市を見下ろした。

夜風に髪をなびかせながら、遠い地平線の向こうへと視線を送る。

眼下のさらにその先には、ローヌ村やモントス村からも、民衆の賑わいが漏れ出ている。



「王よ」

静かな声だった。しかしその声には芯があった。

「私は、天下を望んでいます。ですが、それは他国を蹂躙し、力で跪かせることではありません」

月明かりを反射し、レイの瞳が冷徹さと情熱を同時に宿して輝く。

「私の望む『天下』とは――誰もが腹一杯食べ、冬の寒さに怯えず、清潔な水で喉を潤し、家族と共に安心して眠れる場所のことです。私には、それがありませんでした。どんな時も、父や母を想うと、申し訳なく思うのです。「生かされている」。そんな感覚が強かったのです。ですが、今、私は「生きている」。そう思えるのです。それが私にとっては、幸せなのです。「誰かに生かされている」のではなく、「誰かと生きている」、そう思えるのが、私の描く「天下」です、王よ」

レイは言葉を区切り、一つ一つを噛みしめるように続ける。

「フィルス大村のように、自分の足元に絶望することなく、自らの手で未来を打てる場所。努力が少しでも還元され、知恵が循環し、明日を恐れなくていい世界です」

そして、レイは王の方を向いた。逃げも飾りもしない、真正面から射抜くような視線。

「もし、それを、古臭い野心や略奪で踏みにじろうとする者がいるならば—―」

夜風が冷たく頬を撫でていく。

「私は、この力を武として使うことになる、そう思います」


ルーヴィンス王は、何も言わず、しばらく沈黙した。

民を飢えさせず、凍えさせず、病に倒れさせないための構造を作り上げ、その上で戦う覚悟を完了させた存在。

それは「覇者の器」であるように思えた。

「……ふっ」 やがてルーヴィンス王は、小さく笑った。

「一本取られたな。我が王宮も、そなたの爪の垢を煎じて飲む必要がありそうだ」

満足げにそう言い、レイの肩を軽く叩く。

ルーヴィンス王は、どこか哀しげな笑みを浮かべていた。


「そなたが武を我が息子や娘に使う時は、情けを頼む」


「レイよ……」

ルーヴィンス王は静かに、それでいて深い重みを帯びた声で口を開いた。

「……王都に来る気はないのであろう?」

その問いには、どこか寂しさと、期待が混ざっているように感じられた。

王都の重厚な石造りの宮殿であれば、王の言葉一つで国が動く。

それでも、ルーヴィンス王はレイの意志が揺るがないことを知っていた。


レイは少し息をつき、微かに肩を張った。

「やはりか……なに、気にするな……」

夜の空気はひんやりと冷たく、遠くの渓谷からは風のささやきと、滝のかすかな水音が届く。

塔の各階の窓から洩れる魔導灯の光が、岩肌に沿って螺旋を描くように揺れており、その景色はまるで天空に散らばった宝石のようだった。

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

cf.)F:1~20 E:21~50 D:51~90 C:91~150 B:151~220 A:221~260 S:261~300

【今話の極小情報:】アーノット(第1王子)とバイス(ビサ村警備団副長)のステータス。

アーノット:【名:アーノット 年齢:26】【MP:200】【ステータス】武力:160.B(230.A) 知力:40.E(70.D) 統率:100.C(150.C) 政治:80.D(100.C)【サブステータス】兵法:50.E(70.D) 馬術:150.C(170.B) 陸戦:120.C(160.B) 海戦:90.D(100.C) 工作:30.E(40.E) 諜報:100.C(120.C) 農耕:50.E(70.D) 商業:1.F(30.E) 建築:10.F(40.E) 成長:120.C(150.C) 忠誠:--【固有スキル】--【スキル] 剣術(D) 体術(E)


バイス:【名:バイス 年齢:200】【MP:1200】【ステータス】武力:120.C(200.B) 知力:150.C(160.B) 統率:200.B(220.B) 政治:100.C(120.C)【サブステータス】兵法:130.C(160.B) 馬術:200.B(210.B) 陸戦:180.B(230.A) 海戦:100.C(120.C) 工作:120.C(140.C) 諜報:200.B(210.B) 農耕:130.C(150.C) 商業:140.C(160.B) 建築:150.C(150.C) 成長:210.B(230.A) 忠誠:100【固有スキル】--【スキル] 剣術(D) 弓術(A) 体術(C) 投擲術(A) 水魔法(C) 風魔法(D) 精霊魔法(B) 探索(A)


【お読みいただきありがとうございます!】

次話は、不穏な影の正体が!!


~高評価やブックマーク、感想・リアクション等いただけるとありがたいです!~ 


ふっと二言:「ルーヴィンス王の『情けを頼む』というセリフ。王としてではなく、一人の父親としての本音が漏れた瞬間でした。彼もまた、重い荷物を背負っているんですよね……。ルーヴィンス王の矜持、とくとご覧あれ、です~」


――――――――【他作品も全力執筆中!】

更新をお待ちいただく間に、こちらの作品もご一読いただけると幸いです!


・『生涯二十時間睡眠だった俺、夢で組んだ必勝パターンで異世界を攻略する ~無能と蔑まれた公爵家三男の、理想再演・無双譚~』

「夢を追う。non。夢を負うんだ。夢が現実だったらいいのに。non。現実を夢にするんだ。TOPを狙う。non.non.non。そんなの後からついてくる。狙うべきはTOP(テクニカル・オキザリ・プレイ)だろ??」

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圧倒的な「勘違い(相互)」×「成り上がり」×「無双&夢想」×「最強」!!


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「動かないだけの者に何がわかる。動けば変わる。今はそう信じろ。」

【戦×無双×成長】 →天下を争う軍記モノです!※後々、魔法や異世界系に変わっていきます!


・ロード・オブ・ザ・キャット ~「人生」取り戻したいだけの猫(元人間)が、無自覚に神獣へ進化した結果、人類最強が首輪を持って泣きついてくる件。これって営業妨害ですか? 

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