#18:食おうぜ
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【前話のあらすじ:逃げ場のない雪の要塞。迫りくる二万のバンデリオン本軍。絶望的な数差を前に、レイは「最強の知略」と「仲間の力」で迎え撃つ。かつての捨て石が、歴史を塗り替える反撃の狼煙を上げる――。】
「……来たな」
国境北塞の最上層。
レイは冷たい手すりに指をかけ、地平線を睨み据えていた。
先遣隊三千の敗走から、わずか数時間。
バンデリオン軍は、その真の「牙」を剥き出しにして現れた。
地平線を埋め尽くすのは、整然と並んだ二万の重装歩兵。
夕日に照らされた無数の槍先が、まるで死を告げる針の山のように見えた。
「レイ、怖い? ……私は、あんたがいれば怖くないけど」
隣に立ったニーナが、ポニーテールを風に揺らしながら尋ねる。
レイは小さく息を吐き、口角を上げた。 強がりたかった。
「怖いっていうより……呆れてるんだよ。あんな数で攻め寄せて、何人を無駄にするつもりなんだろうな、あいつらは」
その時、要塞の背後から馬の蹄の音が聞こえてきた。
現れたのは、フィルス大村から後方に退き、ベルナ大村に戦線を張っていた国境守備軍隊長のドビスだった。
彼は一万ほどの兵を連れ、さも堂々と、かつ不快な笑みを浮かべてレイを見上げた。
「おい、ガキ! よくも勝手に先遣隊を追い払ったな! 我が王都軍の作戦を台無しにするつもりか!」
ドビスの声は、要塞の広場に響き渡る。
「どけ! ここからは正式な軍人である私が指揮を執る。手柄を独り占めしようなどと、小賢しい真似は許さんぞ!」
レイは鑑定(S)でドビスを一瞥した。
【名:ドビス 武力:D 知力:F 統率:E.....】――見るに堪えない数値だ。
村人たちが不安げにドビスとレイを交互に見る中、レイはあっさりと肩をすくめた。
「……ああ、どうぞ。ちょうど肩が凝っていたところだ。好きにしろ、隊長さん」
「フン、最初からそう言えばいいのだ!」
ドビスは勝ち誇ったように要塞の指揮台に駆け上がる。
「全軍、突撃だ! 敵は所詮、数に頼った烏合の衆! 守備軍の威光を見せてやれ!」
ドビスの無謀な号令に、ニーナやガストンが「はあ?」と眉をひそめる。
だが、レイは静かに首を振った。
「やらせておけ。……掃除の前に、ゴミが勝手に動いてくれた方が楽だからな」
ドビスの突撃命令は、案の定、一瞬で地獄を招いた。
要塞の防衛システムを無視して突っ込んだ守備軍は、バンデリオン軍の重装歩兵による「盾の壁」に弾き返され、逆に包囲されそうになる。
「な、なんだ!? なぜ押し返される! 貴様ら、もっと気合を入れんか!」
ドビスの悲鳴が響く。
敵の本軍は、ドビス隊という「餌」を喰らうために、さらに要塞へと距離を詰めてきていた。
「……そろそろだな。ニーナ、ガストン。準備はいいか?」
レイの声が、低く鋭く響いた。
「いつでもいけるわ!」 「おう、待ってたぜぇ!」
まず動いたのはガストンだった。
「――《土の精霊よ、我が呼び声に応えよ。揺るがぬ礎、崩れぬ牙を以て道を閉ざせ》――アース・ウォール・マルチプル!」
ガストンの拳が地面を叩く。
要塞の周囲一キロメートル、敵軍の背後から地響きと共に巨大な土壁が次々と競り上がった。
それは敵を囲い込む「擂鉢」のような壁だった。
「な、なんだ、この壁は!? 逃げ道がないぞ!」 動揺するバンデリオン軍。
そこへ、レイが追い打ちをかける。
「シア、要塞のメンテナンスを頼む」 「わかったわ――《正典修復》」
シアの聖魔法が要塞全体を包み込む。
敵の魔導師たちが放った火炎弾が壁を削るが、その傷跡は当たった瞬間に「再生」するように消えていく。
「馬鹿な……! あの要塞、傷一つ付かないぞ!? 不死身か!」 敵軍の中に絶望が広がる。二万人で囲み、叩いているはずなのに、目の前の城壁は新品のように輝いているのだ。
「仕上げだ。ニーナ」
「了解。……たっぷり吸い込みなさい!」
ニーナの風魔法『圧壊疾風』が、要塞から大量の『氷鈴の粉』を巻き上げ、擂鉢状の平原へと叩きつけた。
吹雪が渦を巻き、粉が舞う。
それは、本来はシレハ村の夏を涼しくするための「平和な技術」だ。
だが、密閉された空間で散布されたそれは、敵軍が焚く松明の熱、兵士たちの体温、そして魔法の残り香さえも、貪欲に食らい尽くしていった。
「……宣告する」
レイは工作(S)で自作した拡声魔導具を手に取り、無感情な声を平原に響かせた。
「お前たちが今吸っているのは、周囲の熱を全て奪う特殊な伝導体だ。武器を持っていれば、その冷気で掌が凍りつき、鎧を着ていれば、その重さが自らの命を削る『氷の棺桶』に変わる」
二万の兵士たちが、自分の手が青白く変色していくのを見て、悲鳴を上げた。
「一分以内に、全ての武器と鎧を捨てろ。さもなくば、お前たちは一時間以内に全員が氷の彫像になる。……これは慈悲ではない。処理の手間を省くための、合理的な提案だ」
平原に、奇妙な音が響き始めた。
「ガシャン、ガシャン、ガシャン……!!」
二万人が、一斉に槍や剣を地面に投げ捨てた。
ガチガチと歯の根が合わない音を響かせる者や子供の言葉に怯えて涙を流す者もいた。
二万人が、次々と震えながら、プライドを捨てて次々と鎧を脱いでいく。
それは、一人の13歳の少年が、二万の軍勢をへし折った瞬間だった。
「……こ、これは私の功績だ! 私の指揮が敵を怯ませたのだ!」
未だに状況が飲み込めていないドビスが、震える足で指揮台に立ち、村人たちを見回した。
「おい、ガキ! さっさとこの粉を止めろ! 勝ち鬨を上げるのは私だ!」
レイはゆっくりとドビスに歩み寄った。
「隊長さん。あなたが無謀に突っ込んだせいで、予定していた罠の配置が三箇所狂った。その修正に、村の貴重な魔力結晶を三つ消費したんだ。……後で上に、損害賠償を請求させてもらう。あなたの『勇猛な敗走』の記録と、部下を見捨てて保身に走った詳細な報告書を添えてな」
「な……ななな……」 ドビスの顔が、みるみるうちに土気色に変わる。
レイが、氷魔法でドビスの足元の地面を一瞬だけ操作すると、氷に足を滑らせたドビスは、無様に尻餅をついて広場を転がった。
「わはははは! 見ろよ、あの隊長の顔!」
「レイ様に勝てるわけねえだろ、馬鹿が!」
村人たちの失笑が、吹雪の音をかき消すほどに響く。
ドビスは這々の体で逃げ出し、それを見た守備軍の残党も、蜘蛛の子を散らすように去っていった。
夜が明ける頃。
平原には、下着同然の格好で敗走する二万の軍勢と、山のように積み上げられた武器の山だけが残されていた。
「……ふぅ。……あー、疲れたぁ……」
静まり返った要塞の屋上で、レイはどかっと大の字に寝転んだ。
「……マジで、疲れた。死ぬかと思った……」
「あんた、あんなにかっこつけてたのに。最後のは台無しよ」
ニーナが笑いながら、レイの横に座り込む。
「レイ様、俺の土壁、最高だったでしょう!」 ガストンが得意げに饒舌ぶる。
「……ああ、最高だったよ。……ロブ、お前も。地下の調整、助かった」
「お役に立てて何よりです。ドビスの尻餅、眼に焼き付けましたよ」
ロブの言葉に、五人は一斉に吹き出した。
彼らが成し遂げたのは、歴史に刻まれるべき大戦果であった。
しかし、今の彼らにとっては、それ以上に、こうして笑い合えることの方が大切だった。
「……ねえ、レイ。ラーメン、食べる?」
シアが、湯気の立つ大きな器を持って現れる。
レイは薄目を開け、シアを見上げて笑った。
「ああ。……こってり、特盛りで頼む。……今日は、みんなで腹一杯食おうぜ」
夕焼けに照らされた要塞。
かつて「捨て石」と呼ばれた子供は、もう独りではなかった。
最強の知略と、最高の仲間。
吹雪の夜が明け、シレハ村に、新しい時代の光が差し込んでいた。
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今話の極小情報:ガストンとロブのステータス....数値はどうしようかと、迷ったものの、入れないことにしました。。世界に出たら、入れようかなと思います!!
ガストン:【名:ガストン 年齢:33】【MP:210】【ステータス】武力:B(A) 知力:C(B) 統率:B(B) 政治:E(D)【サブステータス】兵法:D(D) 馬術:C(C) 陸戦:B(B) 海戦:F(F) 工作:B(A) 諜報:C(C) 農耕:S(S) 商業:C(C) 建築:B(B) 成長:A 忠誠:100 【固有スキル】--【スキル] 剣術B(B) 槍術B(B) 体術A(A) 体術B(B) 土魔法A(S) 錬金C(B) 鍛冶D(B)
ロブ:【名:ロブ 年齢:13】【MP:240】【ステータス】武力:B(B) 知力:B(A) 統率:C(C) 政治:C(B)【サブステータス】兵法:C(B) 馬術:D(C) 陸戦:C(B) 海戦:F(D) 工作:A(S) 諜報:A(A) 農耕:A(A) 商業:B(A) 建築:B(B) 成長:B 忠誠:100 【固有スキル】--【スキル] 剣術C(C) 体術B(S) 投擲術A(A) 探索A(S) 諜報A(A) 水魔法A(A) 錬金A(A)
お読みいただきありがとうございます!
次話、決戦後のシレハ村に訪れるのは、安息か、それとも新たな嵐か。
~高評価やブックマーク、感想等いただけると、執筆の大きな支えになります!~
ふっと二言:「初めての敵国との戦闘!!さて、次は新章突入ですっ!!」
――――――――【他作品も全力執筆中!】
更新をお待ちいただく間に、こちらの作品もご一読いただけると幸いです!
・ロード・オブ・ザ・キャット ~「人生」取り戻したいだけの猫(元人間)が、無自覚に神獣へ進化した結果、人類最強が首輪を持って泣きついてくる件。これって営業妨害ですか?
「可愛いからって舐めないで。僕の敏捷、150あるから。」
圧倒的な「猫の可愛さ」×「人類の勘違い」×「チート無双」! 僕を人間に戻せる(評価をくれる)のは、読者の貴方だけです。
・『自分』と『推し』のために暗躍する無能(偽)な護衛
「俺が守りたいのは、お前じゃないと思う。多分、『推し』だ。」
嘲笑う奴らには無能を演じて油断させ、裏では神速で敵を殲滅。
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