第17話 米と醤油と味噌と海鮮
+・+・+・+・+・+
第17話 米と醤油と味噌と海鮮
+・+・+・+・+・+
アデンのバザールで米と醤油と味噌を探して歩き回った。
「あった!」
僕は目をキラキラさせてその店を物色した。米は玄米と精米してある白米があった。両方購入しましたよ! あと糯米もあったので、もちろん購入した。
「毎度あり~」
大量に購入したから、店主さんがニコニコだ。
「そうだ、醤油か味噌ってありませんかね?」
「ショーユ? ミィソ? なんだいそりゃー?」
「醤油は黒い液体で、味噌は茶色のねっとりしたものです。共にしょっぱくて、それで深い味わいがあって……」
「それはもしかしてジョルシュとバスコじゃないか?」
「ジョルシュ? バスコ?」
「ああ、ここを真っすぐいって、生地の店を右に曲がってしばらくいくとジョルシュとバスコを売っている店がある。いって確認したらどうだ?」
「はい。いってみます!」
店主さんに何度も頭を下げて感謝し、僕は聞いた店を目指した。
「あった!」
醤油の香りが漂うその店の前で、僕は涙を流した。
こっちの世界で記憶が戻って四年、米や醤油、味噌がどれほど恋しかったことか。
「ジョルシュとバスコをください!」
「ジョルジュの瓶は銅貨五枚、樽だと白銅貨二。バスコの瓶は銅貨七枚、樽で白銅貨三枚だよ」
「金貨一枚で買えるだけ買います!」
「え!?」
「金貨一枚で」
「……あいよ! これ全部持っておいき!」
お姉さんは店に置いてあった樽と瓶の醤油と味噌を全部売ってくれた。それなのに、おつりもくれた。
僕はニコニコ顔でストレージに醤油と味噌を放り込んだ。
僕は相変わらず生活魔法しか使えない。なぜか普通の魔法が使えないのだ。才能がないのだと、最近は諦めている。
だけど、魔法はイメージだということで、生活魔法をイメージでカスタマイズしている。ストレージもイメージでカスタマイズし、容量を拡張している。おかげで醤油と味噌を店ごと購入しても大丈夫だ。
「そんなにジョルシュとバスコがほしかったの?」
「これは美味しいんだよ、ラウラ」
「それでどんな料理を食べさせてくれるんだ?」
「ジョルジュは海鮮がイチオシかな、エリス」
「「「カイセン?」」」
ここは港町! となれば、海の幸も豊富! 多くの店で海の幸を売っているのはすでに見ている。南国のカラフルな魚が売られていた。
海の幸を扱っている店にいく。どれもカラフルな魚だが、その中にあって僕でも知っている魚に似た魚があった。
「これください。あとこれとこれも!」
魚は一種類、ほかに貝を二種類購入。
エビとイカ・タコはなかった。残念。
さっそく宿に帰り、調理場を貸してほしと頼み込むが、拒否された。下手な人を調理場に入れるような店は衛生面で不安があるから、断られても文句は言わない。その代わり裏庭を借りた。
「ラウラ、焚火台とテーブルを出して」
「うん」
焚火台はキャンプでお馴染みの道具だね。薪はラウラのストレージに大量にあるから、それを出してもらって火を熾す。
テーブルの上では、購入した米を洗って水を張っておく。
さらに魚を出して捌く。今回買ったのは真鯛に似た魚だ。
真鯛を三枚におろして、頭は炙る。それを米の上に載せて醤油を少し垂らして炊く。
真鯛の半身は刺身で、半身は焼きにする。刺身はさすがに生だから危ないかと思ったが、説明さんのおかげで安全だと分かった。
結構大きな真鯛(五十センチメートルくらい)だから、四人でも十分な量が取れた。
米を炊いていると、いい香りがする。お腹が空く匂いだ。
貝はアワビとサザエに似たものだ。アワビは蒸して包丁を入れる。サザエは壺焼きにし、バター(これも売っていた)と醤油を加える。
どうでもいいが、バターはそのままのネーミングだった。
「なんかお腹が空いてきたぞ!」
「うちも」
「食欲を誘う香りです」
三人も海鮮を今か今かと待ちわびている。
「よし、できた!」
鯛めしをほぐし、器に盛り、刺身と焼き身とアワビ蒸しとサザエの壺焼きを添えて出す。まさに海鮮づくし!
山葵があったらもっとよかったけど、今回はこれで我慢しよう。
「「「「いただきます!」」」」
四人でテーブルを囲む。
僕は箸だけど、三人はフォークとナイフとスプーンだ。
「うはっ、うっま!」
エリスが鯛めしを掻きこむ。
「生魚なんて初めてです……あ、美味しい」
イシュカは刺身の程よい弾力と脂の甘味と醤油の塩気のハーモニーを楽しんでいる。
生魚は寄生虫が怖いけど、そこは説明さんにちゃんと聞いている。問題ないということで、刺身にした。
「これ、とっても美味しい」
サザエの壺焼きを食べたラウラが頬を朱に染める。肝もちゃんとたべて美味しいと思えるのは、大人だよね。
僕もアワビ蒸しに醤油をちょっと垂らして食べる。ああ、潮の香りがする!
「おい、あんたら、それいい匂いするな」
気づいたら宿の料理人たちに囲まれていた。
「食べます?」
美味しいは正義。幸せを皆に分けてあげたい。
「いいのか?」
「いいですよ。たくさん作ったので、食べてください。ただ、器はないので、持ってきてもらえますかね」
「感謝する。おい、すぐに器を持ってこい!」
新人ぽい人が走っていき、皿を抱えて戻ってきた。早っ!
その皿に鯛めしらを盛りつけてあげる。
「うっま! なんだこの優しい味は!?」
鯛めしは炙った頭からいい出汁が出る。それに醤油を少したらせば、幸せな香がするのだ。
「これはジョルシュか!?」
「ジョルシュにこんな使い方があるなんて思わなかった!?」
「このサザムエはバターとジョルシュか。素晴らしいハーモニーだ!」
料理人たちはそれぞれの料理の感想を言い合った。
ちなみにサザムエはサザエのことだね。
「いいものを食べさせてもらった。それにこれまで使わなかったジョルシュの使い方が分かったよ。本当にありがとう! このお礼はどうしたらいいだろうか?」
「お礼なんて……いや、どうせなら、ジョルシュとバスコを使った料理を作ってほしいかな。料理人が作ったジョルシュ料理が食べてみたいんだ」
「それいいね! あたしも食べたい!」
「うちも楽しみ」
「期待します」
「分かった! 料理人のプライドにかけて美味しいジョルシュ料理を作ってやろう!」
「楽しみに待ってます」
ご愛読ありがとうございます。
これからも本作品をよろしくお願いします。
気に入った! もっと読みたい! と思いましたら評価してください。
『ブックマーク』『いいね』『評価』『レビュー』をよろしくです。




