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第12話 勇者登場

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 第12話 勇者登場

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 はい、お久しぶりです! 十四歳になったシュラウト君です!

 イシュカが一緒に暮すようになって三年、僕たちはかなり成長しました。

 あ、一人称を私から僕に変更しました。俺に変えようかと思ったのですが、エリスとラウラが猛反対ですよ。そこで僕に落ちついたわけですね。

 あと、年齢も僕だけ説明さんがハブッてくれて分からないから、エリスたちに合わせて十五歳にしようと思ったけど、けんもほろろに却下された。

 どうも僕は年下でなければいけないらしい。解せぬ。

 でも、背はエリスと並んだ。僕とエリスは百七十五センチメートルくらいで同じ、ラウラは百六十五センチメートルで見下ろす立場になった。イシュカは百六十センチメートルでさらに低い。


 この三年、私たちは森の奥へ入るようになった。なにせうちには剣聖ちゃん、賢者ちゃん、聖女ちゃんになれる才能の子たちがいるからね! 順調に成長した彼女たちがいれば、大概の魔物はボコボコだ。僕の出番なんてない……。(泣)


 魔物の素材はゴラゴラの店を通じて売り払っている。冒険者ギルドという組織もあるけど、僕は冒険者が嫌いだから冒険者にはならなかった。あいつらは破落戸ごろつきだ。以前、何度も意味なく殴られたり蹴られた。本当にクズだ。だから、ギルドは通さずにキャスカさんに任せている。

 あと、冬になると強制的にアップルジュース作りをしている。キャスカさんの圧がすごいんだ。

 僕たちが持ち込む魔物の素材のほうがよほど儲かっているはずなのに、冬だけはアップルジュース作りが優先されるんだ。重要なお得意様でもいるのかな?

 何はともあれ、僕たちは四人で幸せに暮らしている。





 ある日のこと、町中が騒がしい。


「なんだろう?」


 エリスが速足になる。


「待ってよ、エリス」

「早くきなよ、ラウラ」


 エリスの速足についていくだけで、ラウラとイシュカは息が上がる。僕は毎日エリスに鍛えられているから、これくらいならなんともない。


 人が大通りに集まっている。何があるんだ?


「おい、勇者はまだかよ?」

「勇者なんていいから、巫女様を見せろよ」


 そんな声が聞こえてくる。


「勇者……だと?」


 その言葉に、僕は冷や汗が出た。

 勇者とくれば、剣聖、賢者、聖女がセットだ。その三人は僕のそばで勇者を見ようと集まった人に紛れて見物している。

 なんで勇者がやってきたんだ? 三人を連れていくためか? なんでここに三人がいると分かったんだ? ハハハ。偶然だよな……。


「「「わーっ!」」」


 歓声があがり、大通りを勇者が馬に乗って進んできた。


「わー、高そうな鎧だー」

「ちょっとエリス、大きな声で言わないでよ。恥ずかしい」


 勇者は銀髪のイケメンで、白銀に金のラインがある豪華で派手な鎧を身につけていた。勇者の目を見た瞬間、僕の背中をダラダラと流れる大粒の汗を感じた。

 あの目はダメだ。僕はあの目を知っている。あれはクズの目だ。前世で勤めていた会社の社長のバカ息子があのような目をしていた。そのバカ息子が僕の上司の部長だったから、よく知っている。女子社員を食いまくった挙句の修羅場を何度も見た。

 僕は気を落ちつかせるために、大きく深呼吸をした。ふー、まさかこの世界であの目をしたヤツに会うとはな。腐れ縁でもあるのか? そんな縁は要らないんだがな。


「横にいる女性が綺麗よね」

「勇者様ともなると、綺麗どころを侍らせているってことだな。ハハハ」

「だから、エリスは声が大きいわよ」


 エリスとラウラはパンダを見るように、勇者を珍しい生き物のように見ていた。

 だが、その横にいるイシュカは顔色が優れない。私も気分が悪くなってきたが、今にも倒れそうなイシュカに声をかける。


「イシュカ。大丈夫か?」

「え、あ、うん。大丈夫」

「顔色が真っ青だぞ」

「ちょっと疲れているだけだから……」

「無理するなよ。あれだったら帰るか?」

「うん。わたくし、帰らさせてもらいます」

「俺もついていくよ」

「でも……」

「いいから、いいから」


 僕もこんなところ早くおさらばしたい。


「エリス、ラウラ、いくよ」

「ほーい」

「うん」


 僕は三人と共に人を掻き分けて進んだ。そして振り返り、勇者を説明さんで見た。


【ライル・アシュタリカ(十五歳):勇者の才:第五王子で女好きのライルは、綺麗な女性がいると人妻でも奪い犯す すでに子供が八人いる 勇者だと言われ有頂天になり、努力を怠っていることから勇者の才が開花する見込みは今のところない】


 やっぱりあの目をしているヤツは女癖が悪いな! しかも、十五歳で子供が八人とか、やりまくりだな! 羨ましくなんかないからな!

 でも、こんなヤツがそばにいると思うと、気が気じゃないぞ。


 その時、勇者のそばにいる女性が目に入った。黒髪だけど瞳は金色で、アラブ系の美女といった感じの女性だ。


【ウルヤ・イバンリッチ(十四歳):宣託の巫女:ラバナ教の巫女として幼い頃から教会によって身柄を拘束されている 女神から宣託を受け勇者を導く使命を負っている 剣聖、賢者、聖女の元に導くための宣託は、それぞれ生涯に一度しか受けられない 女好きの勇者を嫌っている】


 彼女は教会に働けと無理強いされているのかもしれない。その身の上には同情するが、勇者を導いてここまでやってきたのはいただけない。


 僕は前を歩くエリス、ラウラ、イシュカの三人を見つめ、大きなため息を吐いた。あの勇者は宣託の巫女にこの三人を仲間にしろと導かれて、ここへやってきたのだ。


 どうしたらいい? 勇者は王子で権力を持っている。しかも女好きのクズだ。そんな勇者にこの三人を任せるなんて絶対にできない。

 だったら殺すか。今なら勇者の才は開花していない。殺せるはずだ。だが、周囲には護衛がいる。今だって百人近い騎士が彼の後に続いている。いくらクズでも王子だ。優秀な護衛がいるはずだ。どうやって殺す?

 いやいや、殺さなくても逃げればいいんだ。今すぐこの町を離れよう。この国じゃないどこか別の国にいけば、いくらなんでも追ってはこないだろう。

 それに剣聖、賢者、聖女に関する宣託はそれぞれ生涯に一度しか受けることができない。だったら、三回逃げてきればこっちの勝ちだ! よし、逃げよう! うん、それがいい。逃げ切ってやるぜ!



ご愛読ありがとうございます。

これからも本作品をよろしくお願いします。


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