第1話 森で採取
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第1話 森で採取
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「今日も森で薬草採取をするよ」
「「うん」」
エリスが元気な声を張り上げると、私とラウラが頷く。
薬草を採取し、錬金術師ギルドに持っていくと、いくばくかのお金になるのだ。それで硬いパンを買い、腹を満たしている。
以前は薬草を採取できなくて、パンすら買えない日もあった。だが、最近は慣れてきて毎日なんとかパンが買える程度の薬草を採取できるようになっている。
私たちはスラムの外れに住んでいるが、そこから直接森に入っていく。すぐ目の前が森なのだ。
森の奥には魔物が住みついているが、森の外周部には滅多なことで出てこない。あくまでも出てくることが少ないだけで、絶対に出てこないわけではない。だから、毎日命がけだ。
あの説明は人間だけではなく、森の動植物にも有効だった。なんとかの木とか、なんとかの草とか、野鳥の何々とか色々な動植物の説明が見える。
というか、見え過ぎて邪魔だ。そう思った瞬間、説明文が短くなり、植物名だけが表示されるようになった。
この説明はどうやら私の意志に左右されるようだ。試しに全部消してと念じたら、表示がなくなった。逆にフルで説明を求めたら長ったらしい説明文が出てきた。あと、対象を限定すると、それだけの説明が現れた。使い方が分かってきた。
薬草か食べられるものの名前だけを出すように念じると、視界がクリアになった。そして、奥の方にいくつか名前が表示されているものがあった。
「ねえ、あっちにいってみようよ」
「どうしたの?」
「なんか、あっちに薬草がありそうな気がするんだ」
「あたしはいいけど、ラウラはどう?」
「いいよ」
三人で名前が表示されているほうへいくと、薬草があった。
「本当に薬草があったわ。やるじゃない、シュラウト」
「シュラウト、お利巧」
エリスとラウラに褒められた。中身三十歳のオッサンだけど、少女に褒められるのは悪い気分じゃない。
次の表示を目指していくと、薬草ではなかった。
まさかこんなものがあるとは。
【シオジ草:そのままではアクが強くとても食べられないが、三日間水に浸すとアクが抜ける アク抜き後は爽やかな香りで食べやすくなっている シオジ草は栄養成分が豊富に含まれており、体にいい また、浸した水を煮詰めると少量の塩がとれる】
「げっ、シオジ草なんて摘んで何するのよ?」
「食べるんだよ」
「「キャーッ、シュラウトが変っ!?」」
昔は空腹からシオジ草を苦しみながら食べたもんね。だけど、そこまで言わなくてもいいのに。おいちゃん、泣いちゃうぞ。
「これは水に三日間浸すと食べられるようになるんだよ」
「「嫌!」」
これは根が深いな。私もあのなんとも言えないエグ味は今でもトラウマものだけど、せっかくアクの取り方が分かったんだから、食べてみようよ。
私が食べて見せれば、二人も食べてくれるはずだ。うん、きっとそうに違いない。
その後も名前表示が見えるほうにいくと、薬草やシオジ草があった。
「今日はシュラウトのおかげで大量に薬草が採取できたわ!」
「干し肉食べたい」
「よし、干し肉買っちゃおうか!」
二人ともシオジ草には触れないんたね。どんだけ嫌いなの、ハハハ。
でも、エリスとラウラが喜んでくれて嬉しいよ。
その私の視界にまた名前表示があった。そこへ向かうと、薬草もシオジ草でもなかった。
何もないと訝しがるが、土が膨らんでいることに気がついた。そして、その表示は……ヤバいかも。
土を丁寧にどけると、金色の笠をしたキノコがあった。
「これってあれだよね!?」
「あれっしょ!?」
エリスとラウラの声が裏返る。
【ゴールデンマッシュルーム:香りよし、味よし、食べると幸せな気持ちになれる超高級食材 土の中から捻るように抜くのが採取のコツ】
ゴールデンマッシュルームは、高級食材で滅多にお目にかかれないものだ。説明にも超がつく高級食材だと書いてある。
「いい香りだね、私たちで食べようか?」
「本当に美味しそうな匂いだわ。でも、売ったら大金になるわ。美味しそうだけど、お腹は膨れないから、売りましょうよ」
「エリスの言う通り。売ってお腹いっぱい食べようよ」
質より量。今はそれでいいか。
「分かったよ。これを売って美味しいものをたくさん食べよう!」
「「うん!」」
「それと、エリスに剣とラウラに魔法書を買おうか」
「「いいの!?」」
「うん、いいよ。そのほうが私たちのためだから」
二人は剣と魔法の才能がそれぞれある。その二人の才能を伸ばさないのは、勿体ない。
何よりも森の中には魔物がいる。今までは運よく遭遇してないが、いつ遭遇するか分からないのだから備えるべきだ。
説明にあるように、土の中に指を突っ込みヘタを捻じるように引き抜いた。本当にいい香りだ。涎が出てくる。
ゴールデンマッシュルームは袋に丁寧にしまい込んで、町へ。
薬草は錬金術師ギルド以外でも冒険者ギルドと商人ギルドでも買い取ってもらえるが、最も高値で買い取ってくれるのが錬金術師ギルドである。
でも、今日は違うところへ向かう。
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