#21:『天下一』の場所にしたい
~ブクマ・リアクション、増加感謝です!!引き続き、評価も含め、どうぞよろしくお願いいたします!~
「投稿が遅くなって申し訳ないです.....ここら辺で、一度、情報を整理すべきかな...などと思い、整理表を作成していたら、遅くなってしまいました...投稿速度はすべての作品、明日から上げて参ります!!」
【前話のあらすじ:アストラル商会に赴き、1年後の計画をゼノに伝えたレイ。レイはシレハ村に戻ると、改革案を考えるのだった....】
シレハ村を包む夕闇は、どこか優しかった。
村の中心にある広場。
かつてこの場所で、一人の人が笑っていた。
「レイ、腹が減ったら帰ってくるんじゃぞ。お前の席はいつだって、この村にあるのじゃからな」
養父、オルヴァン。
いつも、慈愛に満ちた笑みを湛え、皺だらけの手でそっと抱きしめてくれた人。
捨て子だった自分を拾い、実の息子のように育ててくれた人。
村の誰からも「お父さん」と慕われたあの善良な村長は、今は、空から見守っていた。
レイは、冷たくなった夕風に吹かれながら、静かに目を閉じた。
「父さん……父さんが守りたかったこの村を、俺はさらにその先へ連れて行くよ....力を貸してね....」
呟きは風に溶けていったが、その瞳には、揺るぎない決意が宿っていた。
翌朝、レイは村人たちを広場へ招集した。
かつての貧しい開拓村の面影は、レイやニーナをはじめとする村人たちの活躍で、少しずつ薄れていたが、それでもまだ「ただの村」でしかなかった。
集まった村人たちの顔には、不安と期待が入り混じっている。
「みんな、聞いてくれ」
レイは、静かに口を開いた。広場全体が静まり返り、レイの声が隅々まで響き渡っていく。
「俺はこのシレハ村と、ビサ村、ガラム村、モントス村、ローヌ村の四つの村を統合することにした。今のフィルス大村は5つの村がただ寄せ集まっただけだ。それを、俺は、本当の意味での、5つの村の集合体にしたい。それが大村長となった俺が成し遂げたいことだ」
広場には、どよめきが起こっていた。
統合。それはこれまで誰も考えたことのない規模の変革だった。
それは、大村に属する各村が収支や価値を競い合うことが一般的だった、この世界では気づきようのない考えでもあった。
「理由は二つある。一つは、俺たちの命を守るためだ。バンデリオン王国との国境に近いこの村で、個別の村がバラバラに生きていくには限界がある。もう一つは、俺の夢だ。俺は、この世界に名を刻みたい。天下を獲りに行くと言ってもいい。俺が天下を獲りに行く理由は、『誰もが腹いっぱい食えて、安心して眠れる場所』を作るためだ。今の俺の『天』は、このフィルス大村だ。見捨てられることのない、そういう『天』を俺は創りたい」
レイは言葉を区切り、村人一人ひとりの目を見るように視線を動かした。
「今までの舗装や豊かさは、俺たちだけの、シレハ村だけのものだった。だが、一年後、俺はこのフィルス大村を外部に公開する。その時、世界中の誰もが驚き、羨み、ひれ伏すほどの完成度を持った『フィルス大村』でなければならない。そのための改築だ。今日から一年間、外部の者は一切入れない。そしてこの七日間で、その基礎を全て造り替える」
レイは既に四村の村長へ親書を送っていた。
一年間の封鎖と、レイを頂点とする新体制への協力要請。
高圧的な命令ではない。
けれど、そこには、逆うなどという意志を与えないほどの圧倒的な計画と恩恵が記されていた。
「俺一人じゃ作れない。皆の力が必要だ。七日で、ここを『天下一』の場所にしたい。――どうか、力を貸してくれ!」
村人たちから、地鳴りのような歓声が上がった。
「当たり前だ、レイ!」「オルヴァン父さんの夢、俺たちが叶えなくてどうする!」
さて、集会から、1時間ほど経って、工事は、レイの一手とともに幕を開けた。
レイが、建築の才を生かして、地面に掌を打ちつけると、魔力の波動が同心円状に広がり、シレハ村の古い家々が、まるで意思を持っているかのように解体され、資材へと姿を変えていく。
「土台は任せろ、レイ!」
声を上げたのはガストンだった。
三十三歳。村の農業を支える現役バリバリの男であり、優れた土魔法の使い手だ。
ガストンは手を大地に置き、全身の魔力を緩やかに練り上げた。
「――母なる大地よ、命の形を成せ!—―地命の形!」
轟音が響く。
地表が波打ち、レイが投影した設計図通りに、寸分狂わず平坦に整地されていく。
ガストンの魔法は、レイの覇道共振の影響を受けて、普段以上の出力を発揮していた。
広大な農地は幾何学的な美しさで区画分けされ、地下には強固な岩盤の層が形成される。
「僕の番ですね。……流れる水は命の動脈。――導きの水よ、万物を潤せ!—―水質操作!」
ロブは、冷静に水魔法を放った。
レイの工作(S)で生成された特殊な陶器製パイプが、ロブの水流に導かれて地下深くに潜り込んでいく。
入り組んだ上下水道のグリッド。淀みのない循環システム。
ロブの精密な魔力操作により、村全体を網羅する完璧な水インフラが瞬く間に敷設されていった。
その地上では、村の若者たちが躍動していた。
ポール、ダン、ブライスをはじめとする村人たち。
特に、石投げを得意とするポールら3人は、レイの覇道共振の影響により、信じられないスタミナで走り回っている。
「ブライス、次だ!」「わかったぁ!」「二人とも、黙ってやれないのか??」
レイが生成した補強石を、彼らは正確に、そして猛烈な速度で投げて渡していく。
高層の足場へ、あるいは地下の配管場所へ。
彼らの投擲術はもはや「物流」そのものだった。
さらにパーシー、ウェスト、ブルックら力自慢の農夫たちが、それらの巨石をガシッと受け止め、基礎に打ち込んでいく。
「ははっ! なんだこれ、体が軽いぜ!」「まるで英雄になった気分だ!」
男たちの笑い声が軽やかに響いている。
レイを信頼し、作業をするだけで、能力が底上げされ、技術が研ぎ澄まされていく。
これがレイの持つ「覇道共振」の真価だった。
四日目を迎える頃には、シレハ村の景観は一変していた。
立ち並ぶのは、白亜の壁に囲まれた魔法断熱住宅。
そこでは、ニーナが風魔法を放っていた。
「風よ、家々を巡り、清らかな息吹を届けたまえ。――巡りし風は、安らぎの空気を施せ!風量調節!」
ニーナが祈るように両手を広げると、柔らかな風が家々の中へ吸い込まれていった。
レイが設置した魔導回路とニーナの風魔法が結合し、家の中は常に一定の温度と湿度に保たれる「魔導空調」が完成する。
夏は涼しく、冬は暖かい。この世界の常識では考えられない快適さが、全ての住居に備わっていった。
村人たちは、二十四時間休むことなく、働き続けた。脱落者は一人もいなかった。
「聖なる力よ、護りし者に力を与えたまえ――癒しの光よ、希望を生みだし、力に変えよ—―心身回復!」
シアが聖なる祈りを捧げるたび、広場を包む柔らかな光の粒子が、村人たちの体へ吸い込まれていく。
溜まった乳酸は消え、筋肉の微細な断裂は即座に修復され、精神的な疲労すらも晴れ渡る。
「シア、ありがとな!」「よっしゃ、もう一仕事だ!」
彼女の献身的な治癒が、村人たちの限界をさらに押し広げていた。
五日目には、農業区画が完成した。
ガストンの土魔法で成された整地に、レイが自身の魔力を注ぎ込んでいく。
ゆっくりと、魔力が農地に染み込んでいく。
一晩で青々と芽吹く薬草や換金作物。そして、ロブがレイの工作(S)により創り出した自動水車を農地へと運用させていく。
シレハ村は、「食」においては、今までにない程の「安定した供給」を獲得していた。
六日目。
ロブとレイは、村の最重要施設である資源管理倉庫と戸籍管理倉庫の構築に入った。
ロブの事務能力は凄まじく、膨大な帳簿を整理し、レイが作る「魔導記録機」の入力項目を完璧に指示していった。
ニーナが炊き出しの鍋をかき混ぜながら、レイに近づく。
「レイ、本当に一週間で終わっちゃうのね。……なんだか、信じられないわ。オルヴァン様も、きっと、『天』で目を丸くしてるでしょうね」
「……ああ。でも、これはまだ始まりなんだ、ニーナ」
レイは、村の入り口に設置された堅牢な門に付した「魔導記録機」の調整を終えた。
住民の魔力波長と容姿を読み取り、村人たちの生活空間への許可なき者の侵入を物理的に、そして魔法的に遮断する門。
これにより、シレハ村の生活空間に、許可なく外部の者が入ることは不可能になったのである。
七日目の朝。
朝靄が晴れるとともに、シレハ村の全容が明らかになった。
そこは、もはや「村」と呼べる範疇を大きく凌駕していた。
石畳は一点の曇りもなく磨かれ、魔法の街灯が等間隔に並んでいる。
村の中心にそびえ立つのは、全村のエネルギーを賄う『魔力集積塔』。
そして、その地下には四つの村へと繋がる『秘匿輸送専用路』が口を開けている。
全住民が広場に集まった。
レイの隣にはニーナ、シア、ロブ、そしてガストンらが並んでいた。
彼らの顔には、成し遂げた者だけが持つ誇りと、心地よい疲れが浮かんでいた。
「最後に、これをみんなに渡したい」
レイが手をかざすと、数百のネックレスがふわりと宙に浮いた。
「――守りし絆、永遠の守護をここに!守護付与!」
レイの力強い詠唱とともに、一つひとつのネックレスが蒼い輝きを放った。
それは『守護のネックレス』とレイが名付けた魔法アイテムであった。
ネックレスをつけた村人が、攻撃を受ければ、即座に全村の村人へ通知し、所持者を安全な地下シェルターへ強制転送する。
ネックレスを首にかけた村人たちは、そのひんやりとした感触に、自分たちが「選ばれた民」であることを強く実感していた。
そこへ、招集されていたビサ村、ガラム村、モントス村、ローヌ村の四村の村長たちが到着した。
「……な、なんと、これは……」 「これが、シレハ村なのかぁ……すごいなぁ....」
機能性と美しさが、圧倒的な魔法技術によって高次元で融合していた。
上下水道が完備され、ゴミ一つ落ちていない清潔な通り。
時計台から響く正確な鐘の音。 魔力波長を認識して自動で開閉するドア。
村長たちは、一様に、言葉を失っていた。
彼らの先祖が数百年かけて築き上げてきた常識が、わずか七日間で、13歳を過ぎたばかりの少年によって粉砕されたのであった。
レイは、呆然と立ち尽くす村長たちのもとへ歩み寄った。
跪かせようとするつもりも、傲岸な態度を取るつもりもなかった。
ただ、同じ未来を見据えてほしいと願う一個人として、彼は口を開いた。
「シレハ村の改築は終わりました。……見た通りです。俺はこのレベルの環境を、全ての村に広げたい、そう思っています」
レイは、四人の村長たちを見つめた。
「一年後、フィルス大村として外部に公開する時、他の村もこれと同じ、いや、それ以上の場所にしたい。……協力してくれますか?」
彼らは理解した。
この少年は、自分たちを支配しにきたのではない。
共に「新世界」を創るための、圧倒的な指導者として現れたのだと。
「……レイ殿。いや、レイ大村長」
ローヌ村の村長、ハワードが、ゆっくりと右手を差し出した。
「あなたの言う通りだ。これを見せられて、協力しない理由はない。……僕たちの村も、頼むよ」
レイは、その手を力強く握り返した。
次々と差し出される手。
リーン、ヴォルター、ダレイ。
かつては種族や立場、利害関係で反発しあっていた4つの村の代表が、今や、レイという一点を通じて、真の「同志」となったのであった。
「では、明日からはビサ村の改築に入ります」
レイの言葉に、村長たちが力強く頷く。
その背後では、シレハ村の村人たちが大きな歓声を上げていた。
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【今話の極小情報】:レイが、フィルス大村全体に導入しようとしている法について。
~Part1~
・1週間を7日とし、その7日を、それぞれ、日曜日・月曜日・火曜日・水曜日・木曜日・金曜日・土曜日と呼称する。また各村に時計台を10個つくり、それを以て、時間を管理すること
・賞罰については、各村で評決を取り、その結果を以て、村長たちが合理的かつ客観的な事実を踏まえた話し合いで、決定する
・異議申し立てがある場合は、発願者の属する村の村長または、大村長であるレイに申し出ること。全体での話し合いで、評決を取るかを決める。
・有罪かつ罪状が村からの追放である者は、即刻、立ち去ること。
【お読みいただきありがとうございます!】
次話は、内政チート第二弾!!
~高評価やブックマーク、感想・リアクション等いただけるとありがたいです!~
ふっと二言:「一週間で村を造り変えるレイが羨ましいです。プロットはできているものの、設定に凝り過ぎたがゆえに、ストックが少々しか溜まっていない.....今日から、私の執筆スピードも『工作S』で爆上げしたいと思います……!現在地はこんな感じですっ!工作240.A(300.S).....あと60....鍛錬頑張ります!ブクマ・リアクション・感想・評価等で応援いただけると泣いて喜びます!」
――――――――【他作品も全力執筆中!】
更新をお待ちいただく間に、こちらの作品もご一読いただけると幸いです!
・ロード・オブ・ザ・キャット ~「人生」取り戻したいだけの猫(元人間)が、無自覚に神獣へ進化した結果、人類最強が首輪を持って泣きついてくる件。これって営業妨害ですか?
「可愛いからって舐めないで。僕の敏捷、150あるから。」
圧倒的な「猫の可愛さ」×「人類の勘違い」×「チート無双」! 僕を人間に戻せる(評価をくれる)のは、読者の貴方だけです。
・『自分』と『推し』のために暗躍する無能(偽)な護衛
「俺が守りたいのは、お前じゃないと思う。多分、『推し』だ。」
嘲笑う奴らには無能を演じて油断させ、裏では神速で敵を殲滅。
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・『【武の極致】と【フェンリル】の力を以て、三つの世界で覇者となった俺』
【戦×無双×成長】 →天下を争う軍記モノです!※後々、魔法や異世界系に変わっていきます!
・『生涯、病室だった俺、異世界で自由な体を手に入れたので、天下を獲ることにした』
「窓の外を眺めるだけの日々は終わった。今度は俺が、世界に眺められる番だ。」
不自由を極めた過去を、最強の自由で塗り潰す!
【戦×無双×成り上がり×領地経営】 ――病室を抜け出した俺の、天下取りが今始まる。
⇧※本作です。これからもお付き合いのほど、よろしくお願いいたします!




