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『殺されて井戸に捨てられたチート怨霊がイケない勇者とハーレム美少女達にコワーイお仕置きイッパイしちゃうゾ』の幻の25話についていまさら語る

作者: 谷尾銀


・なぜ『自主規制』なのか?


 この『殺されて井戸に捨てられたチート怨霊がイケない勇者とハーレム美少女達にコワーイお仕置きイッパイしちゃうゾ』(以下、殺されて井戸に~)の第25部は本来はまったく別な話でありましたが差し替えとなりました。

 差し替えた後のエピソードの意味するところは、2007年9月18日深夜にテレビ神奈川で放送されるはずだった「School Days」というアニメが予告なしに中止となり、城やボートを映した環境映像に差し替えられ、これを見た海外のファンが4chan(海外の掲示板)にて「nice boat」という書き込みを行ったというエピソードのパロディであり、これまでの『殺されて井戸に~』の物語とはいっさい関係のないものになります。

 なお「School Days」が放送中止になった理由については、この2日前にあたる9月16日に京都府で未成年の少女が父親を斧で殺害するという事件が発生し、アニメの最終回の内容がこの事件を想起させるということで急遽テレビ局が自主規制したからでした。

 これと似たような事が『殺されて井戸に~』の第25部にも起こりました。そこで一度は投稿したものの最終的には差し替えという判断に至ったのです。

 規模的には投稿サイトの作品の感想欄という狭い範囲ではありますが「炎上って、こうやって起こるんだー」と、新たな知見を得る事ができて、なかなか貴重な体験ではありました。


・そもそもどういう話だったのか?


 第23部の「闇」にて、死んだ勇者ナッシュ・ロウが現実世界に普通の男の子として転生し、異世界の頃の記憶にさいなまされて変人扱いされ孤立し、不良グループから目をつけられて最後は酷いリンチを受けて死に、その遺体はドラム缶の中に入れられてコンクリート詰めにされて遺棄される。そして、死んだあとも別な世界に転生して更なる虐待を受けるというループに突入する。という話でした。

 それの何が悪いの?

 と思われた方もいらっしゃるでしょうが、この一週間ほど前に、埼玉県川口市で男性の首を刃渡り8cmのバタフライナイフで刺したとして、45才の男が殺人未遂容疑で逮捕されました。なんとこの男が「東京・綾瀬女子高生コンクリート詰め殺人事件」の犯行グループの一人でした。

 この事件は説明の必要がなさそうなほど有名ですが、念のため概要を記載します。

 1988年11月25日夕方に埼玉県某所を自転車で走行していた被害者女子高生(当時17歳)が不良少年グループに拉致され東京都綾瀬の加害者宅で約40日間に渡って虐待を受け続けた。

 そして1989年1月4日に被害者は加害者グループから集団リンチを受けて死亡し、その遺体はコンクリート詰めにされて東京都江東区の埋立地に遺棄されたという痛ましい事件です。

 この「酷いリンチ」と「遺体をコンクリート詰めにして遺棄する」という部分が投稿した第25部と共通しており、この事件を想起させるということで、多くの読者から「不謹慎」や「事件を利用してPV稼ぎか」などの感想が多く寄せられました。

 また、いわゆる、ざまぁ展開において、被ざまぁキャラクターであるナッシュ・ロウに制裁を加えて死にいたらしめる存在が単なるいじめっ子の不良だったことから「いじめを肯定しているようで気分が悪い」という感想も見られました。


・なぜ、こんな話を投稿したのか。


 ここからは作者の弁明となります。

 もう五年も前の話なので多少の記憶違いはあるかもしれませんがいっさい嘘はありません。しかしながら、それが真実であると証明する事は非常に困難なので、その点に留意していただけると幸いです。

 だからこれから語る事はいっさい信じていただかなくてもかまいません。「こいつは事件を利用してPV稼ぎした」と思われても仕方がないと思います。

 ただ、証明が不可能だからといって、こちらとしては「違うものは違う」としか言えず「証明できないから、事件を利用してPV稼ぎしました」と認めるつもりはいっさいありませんので、そのあたりの指摘は、正直なんというか面倒臭いので控えていただけると嬉しいです。

 では本題に入ります。

 まず、作者は事件の事について、はっきりいって知りませんでした。この感想欄で指摘され、そんな事件があったんだと知ったほどです。

 当時の作者はテレビや新聞を見る事はほとんどなく、当時は自宅のインターネット環境がかなりしょぼかったので、ネットニュースもほぼ目にしていませんでした(どれくらいしょぼいかというと、小説を書いて投稿サイトにアップする、投稿サイトの小説を閲覧する事が、ようやくできるレベル)

 じゃあ、普段は何をやっていたんだと思われるかもしれませんが、これはシンプルで小説か漫画を読んで余暇を過ごしておりました。あとはレンタルビデオショップで昔の映画をたまに借りて見たりとか、そんなぐらいでしょうか。

 しかし、こんな事を言っても、いつの時代の原始人だと信じてくれる人はいないでしょう。一週間前の世間を騒がせた事件を知らない訳がないと。

 それと「インターネットに疎い」というのはわりと自分の中で深刻なコンプレックスであり、事件の事を知る機会がなかったことを説明するためには、このコンプレックスを衆人の前で明かさなければなりません。

 そういった理由から、当時は「事件の事を知らなかった」という弁明はまったくしませんでした。

 つまり「東京・綾瀬コンクリート詰め殺人事件」の犯人が再犯したという出来事と、第25部の投稿時期が重なったのはまったくの偶然でした。


・では第25部は「東京・綾瀬コンクリート詰め殺人事件」から着想を得たのか?


 これもまったく違います。

 「死体をコンクリート詰め」などというと、この事件を思い出す人が多いと思います。たぶん、リンチされたというだけでは「東京・綾瀬コンクリート詰め殺人事件」と結びつける人はいなかったと思います。

 では、なぜナッシュの遺体はコンクリート詰めにされたのか。

 そもそも「遺体をコンクリート詰めにして遺棄する」というのは、この「東京・綾瀬コンクリート詰め殺人事件」特有の要素ではありません。

 昔からあるヤクザ映画などの物語でよく見られるガジェットで、現実にも遺体をコンクリート詰めにして遺棄した殺人事件は多数発生しています。

 なぜ、わざわざ遺体をコンクリート詰めにするかというと「遺体が腐敗したときに臭いが漏れにくい」や「海に沈めるときコンクリートが重しとなる」などの理由があったりします。

 ただ、人間の死体が発する腐敗ガスは割りと尋常ではなく、コンクリート詰めの死体を海に沈めても浮いてきちゃうらしいので、本職の方々はこの方法を取らないそうです。

 しかしながら、作中でナッシュを殺した犯人は殺しの玄人などではなく、単なる不良グループです。遺体が発見されないように(・・・・・・・・・)遺棄する方法として、コンクリート詰めは生理的嫌悪感も薄く手間も掛かりません。

 コンクリートさえあれば、容易に行えるという事で単なる不良グループが、この方法をチョイスする必然性は高いと作者は考えた訳です。

 しかしながら、別に作者は「東京・綾瀬コンクリート詰め殺人事件」をなぞったつもりはまったくありませんでした。

 「ナッシュは遺体も発見される事すらなく、殺人犯は罰せられる事もなかった」という、サマラへの仕打ちをなぞるような形にしたかったので「遺体をそのまま放置する」という展開は意図的に避けました。そうなるとナッシュは被害者としての属性を得てしまい、おそらく犯人たちも簡単に捕まってしまうからです。


・なぜ、現実世界に転生するという展開なのか。


 これにも理由があり、実はこの展開も物語を書き始めた当初から決まっていました。

 いわゆるなろう系において、異世界とは主人公にとって楽園のような場所であると作者は考えました。やる事なす事上手く行って、誰もが自分の存在を肯定してくれるのですから。もちろん、そうではない作品もありますが、世間一般のなろう作品のイメージといったらだいたいそんな感じではないでしょうか。

 だから作者は「逆になろう系において現実世界とは地獄なのではないか」と考えた訳です。それで、これまで異世界の勇者という特権をかさに着てやりたい放題やっていたナッシュにとっての最大のざまぁ展開は「現実世界に落ちて(・・・・・・・・)理不尽かつ誰にも省みられる事もなく死ぬ事」ではないか、という着想を得たのです。

 まあ、なろう系のアンチテーゼではありますが、別にそうした「チート、ハーレム、ざまぁ」みたいな作品を批判する意図はありません。

 正直、多少ネタ気味に小馬鹿にしていた事は認めますが、アンチになるほど嫌いという訳でもなく、全肯定するほど好きでもありません。そういった作品の中にだって面白い作品もあれば、つまらん作品もあるというのが作者の見解となります。

 ジャンルの枠組みを使ったお遊びの範囲とご理解ください。


・ではなぜ、差し替えたのか


 けっきょく差し替えという判断に至った理由は、よくよく考えてみて「もしも、自分が事件の事を知ってたら、たぶんこの話は投稿しなかったな」と思ったからです。

 上記の通り「東京・綾瀬コンクリート詰め殺人事件」とはまったく関係ありませんが、こういった実際の猟奇殺人事件などに興味のない人、あまり知識がない人にとっては、やはり「コンクリート詰め」それすなわち「東京・綾瀬コンクリート詰め殺人事件」であると思います。実際「コンクリート詰め」と検索するとこの事件の記事しか出てきませんし、仕方のない事だと思います。そして、読者からの批判を受けて「もしも、事件の事を知ってたら、さすがにこうなることは想定しただろうな」と思えたからです。

 それと、これ以上、意地を張っても、誰も得しないなと感じたのも大きかったです。

 一応、まだ楽しみにしてくださっている読者もいると信じていたので、まずは荒れ果てた感想欄を何とかする事を優先しました。

 そして、落としどころとして第25部をnice boatさせていただいた次第です。


 ・今後について


 コミカライズ版はどうなるのか解りません。そもそも、そこまで無事に連載が続くのかも解りませんし。

 ただ、担当さんが「この差し替えられた25話でやりましょう」といったら、自分はOKを出すつもりではあります。それ以外では、たぶん自分から「これで行きましょう」と提案する事はしないつもりです。

 理由は炎上して迷惑を掛けたくないからです。もう一人で好き勝手に書き散らした素人の作品ではなくなってしまったので。

 たぶん、公開したら「こんなのぜんぜん酷くないじゃん」と思われる読者もたくさんいると思います。もったいぶっている割にはそんな程度の内容でしかありません。しかし、個人的には「東京・綾瀬コンクリート詰め殺人事件」を想起させる要素よりも、前世では酷い事をしたとはいえ、転生後は弱者でしかないナッシュが不良になぶり殺されるという展開の方が不味い気がします。

 だから、公開も今のところはまったく考えていません。


・最後に


 当時、批判的な感想を寄せられた読者の方を別に怨んではおりません。まあ多少は煩わしいと思った事は正直なところですが炎上してとうぜんだなとも思います。

 そして、こんなピーキーな作品をコミカライズしていただけてる事には本当に感謝しております。

 この作品に関わってくださった方々へ。本当にありがとうございました。






おわり

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― 新着の感想 ―
作者様の強い自制力と高い倫理観に感銘を受けました
[一言] 作者の誠実性と理論的文章能力がよく分かる、理路整然とした釈明に感じました 今後の作品も読ませていただきます 引き続き楽しみにしています nice boat
[一言] 当時の元ネタを読んだ時は事件の想起よりも、トイレでハンミョウを食べさせられたシーンで思わず良い意味でウッとなりましたw 個人的にはナッシュのその後が知れたので元ネタも最高でした(尻アナがキー…
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