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第8話 薬草採取再び

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 第8話 薬草採取再び

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 冬の間中、私たちはアップルジュース作りに励んだ。それしかしてない。

 後半はキャスカさんに毎日尻を叩かれながらアップルジュースを作った。あの人、がめついんだよ。でも、秘密は守る人だ。


「終わったーーーっ!」

「これでアップルジュース作りから解放されるわ」

「やっと終わった……」


 今日の納品で今シーズンのアップルジュースは終了だ。

 エリスはやっと終わったと万歳し、ラウラはジュース作りから解放されたと床に寝そべった。

 私も何かに追いかけられるような、強迫観念のようなものから解放されて脱力した。


「ねえ、いくら貯まったの?」

「うんうん、いくら?」

「ちょっと待ってね」


 私は床の板を外し、地面に埋めるように隠していた壺を取り出した。

 そこには銀貨と白銅貨がたんまり入っており、それを床に広げた。銀貨と白銅貨を分け、数を数える。


「銀貨八十三枚、白銅貨四十八枚。すごいよ、金貨八枚分だよ!」


 銀貨一枚あれば、私たちは一カ月ほど暮らせる。贅沢は出来ないけど、飢えることもない。

 それなのに金貨八枚分の大金が目の前にある! これでラウラの魔法書が買えるよ!


「よし、ラウラの魔法書を買いにいこう!」

「え、いいの?」

「いいよ。ラウラが強くなることは、私たち三人のためだからね」

「そうだぞ、ラウラ!」

「ありがとう、二人とも!」


 ラウラが私とエリスに抱きついた。うん、いいものを持っているね!


「キャスカさーん」


 カウンターの下から顔を出すのはいつものことだ。


「シュラウトかい。アップルジュースを持ってきたのかい?」

「違いますよ。あれはもうシーズンオフです」

「ちっ」


 舌打ちしたよ、この人!


「で、なんだい?」

「第三位階の魔法書をください!」

「あんたら、ついこの間第二位階の魔法書を買っただろ? もう第三位階なのかい?」

「はい! ラウラは魔法の天才なんです!」

「そ、そんなことはないよ」


 ラウラが頬を染めて恥ずかしがっている。でも、説明さんの言う通りに、ラウラは本当に賢者の片鱗を見せているからね!


「ですから、第三位階の魔法書をください」

「売ってあげたいのは山々だけど、第三位階の魔法書はうちにはないんだよね」

「入手は可能ですか?」

「普通は魔法使いの弟子になって魔法学校に通い、それから覚える魔法だからねぇ。簡単には手に入らないよ」

「でも、キャスカさんなら手に入れられますよね?」


 この人ならどこからか持ってきそうだもんね。


「まあ、ルートがないわけじゃないけど、高くつくよ」

「いかほどですか?」

「通常のルートなら金貨一枚くらいだけど、うちは金貨一枚と銀貨五枚、もしかしたら金貨二枚くらいになるかもね」

「構いません。金貨二枚なら出します。ですから、手に入れてください」

「豪気だね。分かったよ、第三位階の魔法書を手に入れてみるよ」

「はい、お願いします」


 魔法学校に入学するには、最低でも金貨数十枚が必要だったはずだ。それを考えると、金貨二枚で第三位階魔法が手に入るなら、かなり安いと思う。

 それに魔法学校へ通うには、魔法使いの紹介が必要だと聞いたことがある。簡単にいうと、弟子を魔法学校に推薦するのだ。

 私たちにそんな知り合いはいないから、キャスカさんが金貨二枚でというのはありがたいくらいだ。


「手にいれるには、しばらく時間がかかるからね」

「はい、待ちます」


 私たちはゴラゴラの店を出て、買い物をした。第三位階の魔法書が思ったよりも安く手にはいりそうだから、ちょっと豪華な夕食にしようと思ったんだ。


「二人とも、うちのために大金を使ってごめん……」


 ラウラが立ち止り、泣きそうな顔をしている。私は彼女の手を握った。


「言っただろ、ラウラが強くなるのは、私たちのためだって」

「そうだぞ、ラウラ」

「う……ん。ありがとう」


 ラウラの目に浮かんだ涙を指で拭いてやると、彼女はいい笑顔を見せてくれた。





 かなり暖かくなってきたある日、私はとうとう生活魔法を覚えた。

 私はまだ穴を掘るホールが使えるようになっただけだが、魔法が使えるというのはこんなにも嬉しいことなのかと感動を覚えた。


「ホール!」

「ホール!」

「ホール!」

「ホール!」

「ホール!」

「ホール!」

「ホール!」

「ホール!」

「ホール!」

「ホール!」

「ホール!」

「はぁはぁ……」

「そんなに穴を掘ってどうしたんだ?」

「何回使えるのか、確認しているんだよ。エリス」

「ふーん。そうなんだ」

「分かってないだろ」

「回数だろ?」

「回数を確認している意味のことだよ」

「そういう難しいことはシュラウトとラウラが考えればいい。あたしはこれでがんばるよ!」


 剣をポンと叩いたエリスはいい笑顔だ。

 それはともかく、ホールだっていざという時は役に立つかもしれない。小さな穴でも敵の姿勢を崩すくらいのことはできるはずだ。

 もっともそういった状況にならないのが一番だけどね。それでホールの回数だけど、今の私では十一回が限度のようだ。

 そして、魔力が尽きても気絶はしないらしい。気分が多少悪くなるが、動けないほどじゃない。




 今日はゴラゴラの店に出向いた。とうとうあれが入ったようだ。


「金貨二枚だよ」

「はい。これを」


 カウンターの上に銀貨を二十枚並べる。


「たしかに」


 銀貨の数を数え終えたキャスカさんが、第三位階魔法をドサッと置いた。なかなかの重厚感があるものだ。


「確認だけど、第四位階の魔法書と言わないだろうね」

「言うと思いますよ。うちのラウラは天才ですから」


 キャスカさんは大きなため息を吐いた。


「金貨十枚積んでも難しいよ」

「そんなにですか」

「どれだけかかるか、その時次第だよ」


 うへー。こりゃー大金だ。

 第四位階の魔法書のために、もっと稼がないといけないな、こりゃ。


 その後十日もすると、ラウラは第三位階魔法をマスターしてしまった。どんだけだよ!?




 今日は森の中で薬草を採取している。アップルジュース作りは冬の間だけの期間限定だけど、薬草採取は一年中できる。

 そんな私たちの前に、なんとゴブリンが現れた。

 ちょっと奥へ入ったかもしれないが、十分に安全マージンをとっていたのだけどね。


「ふーふー」


 私はゴブリンの赤い瞳を見つめ、恐怖心を克服しようと試みた。

 が、ゴブリンはあっという間に二人に倒された。私の覚悟の行き場が……。


「おーい、シュラウトー」

「どうしたの?」

「これ」

「え?」


 そこには少女が倒れていた……。い、生きているのか!?



ご愛読ありがとうございます。

これからも本作品をよろしくお願いします。


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― 新着の感想 ―
流石ラウラちゃん!天才っぷりを発揮してますね! やはり魔法書は特別な書物だからか値段の跳ね上がり方がレベチですね。 そして森の中で発見した倒れている少女… まさか彼女が聖女の才能がある少女とか…!? …
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