NPC
ぼくはだれがおかあさんでだれがおとうさんかなんてのはわからない。
気づいたらここにいた。
おおきなこの体もさいしょからそうだった
生まれてわけもわからずうごきまわって、だれかをさがしていた。
なにも考えずに、なにも思わずに。
そしたらそんなある日。
何かせかいがかわったような気がした。
ビビビッとなにかが走って、そのとき自分がはじめてここに生まれたような気がしたんだ。
そこにあなたがいた。
ぼくを見て、ぼくをにんしきして、ぼくをあなたのたびのなかまにしてくれた。
うれしかった。
だれかといられるのがたのしくて。
そこからぼくはあなたとたびをした。
ぼくにとって長いような、でもあっという間のじかん。
やっぱりたのしいじかんはすぐに終わりをつげてきた。
あなたのあせった顔が、目の前のてきのつよさを物語っている。
だからぼくはがんばった。
なんとか倒すことができた。
でもあなたは少し、かなしそうな顔をぼくに向けていた。
───ごめん。
ひとこと言って歩き出したから、ぼくもそれにつづいた。
その言葉の意味をぼくはなんとなく知っていた。
つよかったあのてきはさいご、ぼくに向けてなにかをしてきたんだ。
あなたはそれをのろいだと言っていた。
少しざんねんそうにあなたはそれをかいけつする手が自分にはないって。
時々、ぼくに向けて話してくれるあなたのことが好きだった。
でもそんな顔はしないでほしい。
だからぼくは走った。
この近くにある少しかわいい場所に向かって。
ほかの場所はてきがたくさんいてみんなたいへんそうな顔をしていたけど、ここだとみんなたのしそうに笑っている。
そんな場所。
明るくて色んな色がたくさんあるたのしい場所。
あなたがもうそんなじきかと言う。
そんなじきっていうのはわからないけど、普段とぜんぜん違うこのたのしい場所にぼくはひとりで走ってたからばこを開けていった。
中には小さな小物が数個あって、それをバックの中にしまうことなく手に集めてまた次を開けていく。
それをくり返しているとうでの中がその小物でいっぱいになった。
かぼちゃのおばけとか、かさのおばけとかぼくにはこれがなんなのかわからなかったけど、あなたがこれを楽しそうに見ているから。
あなたにプレゼントしたくてあつめたんだよ。
あと10秒。
そんなよかんがしてあわててあなたにかけよった。
そんなぼくをみてびっくりしてるあなたがおもしろかった。
はいこれ!プレゼント!!
はじめておしゃべりができたよ。
だからそれをきいてまたおおきくびっくりしてるあなたがすごくおもしろかった。
でも、どうしてすぐにそんな悲しそうな顔をしてるんだろう。
おどろかしすぎた?
これきらいだった?
あれ?どうしてぼくもこんなに悲しい気持ちになるんだろう。
あなたはそれをうけとって小さくありがとと言ってくれた。
すっごく嬉しかった。
だからぼくはにっかり笑ってみせるけど、どうしてかなみだは止まってくれなかった。
でもこれだけは言わないと。
いままでたのしかった!ありがとう!!
あなたの顔がすこしだけくしゃりとしたのを最後に、まわりからみんなが消えた。
ひとがいなくなって、たからばこも消えて、あなたもいなくなって。
ちがう。
これはぼくが消えたんだとなんとなくりかいした。
ぼくは消せなかったのろいにころされた。
しんでしまったぼくはこのせかいからはじきだされたんだ。
いやだやぁ。
ぼくはそんなきもちをじかくしてうずくまった。
このせかいからいなくなるのがこわくて、あなたといたこのせかいからはじかれるのがこわくて、あなたといっしょにいられなくなるのがこわくて、ぼくはひっしにそばにあるはしらにしがみついた。
いやだよ。
いやだいやだっ。
いやだっいやだっいやだ!
やだやだやだやだやだやだやだ!
やだよぉ……
そんなこどものようなだだをこねていると、だれかがそっとせなかをなでてくれたような気がした。
あぁ、また会えたらいいな。
そんなことを最期に思ってぼくは消えた。