#15:遠慮する理由はどこにもなかった
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【前話のあらすじ:圧倒的な速度と精度で、シレハ村を整えていったレイ。しかし、そのシレハ村に、不穏な影が....】
「……シアが戻っていない、だと?」
シレハ村の入り口。
ゼノとの商談を終えて王都から戻るはずだったシアが未だにシレハ村に到着していなかった。
ほどなくして、シアの代わりに村の門に到着したのは、隣村ガラム村の大村長・バドスからの、見るに堪えないほど汚い字で書かれた脅迫状だった。
『シレハ村のすべての秘密を教えろ。さもなくば、この女の命はない』
その瞬間、シレハ村の空気は一変した。
まるで底なし沼に沈み込んだかのような、物理的な重圧。
レイを中心に、大地が微かに震え、周囲の鳥たちが一斉に羽ばたいて逃げ出していく。
言葉こそ丁寧なままだが、レイから放たれる殺気は、もはや隠しきれるレベルではなかった。
「……効率的じゃないなぁ。俺を怒らせることが、どれほどの損失を招くか……あの鳥頭には、どれだけ説明しても理解できなかったらしいな.....」
集まった村人たちは、そのあまりの恐ろしさに息を呑み、金縛りにあったかのように動けずにいた。
レイの周囲だけ、気温が数度下がったのではないかと思えるほどの冷気。
その沈黙を破ったのはニーナだった。
「レイ。あんた、怖いわよ。……こういう時こそ、落ち着きなさい。あんたがそんな顔してたら、助けられるものも助けられなくなるわ」
ニーナの手がレイの肩に置かれる。
その手が微かに震えているのを見て、レイは深く息を吐き、内側から溢れていた殺気を抑え込む。
「……ありがとう、ニーナ。少し頭に血が上っていた。……では、作戦を練る」
敵はバドス。
協力者は王都の一部貴族。
ならば、単に殺すだけでは到底足りない。殺せば、こちら側があることないこと言われて、汚名を着せられるのがオチだった。
加えて、シレハ村やガラム村を統括している町長、ジュゼップもバドスとは裏金でつながっている。
ゆえに、社会的、政治的、そして物理的に、その存在をこの世界から跡形もなく消去する必要があった。
「ゼノに手紙を出せ。……『失敗すれば、お前の首を飛ばす』と最後に書き添えておけ」
レイはゼノへ向けて、命令書をしたためた。
内容は二つ。
王都中にバドスの悪評を、これでもかというほど流すこと。
そして、今日の夕方までに王都の高官――それも、現場で即決権を持つ執政官クラスをガラム村に視察に来させるように仕向けること。
無論、「正気か」と発狂するような無茶振りではあったが、レイはゼノを信頼していた。そして、何より、ゼノが世界一の商会長として名を成すまでは”死にたくない”ことを知っていた。
今のゼノなら、死に物狂いでやり遂げる。それは確実だった。
「命を下す。ニーナはガラム村へ潜入して、バドスの『裏帳簿』を押さえてくれ。あくどい真似を続けてきた奴だ、必ず金づるとの繋がりを示す証拠があるはずだ」
「わかったわ!あいつの化けの皮、私が直接剥いでやるわ」
「ロブ。お前は探索スキルを活かして、シアの側に潜伏しろ。俺たちが暴れだすのと同時にシアを保護し、村まで退避させるんだ。……シアに傷一つ付いていれば、ガラム村を地図から消すことになる。頼んだぞ」
「お任せください……! この命に代えてもやり遂げて見せます!」
1時間ほどして、ニーナが裏帳簿を持って帰ってくると、レイはそれを素早く複写させ、追伸として、ゼノに手紙を送った。
ガストンには万が一の事態に備えて、村の防衛を任せ、レイはニーナを含む選りすぐりの十人でガラム村へと向かった。
夕刻。ガラム村のバドスの屋敷。
「ひ、ひひっ! あのシレハのガキめ、今頃泣きながら村の秘密を書き出しているだろうよ!」
バドスが安物のワインを煽り、成金趣味の椅子で下卑た笑い声を上げていると、突然、屋敷の正面門が轟音と共に吹き飛んだ。
「……掃除の時間だ」
土煙の中から静かに歩を進めてきたのは、レイだった。
「なっ、貴様……! お、おい! やれ! 全員殺せ! 抵抗する奴は容赦するな!あの女も殺すように伝えろ!」
バドスの号令で、中庭に控えていた二百人の私兵が一斉にレイへと襲いかかる。
レイは横目でロブがシアを保護し、村へ退避していくのを確認すると、レイは、静かに右手を掲げた。
もはや、遠慮する理由はどこにもなかった。
「――《地に眠る理よ、我が憤怒を糧として目覚めよ。 逃げ場なき牢獄、抗えぬ終焉。 慈悲を捨て、救いを絶ち、その存在を無へと還せ》 ――深淵殲滅陣」
それは土魔法というより、もはや一方的な蹂躙だった。
レイが指先を僅かに動かすたび、目に見えない空間の刃が私兵たちの武器を、鎧を、そして肉を容赦なく切り刻んでいく。
地面からは無数の鋭い土の槍が突き出し、逃げ惑う男たちを次々と串刺しにしていった。
悲鳴を上げる暇すら与えない、
かつて「腕利き」と自称していたであろう私兵たちは、文字通り「ゴミ」のように中庭に積み上げられていった。
一方で、ニーナたち九人もまた、訓練の成果をいかんなく発揮していた。
バドスの腰巾着である冒険者パーティーや、状況も分からず煽動された村人たち百名を相手に、彼女たちは怯むことなく突き進んでいた。
「――《風よ、凪を裂き、我が敵を拒絶せよ》 ――烈風衝!」
ニーナが放つ風魔法が、襲いかかる冒険者たちを木の葉のように吹き飛ばす。
彼女に続く村の青年たちも、体術を駆使して、一撃で敵を無力化していった。
「シアを攫った罰よ! 全員、そこで寝てなさい!」
ニーナの蹴りが冒険者の顎を捉え、瞬時に意識を刈り取っていく。
戦いは、数分と持たなかった。
返り血一つ浴びず、死屍累々の中心で静かにレイは佇んでいた。
そこに、猛烈な勢いで一台の豪華な馬車が、砂埃を上げて、駆け込んでくる。
御者を務めているのはゼノだった。死の物狂いで飛ばしてきたようで、髪は乱れ、汗だくであった。
中から現れたのは、王都の執政官の一人、リアンであった。
「…ケホッケホッ……だいぶ、荒い馬車でしたが.....それほどの騒ぎなのですか。.....!!....報告を受けて急行したが、まさかこれほどとは.....」
リアンは目の前の惨状――二百人の私兵が転がり、一人の少年が涼しい顔で立っている異常な光景に、言葉を失って立ち尽くした。
「執政官殿、良いところへ。少しお見せしたいものがあります」
レイは冷徹な微笑を崩さぬまま、ニーナが探し当てた「本物の裏帳簿」を、リアンの前に差し出した。
「なっ、そ、それは……! どこでそれを!」
バドスが椅子から転げ落ち、顔面蒼白になって叫ぶ。
リアンはその帳簿をひったくるように手に取り、頁を捲るごとにその表情を険しくさせていった。
そこには、王都の一部貴族や近隣の村長たちとの、悍ましい贈賄と汚職の記録が、言い逃れのできない詳細さで克明に記されていた。
「……バドス。貴様の悪行、最早これまでだ。ゼノ殿からの緊急告発と、この動かぬ証拠……。弁明の余地など欠片もない.....保険として、持っておいたのが、逆に仇になったな.....」
リアンは、虫ケラを見るかのような冷たい視線をバドスに投げつけた。 「
「執政官の名において命じる。バドス。貴様をガラム村の大村長から即刻解任する。……全資産は没収の上、貴様とここに名を連ねた協力者たちは、王都の地下牢で一生を過ごすことになる。二度と太陽を拝めるとは思うな....!!」
「あ、あああ……そんな……私の、私の地位が……富が……すべて、すべて失われるというのか……!」
バドスは力なく地面に崩れ落ち、虚空を掴むように指を震わせた。
どうやら、町長のジュゼップだけは、間一髪で「自分もバドスに脅されていた被害者だ」という立ち位置を確保し、うまく言い逃れていたようだった。
「バドス、あんたの負けよ。……シレハ村を、レイを敵に回したのが運の尽きね」
ニーナが吐き捨てるように言い、バドスに背を向けた。
リアンは部下たちに命じ、罪人となったバドスを引きずり出すようにして連行させた。
「……後任の人事については、王都に戻り次第、追って沙汰を下す。……レイ殿。貴方のこの力、そして情報の精度……驚かされた。いずれ、王都でゆっくりと語り合える日を楽しみにしている....」
リアンはレイを深く、探るような目で見つめた後、馬車を走らせて去っていった。
嵐が過ぎ去った後のガラム村。 屋敷の広場には、ただ虚しい風だけが吹き抜けていた。
「……レイ。シアは無事よ。ロブがもう村の自宅まで連れ帰ったって。怪我もないみたい」
ニーナの声を聞き、レイは初めて憑き物が落ちたような顔をして、ゆっくりと空を見上げた。
茜色に染まり始めた空は、先ほどまでの血生臭い光景が嘘のように穏やかだった。
「……そうか。なら、夕飯には間に合いそうだな」
レイは、いつもの冷静な、それでいてどこか柔らかな口調を取り戻していた。
「シアには、とびきり美味しいラーメンを作ってやろう。……『こってり』の新作、あいつなら喜んで食うだろう」
天下を獲るための覇道。
その過程で護るべき者の平和が乱されれば、こうして社会的にも物理的にもその存在を排除する。
それがレイの選択だった。
シレハ村は強くなり、再び、豊かな平和を取り戻していた。
しかし、強大な敵が彼らに迫っていた。
レイ:【お読みいただきありがとうございます!】
次話は、ついに、大事件!!
~高評価やブックマーク、感想等いただけるとありがたいです!~
ふっと二言:「バドスには、筆者も少し思うところがあり、退場してもらいました!!次なる敵は、ジュゼップだと思っているのではないでしょうか??.....違います(筆者moveはダルゥ....と思われていたら、申し訳ないです。。。)
とにもかくにも....お楽しみにしていてくだされば、幸いです....!!」
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