友達ができました
私は、友達が居ない。
人と関わるのが面倒だから、昔からあまり人とは関わってこなかった。
そんな私の唯一の友達は……
「こっちこっちー」
小さな熊一匹だけだった。
ある日、熊は言った。
「僕、新しい友達を作ろうと思うんだ」
最初は、熊が何を言っているのかわからなかった。
その後、熊は自分なりに努力をしたみたいだが
あまりうまくはいってなかった。
そして、熊は言った。
「僕が熊だからいけないのかな?」
私は苛立ちを隠すように
「そうなのかもね」
と返すと
熊は落ち込んだ様子でどこかへ去ってしまった。
次の日
熊が帰ってきた。
やたら毛むくじゃらになっていた。
「これほどもじゃもじゃになれば、誰も僕を熊だと思うまい」
そして、やはりダメだった。
三日後
角を生やした。
「かっこいいでしょ? これで女子供からモテモテ間違いなしさ」
一週間後
無数の手が伸びた。
「これで何人とも握手ができるね」
そして、一ヶ月
「……ねぇ、もうやめようよ」
思わず、私は熊にそう言った。
「友達なら、私が居るじゃないの」
それは、私にとってはとても勇気のいる言葉だった。
熊はたっぷりと時間をかけて黙った後
「それじゃ、意味がないんだよ」
そう言って去ってしまった。
半年
私は熊のもとを訪れた。
「やあ、相棒。君は変わらずその姿だね。僕は結構大きくなったけど」
「……そうだね、立派になったね」
「でも、困ったことに……大きくなりすぎて外に出られなくなっちゃった」
「大丈夫、私が貴方の首を切り落として頭だけにすれば、この洞窟から出られるよ」
「……うん、なるほど。君は昔から、頭が良いね」
私は、尋ねた。
「ねぇ、ひとつだけ教えて。どうしてそんな姿になるまで、友達が欲しかったの」
「……だって、僕だけじゃダメだったんでしょ?」
「………」
「本当は、ジン・ラミーやスピードよりも大富豪やダウトとかの方が好きでしょ? 僕みたいな雑魚とやったって面白くないでしょ? でも君は自分から友達を作ろうとしないから、代わりに集めてあげようと思ってさ」
「…………」
「……もういいでしょ? 僕をここから出しておくれよ。これから、友達がたくさんできるんだから」
「やったぞ! あの醜い化け物を殺したんだ!」
「やるなぁ、かっこいい!」
「まさにヒーローだ!」
「……はは」
「……どうして、泣いてるの?」