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16/19

#16:まずは一人。収穫の始まりだ

おはようございます! 本日もどうぞ、よろしくお願いいたします!

本日の投稿は、この#16からスタートです!

今日は複数話、投稿予定です!!


朝の一言:「特に朝の冷気がしんしんとこの体に染みてきます....読者の皆さま方も、ご自愛を....」


【前話のあらすじ:ついに、ガラム村の大村長、パドスを地下牢にぶちこんだレイ。しかし、レイのシレハ村には新たな、そして強大な敵が迫っていた....】

「……援軍は来ない、だと?」

シレハ村の広場。

王都から派遣された伝令兵が放ったその言葉は、集まった村人たちの顔を瞬時に蒼白へと染めあげた。

窓の外では、例年にも増して激しい大雪が吹き荒れ、視界を白一色に染め上げている。


「あ、ああ……。隣国バンデリオンが国境を越えた。その数、およそ二万。王都本軍は冬の積雪により進軍を阻まれ、到着は最短でも一ヶ月後になる見込みだ」

「一ヶ月!? そんなの、明日にも攻め込まれる俺たちは全滅じゃないか!」

村人たちの悲鳴が上がる中、レイは広場の壁に背を預け、冷めた目で地図を見つめていた。


「伝令。一つ聞きたいんだが、国境守備軍の今の位置はどこだ?」

レイの静かな問いに、伝令兵は気圧されたように言葉を詰まらせた。

「そ、それは……シレハ村の属する大村の一つ後方の大村、ベルナ大村まで一時撤退し、そこに強固な防衛線を敷いている」

「……なるほどな。分かりやすい」 レイの口角が、皮肉に歪んだ。


ベルナ大村まで撤退したということは、このシレハ村を含む最前線の大村、フィルス大村を、王都側は「時間を稼ぐための捨て石」として処理したということであった。

大雪で援軍が遅れるわけではない。

勿論、それもあるだろうが、それ以上にベルナに本陣を構えるための時間を、俺たちの死体で稼ごうという魂胆が、レイには透けて見えた。


「レイ、どういうこと……?」

不安げに問いかけるニーナに、レイは淡々と事実を告げた。

「簡単だよ、ニーナ。俺たちは国に見捨てられたんだ。……二万の軍勢を前に、精々泥臭く死んで、ベルナの連中が温かいスープを飲む時間を一秒でも長く稼げ。そう言っているのさ」


広場が絶望に沈む。

しかし、レイの瞳に絶望の色は微塵もなかった。

「……いいだろう。国が俺たちを捨てたなら、この土地は今日から俺のものだ。俺の領地を汚す不法侵入者は、俺のやり方で処理させてもらう」

レイは顔を上げ、村人たちを見回した。

「全員、聞け!絶望している暇があるなら、俺の命令に従え。一人も死なせず、二万の軍勢を一人残らずこの地に埋めてやる」

レイの言葉に、村人たちが弾かれたように顔を上げた。


かつて、数百あるいは数千の盗賊を、そして、バドスを物理的・社会的に消し去った少年の言葉には、それだけの重みがあった。


「作戦会議を始める。……それと、戦場は、ここじゃない...」

そう言うと、レイは地図の一点を指差した。


村から徒歩15分程の要塞。

そして、そこは国境守備軍が捨てていった無人の石造り要塞――『国境北塞ノース・フォート』。

「村で戦えば、銀鈴草の群生地が荒れるし、直すのも面倒だ。なにより、村まで来させれば、シレハ村の防衛設備の情報を敵に持ち帰られるからな....」


レイのもとには、行き場をなくした、ガラム村をはじめとする、フィルス大村に属する村人たちが集まってきていた。

その中でも、戦える者は千人程だった。


レイは即座に指示を出した。

ニーナには遊撃隊を。シアには狙撃隊を。ロブには工作隊を。ガストンには援護を。

自身も含め、5つの部隊に千人程を均等に分けていく。

一千人の動員兵力は、レイという一人の脳を得て、巨大な生命体のように動き始めた。


要塞の前に広がるのは、遮るもののない広大な平原地帯。

普通に考えれば、二万の大軍が縦横無尽に展開できるため、守備側にとって、地の利はなかった。


だが、レイはその平原を見つめて不敵に笑った。

「この世界には、魔法がある。……」

レイは工作(S)を使って、要塞の至る所に「細工」を施していった。

国境守備軍が残していったガラクタ同然の魔法アイテム、古びた魔導砲、さらには要塞の脆弱な構造そのものを組み替えていく。


そして、その合間、レイは工作隊の鼠族たちを、平原の地下へと潜り込ませた。

「ロブ。平原の何か所かに、俺が渡した『氷結の起点』を埋め込め。……地盤を崩す必要はない。ただ、敵の『足』を奪えればいい」

「承知!」


『氷結の起点』とは、レイがロブと創り上げた魔法アイテムで、普段は銀鈴草を採取する際に、瞬間凍結させ、鮮度・効能を保ったまま、安全に採取するために使用するものだ。


夕刻。

吹雪が一段と激しくなる中、ついに地平線の彼方から「黒い波」が現れた。

バンデリオン王国の先遣隊、およそ三千。 その後方には、雪を蹴立てて進む本隊一万七千が続いていた。


要塞の頂上。

レイは、弓を番えていた。

「レイ、敵の先頭……まだ、二キロ以上あるわよ?」

「ああ、わかっている。だが、問題ない....」


吹雪による視界不良。風速によるズレ。この世界の重力。

すべてを脳内の演算で補正し、敵の最前列で指揮を執る、金色の甲冑を纏った騎兵に狙いを定めた。


「ニーナ、今だ!詠唱を始めろ!」

レイの合図で、ニーナが風魔法の詠唱を始める。

「――《風を食らいて静寂となし、光を束ねて穿つ理よ。 視界の果て、命の灯火を無へと誘え》 ――真空穿弾バキューム・ショット


ニーナの詠唱が終わるか終わらないかのうちに、レイが弦を放つ。

その直後、ニーナの起こした突風が、レイの放った矢を加速させていく。


放たれた矢は、空気抵抗を完全に無視し、吹雪を切り裂きながら直進した。


数秒の静寂のあと、二キロ先で悠然と指揮を執っていた金色の将軍の頭部が、弾けたように消し飛んだ。


「……まずは一人。収穫の始まりだ」

敵軍が混乱に陥っているのは、この要塞から見ていても明らかだった。

誰も届かないはずの距離からの、あり得ない狙撃。


「ここからが本番だ。一歩ずつ、奴らの絶望を深めていこうか....」


レイの合図とともに、作戦の第一段階が始動した。

平原を進もうとするバンデリオン軍。

彼らが一歩踏み出すたび、雪の下に隠された「氷結の起点」が音もなく作動する。

派手な爆破音はない。ただ、踏んだ者の足を一瞬で凍りつかせ、地面に縫い止める。


「な、なんだ!? 足が動かん!」 「助けてくれ! 凍りついて……ギャアア!」


一人が足を止めれば、行軍は滞る。

後ろから続く兵士たちが重なり、密集したところに、さらに『氷結の起点』が発動する。 二万の軍勢が、広大な平原の真ん中で、「立ち往生」を余儀なくされていた。


「……さて。夜は長いぞ、バンデリオン。朝までに、お前たちのうち何人が『人間』のままでいられるかな」


要塞の司令塔で、レイは懐から一通の書状を取り出し、それを握りつぶした。

それはベルナ大村に撤退した守備軍の軍長から、レイ宛てに届いた「村人は囮となって死ね」という密書だった。

「守備軍には、この戦いが終わってからたっぷりと礼をしてやろう。……今は、この二万の処理に集中しなければ.....」


レイの背後では、ニーナが風魔法の準備を整え、シアがガストン共に魔導砲の照準を調整している。

ロブたち鼠族は地下で、平原を「島」として切り離す準備を進めていた。


一千人が二万を喰らう。

あり得ないはずの奇跡を、レイは「必然」へと書き換えようとしていた。


レイを馬鹿にする村人たちは、誰一人としていなかった。

フィルス大村の村人たちの命は、13歳の少年に預けられたのであった。

吹雪の夜が深まる。

それは、バンデリオン王国にとって、建国以来最大の悲劇の始まりであり、 レイという一人の少年の名が、大陸全土に恐怖と畏怖と共に轟く、最初の転換点であった。


【お読みいただきありがとうございます!】

次話は、戦争第二弾!!

~高評価やブックマーク、感想等いただけるとありがたいです!~ 

「ふっと二言:レイがついに天下への一歩を!!と言いつつも、彼はまだ村長....地道に爆速で上がっていくしかないですね!!筆者も、筆者の作品も地道に爆速で上がっていければ....(笑)」 

――――――――【他作品も全力執筆中!】

更新をお待ちいただく間に、こちらの作品もご一読いただけると幸いです!

・ロード・オブ・ザ・キャット~「人生」取り戻すために、「猫生」極めすぎたら、世界を救ってたって、それ営業妨害ですか.....?~

【無双×成り上がり×成長×魔法×猫×勘違い×コメディ】→「人生」を得るために最強のユニーク個体の「猫生」を送る、勘違い人外無双譚です!


・『自分』と『推し』のために暗躍する無能(偽)な護衛

【無双×悪役令嬢×暗躍×チート×恋愛】 → 悪役令嬢の護衛でありながら、別の「推し令嬢」を救うために裏で無双する暗躍劇です!


・『【武の極致】と【フェンリル】の力を以て、三つの世界で覇者となった俺』

【戦×無双×成長】 →天下を争う軍記モノです!※後々、魔法や異世界系に変わっていきます!


・『生涯、病室だった俺、異世界で自由な体を手に入れたので、天下を獲ることにした』

【戦×無双×成り上がり×領地経営×魔法】 → 成り上がり無双譚です!

⇧※本作です。これからもお付き合いのほど、よろしくお願いいたします!



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