第15話 商人風?の服
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第15話 商人風?の服
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商人ギルドのオバチャンから、紹介できる商人に連絡を取っているから、今日の十四時にもう一度きてほしいと言われた。腕輪型身分証で連絡を取っているようだ。
まだ時間があるから、僕たちは町を見て回ることにした。
「どこを見ようか?」
「衣料品店」
「ラウラは服がほしいのか。それじゃあ、見にいこうか」
「シュラウトの」
「え、僕? 僕はこれでいいよ」
「商人なんだから、外見も気にしないとダメ」
「そうですね。シュラウト君はもう少し商人らしい服を着るべきですわ」
どうやら僕の服は商人に見えないようだ。まあ、スラム暮らしだったから身なりはあまり気にしてなかったからね。
商人になったんだから、もう少し身なりに気をつけるべきか。
ラウラとイシュカの勧めを受け入れ、服を買うことにした。
バザールのような混雑した市場で服を扱っている店をみつけるのに、結構な時間がかかった。このバザールはジュングールの市とはまったく規模が違う。一日かけても回り切れそうにない。
「どうかな?」
清潔そうに見える白いシャツ、紺色のベスト、焦げ茶色のパンツ、濃紺のジャケット、ハンティング帽のような茶色の帽子、三人が選んだ商人風ファッションに身を包む。
もちろん、僕だけじゃない。三人の服も選んだ。
エリスは動きやすさ重視のパンツルック。すらりと伸びた生足がグッドな短パンだ!
ラウラはなぜかゴスロリ風のメイド服!? それいい! 興奮するよ!
イシュカは清楚な薄い黄色のワンピース。淡い紫色の髪をリボンで結んでいるのも清楚感アップだ!
みたらし団子のような串に刺さった餅を買って三人で食べる。いや、マジで餅だよ、これ! 餅ってことは米があるはず。だったら粳米(普通のご飯用の米)もあるはず! それに醤油や味噌も!
僕は米と醤油と味噌を探してバザール中を歩き回る。
「シュラウト。もう時間よ」
「え……もうそんな時間か。ありがとう、ラウラ」
危うく約束の時間に遅れるところだった。米と醤油と味噌はまた明日探すとしよう。
商人ギルドの白い建物に入り、受付カウンターで要件を告げる。二階の一室に通されたら、すでに人がいた。犬の獣人が二人だ。
ギルドの人も立ち会うことから、三組に分かれて座る。ただ、こちらは僕だけ座って、エリス、ラウラ、イシュカは僕の後ろで立っている。
「この度はランク一商人のシュラウト商会のシュラウト様より、アイテムを販売したいということで、この場を設けさせていただきました。わたくし、当ギルドの職員でジョンソンと申します。よろしくお願いいたします」
ジョンソンさんは三十歳くらいの男性で、背は高いがひょろっとした人だ。
「紹介にあずかりました、シュラウト商会のシュラウトといいます。後ろにいるのは、僕の使用人たちです。よろしくお願いします」
三人はそれぞれ頭を下げるだけで、声は出さない。
ギルドに入る前に、ラウラとイシュカがエリスに喋ったらダメだからね、と言っていた。商人がいるのに、使用人が前に出るのはよくないと言っていたっけ。
そういうところはラウラとイシュカのほうが常識がある。特にイシュカは公の場の礼儀作法はばっちりだ。
「私はテルゲ王国のランク四、サイバード商会の仕入れ担当をしていますランです。こちらは鑑定士のゴルンと言います。よろしくお願いします」
ランさんはゴールデンレトリバー系の二十代前半女子、ゴルンさんはダックスフント系の四十歳くらいの男性だ。獣人なので年齢はよく分からないから、参考程度だね。
ゴルンさんは寡黙なのか、紹介された時に軽く顎を引いた。
しかし、ランク四商人の仕入れ担当か。見た目は苦労をしてないいいところのお嬢さんだけど、仕入れを任されるのだからそれなりの経験はあるんだろう。
「さっそくですが、商品を見せていただけますか」
「はい。これになります」
ストレージからアイテムを取り出す。今回は四種類のアイテムを用意した。指輪が一個、イヤリングが四セット、魔法書が一冊、尖ったクリスタルが一個。
今回出したアイテムの内訳はこんな感じだ。
・火魔法の指輪 : 魔法が使えない人でも火魔法ファイアを行使できる 魔力を消費するため、魔力が少ない者は魔石などを所持する必要がある
・念話のピアス(四セット) : 対になる四セットのピアスをはめた者同士で、念話が行える 距離が離れていればいるほど魔力を消費するため、魔力が少ない者は魔石などを所持する必要がある
・第五位階魔法書 : 火、水、風、土の第五位階魔法を記した魔法書
・結界クリスタル : 半径十メートルを結界で覆う 外部からの侵入や攻撃を防ぐ効果がある 魔石から魔力を供給するため、魔石を交換することで半永久的に使用可能
説明さんからの情報を紙に記載しており、それをランさんへ差し出した。
今度は相手のターンで、ランさんたちがこれらのアイテムの価値を判断することになる。
「鑑定させていただきます」
「どうぞ」
まず指輪からゴルンさんが鑑定を始めた。鑑定って何を見ているのかな? 僕みたいに説明さんが教えてくれるのか? それともアイテムに関する知識を学び経験を積んで鑑定するのだろうか?
ゴルンさんが指輪を鑑定しつつ「うーむ」と唸る。それはいい唸りなの? それとも、悪い唸りなの? 気になるなー。
指輪を置き、ピアスに移る。「むむむ」と違う唸り声。心臓に悪いから止めてほしい。
どれもいいものですよ。オカネ、クダサイ。
全部の鑑定を終えたゴルンさんは、ランさんとヒソヒソ話し合いを行う。テーブルの下で指で何か合図をしているようだ。金額の相談かな?
「これらはとてもいい商品だと自負しています。どうでしたか?」
「ごほんっ。まず、どれも本物だと確認しました。それでは、価格の提示ですが―――」
ランさんが提示した金額は、火魔法の指輪が銀貨七枚、念話の指輪(四セット)が金貨一枚、第五位階魔法書が金貨五枚、結界クリスタルが金貨一枚だった。
ランさんたちは、このアイテムを買いつけてテルゲ王国に持ち帰る。その際には関税もかかるだろうし、運送費、護衛料など色々な経費が乗る。だから、エンドユーザー向けの価格の半分程度なら、僕は売ることに決めている。むしろ半額でも高いかもしれないから、そこは交渉次第かな。
「全部で金貨七枚と銀貨七枚でいかがですか?」
僕はにこやかに念話のピアス四セットをスーッと自分のほうに引き、ニコッとほほ笑んだ。
「こちらの価値を理解されてないご様子ですから、このピアス以外をお売りいたします」
「なるほど……では、そのピアスはさらに銀貨三枚を上乗せをします」
「残念ですが、こちらはその程度の金額ではお売りできません金貨六枚と銀貨七枚で、そちらを引き取っていただければ、十分です」
他のアイテムは概ね半額以上で問題ないが、念話のピアスだけはまったく話にならない。この念話のピアスは、四セットで金貨二十枚はするものだ。それなのに、金貨一枚とか臍でお湯が沸かせるっつーの。
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