第6話 カップールジュース作り
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第6話 カップールジュース作り
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紫カップールを説明さんで見ると、もう少し熟成させたほうがいいとあった。時間としては三日後が食べごろだ。
「三日も待つのかー!?」
エリスが残念だと肩を落とす。
「でも一番美味しいところで食べられるなら、待つ甲斐があるわ」
甘くて美味しいカップールを想像しているのか、ラウラはニマニマしている。
私は赤色のカップールの下処理を始めた。説明さんは作り方や分量もちゃんと教えてくれるし、それが何グラムかまで教えてくれるのだ。おかげでカップールジュース作りが捗る。
【カットカップール(赤):カットされたカップールの果肉 重量は三十グラム】
「なんか酸っぱい臭いがする」
カップールの実をカットしているエリスが眉をひそめる。
「赤い実だからね」
さすがはお酢の代替品になるだけのことはあるな、前世で嗅いだようなお酢の臭いがする。
「ケバリの葉は適度に千切ってね」
「うん」
ラウラはケバリの葉の処理担当だ。
ケバリの葉も独特の臭いがするので、どっちも臭いんだ。
「下ごしらえは終わりだね。ラウラ、鍋に水を入れてくれるかな」
「うん」
ラウラが生活魔法で水を出してくれる。ラウラのおかげで、遠くの川まで水汲みにいかずに済むから、本当に助かっているよ。
「水の次は火をお願い」
「うん」
枯れ枝などは拾ってこないといけないが、火を点けるのも楽になった。以前は原始的なやり方で火を点けていたんだ。結構な重労働だった。
「私も早く生活魔法を覚えたいよ」
「シュラウトなら覚えられる。大丈夫」
ラウラはそう言っていつも私を励ましてくれる。
カップールとケリバの葉を煮込んで、説明さんの指示通りのところで火から鍋を下ろす。
あとは冷暗所で七日間放置だ。その間鍋が使えないなのは厳しいな。竹の筒でもあればいいけど、竹は見たことがないんだよな。
待つこと三日。カップール(紫)が食べごろになった。これも売れば高額で引き取ってもらえるらしいが、今は余裕があるから食べることにした。というか、最初から売る気はなかった。特にエリスとラウラは。
六等分に切り分け、二切れずつを木皿に置く。
ゴクリッ。誰かの喉の音が聞こえた。
「いただきます」
「「いただきます」」
サクッ。シャリッシャリッシャリッ。ゴックンッ。
「「「っ!?」」」
「美味い!」
「美味しいわ!」
本当に美味しい。糖度二十度はあるのかな。それでいてしつこくない甘さだ。いくつでも食べられるぞ、これ。
幸せな表情で食べ進めると、すぐになくなってしまった。私たちは木皿の底を見つめて恨めしそうにしていることだろう。
もっと食べたいが、一個を発見できただけで運がよかったのだ。これ以上を望むのは運も困ってしまうだろう。
そして七日が過ぎ、赤色の実はペースト状になっていた。これを布で濾せば、美味しい汁にありつけるはずだ。
「おおおっ!」
「あっまーーーい!」
「美味しい! おかわり!」
私は声を失うほどに美味しいと感じた。
エリスは歓喜から踊っている。
ラウラはおかわりを求めてきた。
「紫色の実の甘さもよかったけど、この汁も負けず劣らずの味だよ」
これだけの甘味があるから、砂糖も作れるんだろうな。本当に美味しいよ。
「これ、もっと作ろう!」
「そうだね!」
エリスとラウラがカップールジュースに釘付けだ。
「鍋が足りないから、私は鍋を購入してくるよ。エリスはカップールを採取、ラウラは薪になる木を拾ってきてくれるかな」
「「うん!」」
私はゴラゴラの店へ向かった。
「こんにちはー」
「あいよー。なんだシュラウトかい。今日はエリスとラウラは一緒じゃないのかい?」
キャスカさんは相変わらずカウンターの下から顔を出した。
「鍋を二つください」
「鍋を二つもかい? まあ、いいけど、大きさはどのくらいだい?」
「一つはできるだけ大きいのがいいですね」
「そんなもの何に使うんだい?」
「カップールを煮るんです」
「はぁ? ……本気かい?」
「ええ、本気です」
「まあいいけど……ちょっと待っておくれ」
キャスカさんは寸胴鍋を持ってきてくれた。業務用だと思う。
「うちにあるもので一番大きいものだよ」
「じゃあ、これと、この鍋をください」
「店でも開くつもりかい?」
「そうかもしいれません」
寸胴鍋は高さ五十×直径四十センチメートルはある大きなものだ。
「あと、木筒をください」
木筒は簡単に言うと、水筒だね。木を削って水などを入れて持ち歩くんだ。大きさはいくつかあるけど、容量が五百ミリリットルくらいのものを五本購入した。
「値段を聞かずに購入しちゃったけど、痛い出費だ……」
ゴールデンマッシュルームを売ったお金は、マントなど防寒具を買うのに使っている。それでも残ったので今回鍋を購入したが、かなり減ってしまった。
大きな寸胴鍋と木筒をえっちらおっちらと運び家に帰ると、二人はすでに戻っていた。早くね?
だけど、エリスはちゃんとカップールを摘んできたし、ラウラも枯れ枝をたくさん集めてきた。
それから三人でカップールジュース作りを夕方まで行った。
最近、家の中が手狭になってきた。元々大きな家ではない。台風がきたら今にも吹き飛ばされそうな小さな掘立小屋だ。
シオジ草とカップールジュースはどうしても作るのに数日かかる。置いておくだけで邪魔になる。
出来上がった時のあの美味しさを思い、今は我慢してせっせとカップールジュース作りに精を出すのだった。
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