#16:まずは一人。収穫の始まりだ
おはようございます! 本日もどうぞ、よろしくお願いいたします!
本日の投稿は、この#16からスタートです!
今日は複数話、投稿予定です!!
朝の一言:「特に朝の冷気がしんしんとこの体に染みてきます....読者の皆さま方も、ご自愛を....」
【前話のあらすじ:ついに、ガラム村の大村長、パドスを地下牢にぶちこんだレイ。しかし、レイのシレハ村には新たな、そして強大な敵が迫っていた....】
「……援軍は来ない、だと?」
シレハ村の広場。
王都から派遣された伝令兵が放ったその言葉は、集まった村人たちの顔を瞬時に蒼白へと染めあげた。
窓の外では、例年にも増して激しい大雪が吹き荒れ、視界を白一色に染め上げている。
「あ、ああ……。隣国バンデリオンが国境を越えた。その数、およそ二万。王都本軍は冬の積雪により進軍を阻まれ、到着は最短でも一ヶ月後になる見込みだ」
「一ヶ月!? そんなの、明日にも攻め込まれる俺たちは全滅じゃないか!」
村人たちの悲鳴が上がる中、レイは広場の壁に背を預け、冷めた目で地図を見つめていた。
「伝令。一つ聞きたいんだが、国境守備軍の今の位置はどこだ?」
レイの静かな問いに、伝令兵は気圧されたように言葉を詰まらせた。
「そ、それは……シレハ村の属する大村の一つ後方の大村、ベルナ大村まで一時撤退し、そこに強固な防衛線を敷いている」
「……なるほどな。分かりやすい」 レイの口角が、皮肉に歪んだ。
ベルナ大村まで撤退したということは、このシレハ村を含む最前線の大村、フィルス大村を、王都側は「時間を稼ぐための捨て石」として処理したということであった。
大雪で援軍が遅れるわけではない。
勿論、それもあるだろうが、それ以上にベルナに本陣を構えるための時間を、俺たちの死体で稼ごうという魂胆が、レイには透けて見えた。
「レイ、どういうこと……?」
不安げに問いかけるニーナに、レイは淡々と事実を告げた。
「簡単だよ、ニーナ。俺たちは国に見捨てられたんだ。……二万の軍勢を前に、精々泥臭く死んで、ベルナの連中が温かいスープを飲む時間を一秒でも長く稼げ。そう言っているのさ」
広場が絶望に沈む。
しかし、レイの瞳に絶望の色は微塵もなかった。
「……いいだろう。国が俺たちを捨てたなら、この土地は今日から俺のものだ。俺の領地を汚す不法侵入者は、俺のやり方で処理させてもらう」
レイは顔を上げ、村人たちを見回した。
「全員、聞け!絶望している暇があるなら、俺の命令に従え。一人も死なせず、二万の軍勢を一人残らずこの地に埋めてやる」
レイの言葉に、村人たちが弾かれたように顔を上げた。
かつて、数百あるいは数千の盗賊を、そして、バドスを物理的・社会的に消し去った少年の言葉には、それだけの重みがあった。
「作戦会議を始める。……それと、戦場は、ここじゃない...」
そう言うと、レイは地図の一点を指差した。
村から徒歩15分程の要塞。
そして、そこは国境守備軍が捨てていった無人の石造り要塞――『国境北塞』。
「村で戦えば、銀鈴草の群生地が荒れるし、直すのも面倒だ。なにより、村まで来させれば、シレハ村の防衛設備の情報を敵に持ち帰られるからな....」
レイのもとには、行き場をなくした、ガラム村をはじめとする、フィルス大村に属する村人たちが集まってきていた。
その中でも、戦える者は千人程だった。
レイは即座に指示を出した。
ニーナには遊撃隊を。シアには狙撃隊を。ロブには工作隊を。ガストンには援護を。
自身も含め、5つの部隊に千人程を均等に分けていく。
一千人の動員兵力は、レイという一人の脳を得て、巨大な生命体のように動き始めた。
要塞の前に広がるのは、遮るもののない広大な平原地帯。
普通に考えれば、二万の大軍が縦横無尽に展開できるため、守備側にとって、地の利はなかった。
だが、レイはその平原を見つめて不敵に笑った。
「この世界には、魔法がある。……」
レイは工作(S)を使って、要塞の至る所に「細工」を施していった。
国境守備軍が残していったガラクタ同然の魔法アイテム、古びた魔導砲、さらには要塞の脆弱な構造そのものを組み替えていく。
そして、その合間、レイは工作隊の鼠族たちを、平原の地下へと潜り込ませた。
「ロブ。平原の何か所かに、俺が渡した『氷結の起点』を埋め込め。……地盤を崩す必要はない。ただ、敵の『足』を奪えればいい」
「承知!」
『氷結の起点』とは、レイがロブと創り上げた魔法アイテムで、普段は銀鈴草を採取する際に、瞬間凍結させ、鮮度・効能を保ったまま、安全に採取するために使用するものだ。
夕刻。
吹雪が一段と激しくなる中、ついに地平線の彼方から「黒い波」が現れた。
バンデリオン王国の先遣隊、およそ三千。 その後方には、雪を蹴立てて進む本隊一万七千が続いていた。
要塞の頂上。
レイは、弓を番えていた。
「レイ、敵の先頭……まだ、二キロ以上あるわよ?」
「ああ、わかっている。だが、問題ない....」
吹雪による視界不良。風速によるズレ。この世界の重力。
すべてを脳内の演算で補正し、敵の最前列で指揮を執る、金色の甲冑を纏った騎兵に狙いを定めた。
「ニーナ、今だ!詠唱を始めろ!」
レイの合図で、ニーナが風魔法の詠唱を始める。
「――《風を食らいて静寂となし、光を束ねて穿つ理よ。 視界の果て、命の灯火を無へと誘え》 ――真空穿弾」
ニーナの詠唱が終わるか終わらないかのうちに、レイが弦を放つ。
その直後、ニーナの起こした突風が、レイの放った矢を加速させていく。
放たれた矢は、空気抵抗を完全に無視し、吹雪を切り裂きながら直進した。
数秒の静寂のあと、二キロ先で悠然と指揮を執っていた金色の将軍の頭部が、弾けたように消し飛んだ。
「……まずは一人。収穫の始まりだ」
敵軍が混乱に陥っているのは、この要塞から見ていても明らかだった。
誰も届かないはずの距離からの、あり得ない狙撃。
「ここからが本番だ。一歩ずつ、奴らの絶望を深めていこうか....」
レイの合図とともに、作戦の第一段階が始動した。
平原を進もうとするバンデリオン軍。
彼らが一歩踏み出すたび、雪の下に隠された「氷結の起点」が音もなく作動する。
派手な爆破音はない。ただ、踏んだ者の足を一瞬で凍りつかせ、地面に縫い止める。
「な、なんだ!? 足が動かん!」 「助けてくれ! 凍りついて……ギャアア!」
一人が足を止めれば、行軍は滞る。
後ろから続く兵士たちが重なり、密集したところに、さらに『氷結の起点』が発動する。 二万の軍勢が、広大な平原の真ん中で、「立ち往生」を余儀なくされていた。
「……さて。夜は長いぞ、バンデリオン。朝までに、お前たちのうち何人が『人間』のままでいられるかな」
要塞の司令塔で、レイは懐から一通の書状を取り出し、それを握りつぶした。
それはベルナ大村に撤退した守備軍の軍長から、レイ宛てに届いた「村人は囮となって死ね」という密書だった。
「守備軍には、この戦いが終わってからたっぷりと礼をしてやろう。……今は、この二万の処理に集中しなければ.....」
レイの背後では、ニーナが風魔法の準備を整え、シアがガストン共に魔導砲の照準を調整している。
ロブたち鼠族は地下で、平原を「島」として切り離す準備を進めていた。
一千人が二万を喰らう。
あり得ないはずの奇跡を、レイは「必然」へと書き換えようとしていた。
レイを馬鹿にする村人たちは、誰一人としていなかった。
フィルス大村の村人たちの命は、13歳の少年に預けられたのであった。
吹雪の夜が深まる。
それは、バンデリオン王国にとって、建国以来最大の悲劇の始まりであり、 レイという一人の少年の名が、大陸全土に恐怖と畏怖と共に轟く、最初の転換点であった。
【お読みいただきありがとうございます!】
次話は、戦争第二弾!!
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「ふっと二言:レイがついに天下への一歩を!!と言いつつも、彼はまだ村長....地道に爆速で上がっていくしかないですね!!筆者も、筆者の作品も地道に爆速で上がっていければ....(笑)」
――――――――【他作品も全力執筆中!】
更新をお待ちいただく間に、こちらの作品もご一読いただけると幸いです!
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