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私はアイピ!魔法使い!  作者: 如月信二
3/7

3


「終業の鐘がなったぞ!さあ家に帰って修行だ!」


 授業終了の鐘がなった途端、タコピは鞄を手に教室の外に出ようとした。


「あて!?」


と同時に歩いてた6本の足に見事に足払いをかけたネコがいた、にゃんぴーだ。


「ほら、やっぱり忘れて帰ろうとした。あんたにはまだ仕事が残ってるでしょ」


 にゃんぴーは雑巾を片手にタコピに眼をやる。タコピは思い出したかのようにハッとした。


「そうだ!俺には特別任務があったのだ!心と身体をピカピカにしなくては!」


 タコピは懐中電灯を取り出し机に設置して自分を照らした。


「あんたがピカピカにするのは教室!」


 にゃんぴーはそれだけ言うと雑巾を懐中電灯の側に置き立ち去った。


「にゃんぴーさん、待ってください〜」


 アイピは何を思ったか机の山積する教室でホウキにまたがり空を飛んだ。これでは進むスピードは倍になる。


「タコピ君、後はよろしくな」


 イカロスは挨拶だけ済ましさっそうと教室を後にした。


「アイピ〜、一緒に帰るときは空を飛ぶのを止めない?」


 にゃんぴーは少し困った顔で答えた。


 教室に残されたタコピが8本の手足を駆使して教室をピカピカにしたのはいうまでもない。



 アイピはにゃんぴーと別れるまでずっとホウキで空を飛んでいた。にゃんぴーは「まあ仕方ないか」くらいのノリでアイピと過ごした。


 小さな公園を過ぎた三叉路さんさろでアイピとにゃんぴーは別れる。「また明日ね」と話すアイピに「遅刻するなよ」とにゃんぴーは返した。


 にゃんぴーはアイピと別れると少し急ぐように歩きだした。



「ただいまー!」


 元気にただいまの挨拶をするにゃんぴーに対して母親はリビングから即座にでてきた。


「おかえり、今日は遅かったね。まさか居残りでもしてた?」


「居残りはタコピだよ。アイピが空を飛んでたから遅くなったんだ」


 心配する母に、にゃんぴーはアイピの話題をした。


「ま、今日もアイピちゃんと仲良くしてたのね?良いことだわ。マドレーヌさんは優秀な方だからね。アイピちゃんもきっと将来大物になるわよ」


 母のネーブルは眼を輝かせて話しをしている。にゃんぴーは少しうざそうに眼を背けた。


「さ、それより早く宿題と自習をしてらっしゃい。ママが美味しい料理を作ってあげるから」


 ネーブルはそれだけ言うとキッチンへと向かった。にゃんぴーは深く息を吐き、2階の自分の部屋へと向かった。



 火曜日は朝から雨だった。降り注ぐ雨粒は大きく道路でバシバシと音を立てていた。アイピは玄関の扉を少し開けてそれを確認すると少し嬉しそうに鞄の中に手をいれた。


「えへへ、新しいマジックシールドを使う日が来ました」


 そういって取り出した瓶とストローを持ち出し家の外へとでた。軒下でストローに瓶の液体を染み込ませ大きく息を吐く、土砂降りの空に向かって。


 するとシャボン玉のような半透明の膜が現れてそれが重力と共に落ちてきてアイピをすっぽりと包んだ。


 このマジックシールドと呼ばれる雨具はアイピの住む世界、ミステリアス王国に古くから伝わる魔法具で現代では多くのバージョンがでている。その中でも最新に近いミュージック付きのマジックシールドをついこないだおねだりして買ってもらっていたのだ。


 アイピは音楽をザ・レザーブーツボーイズのシャンクスという曲に設定して道へとでた。


 大粒の雨がマジックシールドに当たりメロディと伴奏を奏でる。と、同時に加速システムも稼働した。


「わ、わ、今回のは速いです」


 マジックシールドは水力も動力源にするために雨量が多いと加速値も少しあがる。衝突事故の危険性はない。ふわふわの物体同士が当たったところで怪我などするよしが無いからだ。


「あ、新作のベラシックバージョン。くう〜アイピに先を越されたか」


 三叉路で偶然会ったにゃんぴーが悔しそうに声をだした。


「あ、にゃんぴーさん。この子速いです」


 アイピはいつになく気を抜けない顔つきで答えた。アイピはまだ戸惑っているみたいだ。


「いいよーだ。私も今度の誕生日に買ってもらうから」


 にゃんぴーは少し小走りに足を動かす。マジックシールドは事故の心配はないとはいえ、誰かと接触するのはそれの運転が下手という証明になる。


 だからミステリアス王国の雨の日はだいたいの住人(すみびと)が少しだけ真面目に生きる。


「加速装置に頼った住人なんかに負けてたまるかー!」


 突然後ろから怒号が飛び、タコピが2人の間を駆け抜けていった。タコピやイカロスのような水棲妖精達はマジックシールドを使わない。遊びで使うことはままあるが、服も鞄も水性対応してるのを好むため必要がないのだ。


「え、え!?タコピさん!?」


 アイピはそれを見て眼を丸くした。タコピとここで会うはずはないからだ。


「おおかた、そこらじゅうを何度も往復したり走ったりしてるんだろうよ」


 にゃんぴーは姿勢を正したまま小走りで答えた。マジックシールドは開発者の遊び心で少しバランスが取りにくい。そのための少ない説明だった。


 マジックシールドは水力も利用するため大雨だとスピードがでやすい。タコピもそれを知っているから、それに負けないようにと道行く道を走りまくり、朝から学園の生徒を何人も抜いてきたのだ。


「タコピさんの家は逆方向ですよ〜」


 アイピは状況がよくわからないまま声をだし、ケーキ屋さんの壁へとぶつかっていった。


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