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第13話 逃走1

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 第13話 逃走1

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「三人に話がある」

「何だ?」

「何?」

「どうかしましたか?」


 エリス、ラウラ、イシュカがそれぞれ僕を見てくる。


「いきなりだが、僕は勇者が嫌いだ。生理的に受けつけない」

「へー。シュラウトが人の悪口を言うなんて、珍しいな」

「そんなことはないぞ、エリス。僕だって嫌いなヤツはいる。冒険者なんかは大嫌いだ。だが、勇者はそれ以上に嫌いだ」


 冒険者には幼い頃に何度も酷い目に遭った。冒険者から受けた暴力は、一度や二度ではないんだ。


「冒険者はあたしも嫌いだな。あいつら、厭らしい目であたしたちを見てくるんだ」

「それはエリスたちが可愛いからだな。ある意味仕方ないところもある」

「「「可愛い!?」」」


 え、何? なんで、三人揃って可愛いに反応してるの?


「シュラウトは、その、うちたちを可愛いと思ってるの?」

「当然だろ? エリスは健康系美少女、ラウラは知的系美少女、イシュカは守ってあげたくなる美少女だからな」

「「「はうっ!?」」」


 三人の顔が真っ赤になり、モジモジしている。なんなんだ?


「話を戻すけど、あの勇者は三人を必ず狙う。三人をあんな女癖の悪い勇者に差し出したくない。だから、僕は逃げようと思う」

「「「ついていくわ!」」」


 え、即答? なんで? 住み慣れたこの町を出るんだよ?


「……そ、それじゃあ、すぐにこの町を出るよ」

「すぐに用意する!」

「うちは全部ストレージに入っているからいつでもいいよ」

「わたくしも荷物はストレージに入っていますから、すぐに出られます」


 生活魔法のストレージが使えるラウラとイシュカは家に荷物を置いていない。僕もストレージに荷物を放り込んでいるので、家には荷物を置いていない。

 そもそも家は鍵も何もないから、不用心だ。必要なら仕方がないが、ストレージがあるのに家に荷物は置かない。


「う、あたしだけか!? 十秒で用意する!」


 ストレージが使えないエリスはビューンと移動し、この二、三年で集めた本人は可愛いといっているアフリカの魔除け人形みたいなものを麻袋に放り込んでいく。そんなに乱暴に扱ったら、壊れるぞ。

 服などはラウラのストレージに入っているので、家の中に置いてある持ち物はこれだけだ。それ、本当に持っていかないとダメか? マジで気持ち悪いんだけど?


「用意したぞ!」


 麻袋の中でガチャガチャいっているけど、本当に壊れるぞ。


「それ、ちょうだい。ストレージに入れるわ」

「おう。頼むぞ、ラウラ!」






 マントを羽織りフードを被った怪しい四人は旅立った。

 この日スラムの一角から四人の姿が消えた。消えるのは簡単だ。イシュカのワープで、できるだけ遠くに移動すればいい。彼女は王都やいくつかの大きな町へいったことがあり、ワープできる場所は僕たちよりも多い。


 彼女は黙っているが、彼女の家名のアルメニスはこの国では簡単に調べることができるものだった。

 アルメニス公爵家。それがイシュカの出身家だ。アルメニス公爵家は火の魔法使いの大家と言って過言ではない。この国の建国時から存在し、火のアルメニスと言われるほどだ。

 そしてイシュカは火属性は得意ではない。そこから導かれることは、ムカつくことだ。おそらくイシュカは火魔法が不得意という理由だけで、エルメス公爵家から追放されたのだろう。

 いく当てもなくイシュカはあの森を彷徨い、行き倒れていた。そこに僕たちが現れた。そんなところだ。


 空間が揺らぎ、渦を作る。その渦が僕たちを包み込む。苦しさは特に感じない。僕たちは光の速度を追い越し、ある場所へと至った。

 こころなしか潮の香りがする。海に近い土地のようだ。


「ここはどこ?」

「できるだけ遠くへとシュラウト君が言っていたから、わたくしが知る限り遠い場所です」

「それはいいね。で、どこら辺なの?」

「ここはロロフス帝国とテルゲ王国の国境に近いアデンの町のそばです」


 イシュカ曰く、僕たちが住んでいたザバン王国は南北に長い国らしい。このアデンの町は南部にあり、海に面した最も西側の町だそうだ。 

 ザバン王国はロロフス帝国とはかなり長く国境を接しているが、テルゲ王国はアデンの周辺にしか国境はない。そんな地域になる。

 これまで住んでいたジュングールは東部の端っこの町で、こことは真逆にある。距離にすると数百かもしかしたら千キロメートルを超えているかもしれない。

 ここなら宣託の巫女に宣託が下りても、一カ月くらいは時間が稼げるだろう。


「国境を越えるのは、何が要るかな?」


 さすがにこの世界にパスポートはないだろう。


「冒険者ですと国境を越えるのも楽なんですけど、あとは商人ですかね」

「冒険者か……だったら商人として国境を越えようか」


 他の選択肢があるなら、冒険者になる気はない。


「シュラウト商会」

「いやいや。なんで僕の名前なのさ、ラウラ」

「あたしは全然いいぞ」

「わたくしもシュラウト商会でいいです」

「決定」

「えぇぇ……」


 うちの女性陣が一致団結すると、決定は覆らない。僕は不満だけど、僕たちはアデンの商人ギルドで登録することにした。


 アデンの町はこれまで僕たちが住んでいたジュングールとは規模が違った。港があることで商取引が盛んに行われており、商人や船乗りが集まってくる。


 テルゲ王国は獣人が多く住む国だから、そこと貿易をしているアデンにはテルゲ人の獣人が多くやってきている。


 僕は初めて獣人を見たが、あれはいい。モフモフだ。


「うへー。すごい人だな!」

「エリス、うろうろしていると、迷子になるぞ」

「シュラウト、あの果物美味しそう」

「ラウラまで浮かれてないか」

「皆さん、初めて見るものに心が躍っているのですね。ウフフフ」


 イシュカが一番落ちついている。いつもおどおどしているけど、なんだかんだ言って色々知っているから頼りになるんだよね、イシュカは。


「まずは宿を確保するぞ」

「ほーい」

「分かった」

「はい」


 人気がありそうな宿を探す。店構えと店員の対応で泊まるか決める。あと説明さんの情報も大事。

 最初の宿は店員の態度があまりよくなかったので却下。

 二店目でいい感じの宿を見つけた。説明さんの情報も悪くない。


「ここにしようか」


 三人も問題ないと頷く。


「四人部屋を一泊でお願いします」

「はい、ありがとうございます。食事は夜と朝、またはどちらかだけでもつけられますが、どうしましょうか?」

「両方つけてください」

「ありがとうございます。お一人様、二食つきで一泊銭貨七十五枚になります。四名様ですと、銅貨三枚になります」

「はい。これで」


 丁度をカウンターの上に置くと、スタッフさんはそれを回収し、鍵を取り出した。


「三階の三〇一号室になります。食堂はそこになります。夕食は十七時から二十時、朝食は六時から九時です。食事の際はこちらのカードをご提示ください」


 鍵の他に夕食用と朝食用のカードをそれぞれ四枚もらった。


「夕食は三種類のセットメニューから選べます。朝食はビュッフェスタイルです」

「分かりました」


 いきなり逃げ出したけど、これで人心地がつく。



ご愛読ありがとうございます。

これからも本作品をよろしくお願いします。


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