表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

愛の形

作者: 日戸 暁

そのうら若き町娘は

貴族の令嬢にも引けを取らぬ美しさで

細い手指に、白い首に、小さな耳に

男に贈られた宝石を幾つも飾り

その輝きを見せつける


男に貢がれた宝飾品の間で

左の薬指だけが空いている


そして、今、

いつもの男から

結婚指輪を贈られた

頭髪は薄く腹もたるんだその男は

震える少女の手を掴んだ

その指に、人生の枷がぐいと嵌められた

少女は涙を零した



黒いヴェールの令嬢が街角をやってくる

その首元から連なり服の中で揺れる鎖には

古い婚約指輪と帰らぬ人の名を刻んだ識別票が隠れている


毎月の今日

いつもの花屋の少年は、

いつものように2本のバラの花束を包んで渡す

とびきりに美しいのを選ぶのだ

そして

今月の今日だけは

令嬢は必ず黒いヴェール

だから少年も必ず白い薔薇を包む


そうして彼はいつも

もう一本が渡せない


彼女の左の薬指に光る輪を見つける日

きっと少年は花屋を辞めるだろう


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ