表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

17/18

#17:情けないな...俺は...

【前話のあらすじ:レイの属するシレハ村が見捨てられたことを悟ったレイ。迫りくる二万の敵。その時、レイは....】

ああは、言ったものの、レイは内心、わかっていた。

軍対村人。二万対千。盗賊とは、訳が違うのだ。

レイは村人たちを集めていた。 言わなければならなかった。


「……正直に言う。俺一人じゃ、この村は守りきれない」

国境北塞ノース・フォート

石造りの冷たい広場に、レイの静かな、よく通る声が響いた。

フィルス大村に属する、戦える者およそ一千人。

彼らは、自分たちを「捨て石」として扱った王都軍への怒りと、二万という圧倒的な敵軍への恐怖で、今にも壊れそうなほど張り詰めていた。


「レイ……。それ、はどういう……」

最前列にいたガストンが、困惑したように声を漏らす。

レイは、これまでの「完璧な支配者」としての不敵な笑みを、今は見せていなかった。

十三歳の少年としての素顔が、そこにはあった。


「俺は、お前たちが思っているような無敵の怪物じゃない。ただ、みんなより少しだけ、物事の仕組みを知っているだけだ。だから……みんなの力を貸してほしい」

レイが深く、頭を下げた。

広場に、どよめきが走る。

村人たちにとって、レイは圧倒的な力を持つ神のような存在だった。

その彼が、自分たちに「助けてくれ」と言っている。

その事実は、「恐怖」を消し去り、彼らの胸に「使命感」という名の火を灯した。


「レイ様、顔を上げてください! 俺たちは、あんたに命を預けるって決めたんだ!」

「そうだ! 薪割りしか能がねえが、力ならいくらでも貸すぜ!」

レイは鑑定(S)を起動した。


「ロブ、お前と作った『氷鈴の粉』を全員に配れ。……ポール、ダン、ブライス、お前たちの『石投げ』の腕を信じている。パーシー、ウェスト、ブルックさん、貴方たちは農夫の中でも力がある。魔導砲の装填を頼みたい。……シア。お前は後ろで、傷ついた奴らを一人も死なせないように聖魔法をかけてくれ。ニーナ、ガストン。前線は、お前たちに頼みたい...」

レイが一人ひとりの目を見て、その「才能」を告げていく。

ただの村人たちが、レイの言葉によって、自分たちが最強の軍隊の歯車であることを自覚した。

一千人の鼓動が、一つに重なっていく。


「……よし。収穫の準備は整ったな」

夕闇が深まり、吹雪が咆哮を上げる中、ついにバンデリオン軍の先遣隊三千が、平原の中央へと踏み込んできた。

どうやら、氷の罠を突破したようだった。


「来るぞ……! ニーナ、始めろ!」

「ええ、任せなさい! ――《吹き荒べ、氷の翼。我が命に従い、冷酷なる息吹を平原に満たせ》—―圧壊疾風テンペスト・クラッシュ!」

ニーナが風魔法の詠唱を終える。

要塞の城壁から、大量の白い粉末――『氷鈴の粉』が撒かれた。

本来、シレハ村で夏場の「空調管理」に使われていたその粉は、銀鈴草の雄しべを加工した、極めて高い冷気伝導体だった。


粉が吹雪と混ざり合い、敵陣の頭上を覆う。

「な、なんだ、この粉は!? ゲホッ……冷てえ、いや、熱いのか!?」

バンデリオンの兵士たちが叫ぶ。

『氷鈴の粉』が周囲の全ての熱を吸収し、絶対零度の凍気を拡散させ始めたのだ。

彼らが掲げていた松明が次々と消え、鎧の継ぎ目から体温が奪われていく。


だが、敵も無能ではない。

「うろたえるな! 魔法騎士団、前に出ろ! 火炎の盾を張れ!」

金色の甲冑を纏った重装魔法騎士たちが、火魔法の結界を張り、凍気を弾きながら要塞へと突進してきた。


その数、およそ五百。

「レイ! あいつら、止まらないわ!」 ニーナの焦る声が響く。

レイが自ら弓を手に取ろうとした、その時だった。


「レイ様、ここは俺に任せてください!」

ガストンが叫んだ。

「――《土の精霊よ、我が呼び声に応えよ。揺るがぬ礎、崩れぬ牙を以て道を閉ざせ》――アース・ウォール!」


ガストンが地面に拳を叩きつける。

凄まじい轟音と共に、要塞の前面から巨大な土の壁が、槍のように斜めに突き出した。 突進していた魔法騎士たちが、その壁に激突し、陣形が崩れていく。


「今だ! 石を投げろ!」

レイの指示を待たず、村の若者たちが一斉に動いた。

彼らが手にしたのは、ただの石ではない。『氷鈴の粉』を詰めた小袋だ。

少年時代の遊びで鍛えた「正確な投擲」が、騎士たちの結界の僅かな隙間に、次々と粉を叩き込んでいく。

レイはなんだか心地よかった。

自分の計算では、ここで数人が突破され、自分が迎撃に出るはずだった。

だが、村人たちは、レイが教えた以上の動きで、敵の精鋭を圧倒していた。

(誰かに求められるってのは……こういう気持ちなんだな)

(俺がみんなを守っているんじゃない。みんなが俺を、そしてこの村を守ろうとしている。……ああ、そうか)

(もう、俺は一人じゃないんだな……”捨てられた”俺ではないんだな....)

レイの胸の奥に、かつて感じたことのない温かい感情が広がっていく。

それは鑑定してもわからない感情だった。


「ニーナ、シア! 仕上げだ!」

レイが巨大な魔導狙撃弓を番える。

シアがその隣に寄り添い、祈りを捧げる。

「――《清らかなる聖なる光よ、迷える魂の道標となれ》—―正典修復カノン・リペア

シアの聖魔法が弓を包み込み、吹雪による僅かな「揺れ」を完全に静止させた。


さらにニーナが、矢の軌道上の空気を排し、完全な「風の道」を作り出す。


レイが弦を離す。 それは、一千人の想いと、一人の知略が結晶となった一撃だった。


敵陣の後方、禁忌の熱魔法で氷を溶かそうとしていた魔導師の眉間に、矢が吸い込まれる。 断末魔すらあげる暇のない、文字通りの確殺。

指揮官を失い、さらに前線を土壁と凍気に阻まれたバンデリオン先遣隊は、列を乱して敗走を始めた。


「……終わった、のか?」 誰かが呟く。

次の瞬間、要塞に地鳴りのような歓声が沸き起こった。

「勝ったぞ! レイ様のおかげだ!」 「いや、俺たちの力だ! 俺たちの勝利だぞ!」


沸き立つ村人たちをよそに、レイは静かに石壁にもたれかかった。

「……ふぅ。……なんだ、これ」


ドッと、形容しがたい疲労感が押し寄せてきた。

指一本動かすのも億劫だ。足が鉛のように重い。

これまで、数千の盗賊やバドスを相手にしても、こんな風にはならなかった。


(自分でも知らぬ間に、緊張してたんだな……。はは、情けないな...俺は...)

だが、その顔は、これまでで一番穏やかだった。


「レイ、お疲れ様」 聞き慣れた優しい声。 シアが、湯気の立つ器を手に歩み寄ってきた。

「……ああ、シア。悪いが、今は箸を持つのもきつい。……少しだけ、肩を貸してくれ」 「ふふ、いいわよ。……冷えちゃうかもしれないけど、こってり、用意してあるから。少し休んでから、食べたらいいわ」

レイはシアの細い肩に頭を預け、目を閉じた。

一千人の鼓動と、仲間の温もり。

二万の本軍との決戦は、すぐそこに迫っている。

だが、今のレイには、それを乗り越えられるという確信があった。

吹雪の夜。

シレハ村の「捨て石」たちは、一人の少年の手によって、世界を震撼させる「牙」へと変貌を遂げたのであった。

—―—―—―—―—―—―—―—―—―—―—―—―—―—―—―—―—―—―—―—―—

今話の極小情報:ニーナとシアの情報。

ニーナ:【名:ニーナ 年齢:13】【MP:450】【ステータス】武力:B(A) 知力:B(A) 統率:B(A) 政治:D(C)【サブステータス】兵法:C(C) 馬術:D(D) 陸戦:C(A) 海戦:F(A) 工作:C(A) 諜報:B(S) 農耕:B(B) 商業:D(D) 建築:C(C) 成長:S 忠誠:10 【固有スキル】--【スキル] 剣術C(C) 槍術C(B) 弓術A(A) 体術C(B) 投擲術C(B) 炎魔法B(A) 風魔法A(S) 調理B(A) 探索B(A)


シア:【名:シア 年齢:13】【MP:600】【ステータス】武力:C(B) 知力:A(S) 統率:A(A) 政治:A(A)【サブステータス】兵法:A(A) 馬術:C(C) 陸戦:C(B) 海戦:D(B) 工作:B(A) 諜報:B(A) 農耕:A(A) 商業:A(S) 建築:B(B) 成長:S 忠誠:---【固有スキル】--【スキル] 弓術D(B) 投擲術E(D) 聖魔法A(S) 付与魔法C(A) 亜空間魔法B(A) 錬金C(A) 調理S(S)


【お読みいただきありがとうございます!】

次話は、完全決着!!

~高評価やブックマーク、感想等いただけるとありがたいです!~ 

「ふっと二言:金色の甲冑を纏っていた五百の騎士たち。あれ、実は「見た目の威圧感」のためだけに純金を薄くメッキしてある特注品です。

そのため、冷気伝導率が鉄よりも異様に高く、レイたちの『氷鈴の粉』が撒かれた瞬間、中身の騎士たちは「一瞬でキンキンに冷えた缶ビール」のような状態になっていました。彼らが突進を止められなかったのは、勇気ではなく「止まったらそのまま凍りついて動けなくなる」という恐怖からだった……という悲しい裏設定があります。」

――――――――【他作品も全力執筆中!】

更新をお待ちいただく間に、こちらの作品もご一読いただけると幸いです!

・ロード・オブ・ザ・キャット~「人生」取り戻すために、「猫生」極めすぎたら、世界を救ってたって、それ営業妨害ですか.....?~

【無双×成り上がり×成長×魔法×猫×勘違い×コメディ】→「人生」を得るために最強のユニーク個体の「猫生」を送る、勘違い人外無双譚です!


・『自分』と『推し』のために暗躍する無能(偽)な護衛

【無双×悪役令嬢×暗躍×チート×恋愛】 → 悪役令嬢の護衛でありながら、別の「推し令嬢」を救うために裏で無双する暗躍劇です!


・『【武の極致】と【フェンリル】の力を以て、三つの世界で覇者となった俺』

【戦×無双×成長】 →天下を争う軍記モノです!※後々、魔法や異世界系に変わっていきます!


・『生涯、病室だった俺、異世界で自由な体を手に入れたので、天下を獲ることにした』

【戦×無双×成り上がり×領地経営×魔法】 → 成り上がり無双譚です!

⇧※本作です。これからもお付き合いのほど、よろしくお願いいたします!

 




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ