第22話 茶釜②
お待たせ致しましたー
ただ、一定のリズムで……混ぜているだけなのに。
なんて、繊細な。
なんて……落ち着く音よん。
あっついまんまだけど……気持ちが落ち着くようだわぁ。
日本文化って、強く意識したことはないけど……こう言うのを、『侘び寂び』って言うのかしらん。
日本人だったのに……知っているかのような感覚。
アタシが……生きてたって思えるような。
(って、茶釜だけど……意識はあるわよん!?)
流れに飲まれそうになったけど、アタシは『生きて』いるわよん!?
毎回目の前の相手には気付かれないけどぉ!!?
「ええ塩梅」
で、シャカシャカが終わったら……エルフ芸妓ちゃんは手を止めて。
何故か、器を扉の近くに置いたわ?
「お入りなされ」
彼女がそう言うと……立派なお髭と髪が凄いじっちゃんが入ってきたわ。服装は和装じゃなくて……西洋? ギリシャ風? とにかく、芸妓ちゃんとは真逆の格好だったわ。
「ほほほ。茶菓子は用意したぞ」
「おおきに」
手に持ってた……こっちは、紫の風呂敷を器の横に置いて。
エルフ芸妓ちゃんが開けると……中身は、アタシの位置からでも見えた!! 葛餅の水まんじゅうだわ!? 食べたい!! コンビニで出会ってから、夏でのアタシの大好物!!
「して、使い心地はどうじゃ?」
「ええ塩梅どす。お飲みになってくだしゃんせ?」
「うむ」
異人のじっちゃんなのに、じっちゃんは作法をきちんとしてから……ずっと音を立てて、お茶を飲んだ。
そのあとに、エルフ芸妓ちゃんがお皿に移した葛まんじゅうをひと口。いい笑顔になったわぁ。
ジジ専じゃないけど、ちょっとドキッとしたわん。
「ええでっしゃろ?」
「そうじゃな? 新調した甲斐があったわい」
のお? と、アタシに話しかけられた気がしたけど。
今までの気絶と違って……ゆっくり眠るように、意識が途切れたわ。
次回はまた明日〜




