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私はアイピ!魔法使い!  作者: 如月信二
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5


「イカロス!にゃんぴー、アイピよ!ついにこの日が来たな!」


 ハチマキを巻いたタコピが息巻いた。


「タコピさんただの体育の授業ですよ」


 タコピと敵チームになったイカロスはクールに答える。


「これはただのドッチボールではない。いわば我々が友情に縛られずに真剣に勝負できるかの運命の岐路だ!」


 タコピは顔を真っ赤に紅潮させて叫んだ。


「んなことどっちでもいいわよ」


 にゃんぴーは腕のストレッチをしながら答えた。


 今日の授業はドッチボールだ。


 白チームがアイピ、にゃんぴー、イカロス、くまぴ、うさぴょん。


 赤チームがタコピ、トラ子、コンピ、ポチピ、岩ピの5人だ。


 内野に4人、外野に1人から始まって、最初の内野の1人がアウトになると外野の1人が内野に入る。後は内野はアウトになれば外野に出ていき、もう内野には戻れない。


 最終的に敵チームの内野を全員アウトにすれば勝ちとなる。


 アウトの条件はボールをノーバウンドで相手にぶつけて相手がキャッチできずにボールが地面につけばアウトが成立する。


 また相手がボールを取れなくても、その当たったボールを味方が地面につく前にキャッチした場合セーフになる。


「問答無用!では勝負の鉄則として弱いところから叩かせてもらうぞ!」


 そう言うとタコピはボールを持った手を高々とあげ残りのうち5本の腕を順番にボールにぶつけた。


「ローリングタコピスペシャル!」


 タコピから放たれたボールは一直線にアイピへと向かった。


「あ、モンシロチョウです〜」


 アイピはこれから降りかかる災難を知らずに空を舞うモンシロチョウに眼をやった。アイピにボールが当たる!その瞬間一筋の影がアイピにぶつかりアイピを抱えたままボールの軌道からそれた。


「タコピがわかりやすくてこっちもフォローしやすいよ」


 にゃんぴーはそう言うとそっとアイピを降ろした。後方ではイカロスがしっかりボールをキャッチしていた。


「わ、わ、空中散歩の魔法を唱えてないのに空を飛べたです〜」


 アイピは相変わらず暢気のんきだ。


「なに!?俺の策が読まれただと!?いて!?」


 タコピがにゃんぴーの見事なフォローに気を取られてると横の死角からボールが当たった。イカロスだ。彼はボールをキャッチするやいなやタコピの側面側に回り込みボールを投げたのだ。


「タコピアウト、外へザマス」


 審判のシガレットが叫ぶ。タコピは悔しさと混乱が入り混じった顔でコート(内野)の外にでた。代わりに犬型妖精のポチピが内野にはいる。岩石妖精の岩ピがこぼれたボールを拾う。


「ここはタコピさんとパスを繋ぎ相手の陣形を乱しましょう」


 岩ピはそう言うと高いパスを投げた。しかしイカロスはジャンプしてゆうゆうとインターセプトをする。


「あれ?」


 岩ピが戸惑っているすきにイカロスはボールを投げる。岩ピに命中してボールはこぼれた。


「岩ピ、アウトザマス!」


 シガレットの声が響いた。岩ピは声が肌に染みると言い残して外野へと行った。


「イカロスをなんとかしなきゃ!」


 ポチピはボールを拾うとダッシュで中央ラインまで走りイカロスへとボールを投げた。


 イカロスは冷めた声で、


「そんな球じゃ僕をアウトには……」


 セリフを言い切る前に黒い影が横切りボールを奪った。にゃんぴーだ。


「あんたばかりに良いとこあげないよ!」


 にゃんぴーの放った豪速球はポチピの身体に当たり2、3メートルほどポチピを吹き飛ばした。


「にゃんぴーさん、あの……少し手加減を……」


 イカロスが言葉を言いよどむのは珍しいが、にゃんぴーは全く気にしなかった。


「よっしゃー!」


 にゃんぴーは拳を握りガッツポーズをした。


「私もひらひら空を飛びたーい」


 アイピは相変わらずだった。


「どうしましょ?もう私とコンピだけになっちゃったわ。だからドッチボールは苦手と言ったのに」


 そう言いながら泣き崩れるトラ子の前にキツネ型妖精のコンピが駆け寄った。


「大丈夫ですよトラ子さん。僕がついてます。2人で白チームを打破しましょう!イテ!?」


 励ましているコンピの頭にボールが当たった。外野のうさぴょんからの返球が偶然当たったのだ。


「コンピ、アウトザマス!」


 ジャッジの声にコンピはうなだれた。


「トラ子さん、ごめんなさい。ずっと一緒にいる約束を守れませんでした」


 落ち葉舞う季節ならこの言葉がどれだけ似合っていただろう。コンピは哀愁を背に外野へと出た。


 これで赤チームはトラ子がアウトになると負けが確定する。


「ああ、コンピまで私から離れてゆく。これで私は1人、そう私は孤独だった……いつでも……」


 トラ子はぶつぶつと独り言を言いだした。赤黒いオーラがトラ子の身体から吹き出し渦をまく、みるみるトラ子の体が巨大化して3メートルを超える巨軀きょくとなった。


「なんかやばくない?」


 にゃんぴーは半笑いで冷や汗を流した。


「やばい流れですね」


 イカロスは腰を落として自然体に構える。


「孤トラモードが入ったようだな」


クマ型妖精のくまぴは両手のひらを空に向けた。体格は大きいほうだが孤トラモードのトラ子には敵わない。


「孤独の何が悪いんのよ〜!?タイガ〜マグナム!!」


 トラ子は巨大化した腕でボールを拾い上げると思いっきり前に投げた。ボールは空気の壁を破りながらにゃんぴー達に向かう。


「散開して!」


 にゃんぴーの怒号が飛び皆がボールから逃げた。ボールの延長線にいたタコピを残して、


「ふごっ!?」


 タコピの顔面にボールがめり込む。タコピはそのまま校舎の壁まで吹っ飛んだ。


「ピー、試合終了ザマス、続行は危険ザマスよ」


 シガレットの声にいち早く反応したのはコンピだ。コンピはトラ子に近寄ると、巨大な右足にしがみついた。


「トラ子さん落ち着いてください。僕がそばにいます!」


 その声がトラ子の耳に届くとトラ子は膝を折り脱力した。トラ子をまとっていた赤黒いオーラは拡散し、トラ子は元のチャーミングな子虎に戻った。


「コンピ、コンピが傍にいてくれる」


 トラ子とコンピは強く抱きしめあった。にゃんぴー達も駆け寄ってきた。


「私達も忘れんなよ!」


 にゃんぴーはわざと歯を見せトラ子に言う。


「孤トラモードはただのスパイスですよ」


 イカロスはクールに励ます。


「トラ子ちゃんとコンピ君は仲良しです〜」


 アイピは天然で茶化した。皆、トラ子を囲みわいわいと雑談を始めた。それを遠くで眺めてたタコピは空を仰ぎ、


「お父さん、スターになることは孤独になることと言ってた意味が今、解ったよ。こういうことなんだね」


と、自分に酔いしれるように話し、そのまま気を失った。


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