表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

NPC

作者: 四季 訪

 ぼくはだれがおかあさんでだれがおとうさんかなんてのはわからない。


 気づいたらここにいた。


 おおきなこの体もさいしょからそうだった

 

 生まれてわけもわからずうごきまわって、だれかをさがしていた。


 なにも考えずに、なにも思わずに。


 そしたらそんなある日。


 何かせかいがかわったような気がした。


 ビビビッとなにかが走って、そのとき自分がはじめてここに生まれたような気がしたんだ。


 そこにあなたがいた。


 ぼくを見て、ぼくをにんしきして、ぼくをあなたのたびのなかまにしてくれた。


 うれしかった。


 だれかといられるのがたのしくて。


 そこからぼくはあなたとたびをした。


 ぼくにとって長いような、でもあっという間のじかん。


 やっぱりたのしいじかんはすぐに終わりをつげてきた。


 あなたのあせった顔が、目の前のてきのつよさを物語っている。


 だからぼくはがんばった。


 なんとか倒すことができた。


 でもあなたは少し、かなしそうな顔をぼくに向けていた。


 ───ごめん。


 ひとこと言って歩き出したから、ぼくもそれにつづいた。


 その言葉の意味をぼくはなんとなく知っていた。


 つよかったあのてきはさいご、ぼくに向けてなにかをしてきたんだ。


 あなたはそれをのろいだと言っていた。


 少しざんねんそうにあなたはそれをかいけつする手が自分にはないって。


 時々、ぼくに向けて話してくれるあなたのことが好きだった。


 でもそんな顔はしないでほしい。


 だからぼくは走った。


 この近くにある少しかわいい場所に向かって。


 ほかの場所はてきがたくさんいてみんなたいへんそうな顔をしていたけど、ここだとみんなたのしそうに笑っている。


 そんな場所。


 明るくて色んな色がたくさんあるたのしい場所。


 あなたがもうそんなじきかと言う。


 そんなじきっていうのはわからないけど、普段とぜんぜん違うこのたのしい場所にぼくはひとりで走ってたからばこを開けていった。


 中には小さな小物が数個あって、それをバックの中にしまうことなく手に集めてまた次を開けていく。


 それをくり返しているとうでの中がその小物でいっぱいになった。


 かぼちゃのおばけとか、かさのおばけとかぼくにはこれがなんなのかわからなかったけど、あなたがこれを楽しそうに見ているから。


 あなたにプレゼントしたくてあつめたんだよ。


 あと10秒。


 そんなよかんがしてあわててあなたにかけよった。


 そんなぼくをみてびっくりしてるあなたがおもしろかった。


 はいこれ!プレゼント!!


 はじめておしゃべりができたよ。


 だからそれをきいてまたおおきくびっくりしてるあなたがすごくおもしろかった。


 でも、どうしてすぐにそんな悲しそうな顔をしてるんだろう。


 おどろかしすぎた?


 これきらいだった?


 あれ?どうしてぼくもこんなに悲しい気持ちになるんだろう。


 あなたはそれをうけとって小さくありがとと言ってくれた。


 すっごく嬉しかった。


 だからぼくはにっかり笑ってみせるけど、どうしてかなみだは止まってくれなかった。


 でもこれだけは言わないと。


 いままでたのしかった!ありがとう!!


 あなたの顔がすこしだけくしゃりとしたのを最後に、まわりからみんなが消えた。


 ひとがいなくなって、たからばこも消えて、あなたもいなくなって。


 ちがう。


 これはぼくが消えたんだとなんとなくりかいした。


 ぼくは消せなかったのろいにころされた。


 しんでしまったぼくはこのせかいからはじきだされたんだ。


 いやだやぁ。


 ぼくはそんなきもちをじかくしてうずくまった。


 このせかいからいなくなるのがこわくて、あなたといたこのせかいからはじかれるのがこわくて、あなたといっしょにいられなくなるのがこわくて、ぼくはひっしにそばにあるはしらにしがみついた。


 いやだよ。


 いやだいやだっ。


 いやだっいやだっいやだ!


 やだやだやだやだやだやだやだ!


 やだよぉ……


 そんなこどものようなだだをこねていると、だれかがそっとせなかをなでてくれたような気がした。


 あぁ、また会えたらいいな。


 そんなことを最期に思ってぼくは消えた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ