真実の愛に目覚めた! 運命の相手の為、婚約破棄しますか?
NOも何れ書きます。
→YES
獣人達の雄は番を何よりも大事にする。だが出会いのタイミングも出会いの相手も選ぶ事は出来ない。一生会わずに番ではない相手と結ばれるパターンも多い。と言うより番と出会えるパターンの方が珍しい。しかし故にこそ、番は運命の相手と尊ばれる。尚、番より生まれた子は素晴らしく優れた能力を持つので、相性の良い遺伝子を持つ相手を求めているのではないかと考えられている。また、それを裏付けるかの様に実際、番を感知した雄は10代半ば〜30代前半、感知される雌は20代前半〜30代後半くらいの年齢層の中にある。
そんな獣人達は獣人ではない人類よりも数が少ないが、その運動能力や状況判断力は人類よりも素で優れている。
その為、世界に1つだけの、それ程広い訳でもない獣人国を、それ以外の国は時に警戒し、時に利用したいと考えている。
とある人類の国ホーリンラブでは、獣人国の王女と王太子が政略の為に婚約した。次期王太子妃、次期王妃となるべくその王女は幼い内からその国に住まう。王太子とも仲は悪くなく、幼い婚約者達は共に国を支えようと誓いあった。
しかし12才になり、学院に通う様になると事情が変わった。平民育ちの男爵令嬢と出会った王太子は、彼女と愛し合う様になったのだ。
そして成人式兼卒業式にて、その目出度いパーティーの中で王太子は宣言した。
「私は真実の愛に目覚めた! 運命を貫く為に君との婚約を破棄する!!」
王太子は男爵令嬢と結ばれたかったが、両親に反対される事は分かり切っていたので、パーティーでド派手な宣言をしたのだ。宣言される相手の気持ちや国王夫妻の事等気にしていない。何なら結ばれる為に冤罪を被せても良いと思っていた。
だが。
獣人王女は淑女らしい笑みを崩さず、こう告げた。
「おめでとうございます、殿下。婚約破棄、謹んでお受け致しますわ。それでは皆様、ご機嫌よう。」
彼女はそう言うと、一瞬で伸ばした自らの爪を使い、己の喉を掻き切った。王太子の想像通りに。
王太子は王女の性格を良く知っていた。それは彼女の価値観を良く知っていた、とも言える。それはつまりその価値観を育んだ、彼女の本能も良く知っていた事になるのだ。
獣人国とて政略婚姻はある。番相手が簡単に見付からないからだ。しかし1度見付かるとその相手は何よりも遇する相手となる。例え婚約者がいようと、既に結婚してようと、家庭があろうと彼等は番相手となれば、それらを捨てる。番を選ぶ雄も番に選ばれる雌も、その周囲も全てそれに合わせるのだ。捨てられた側もそれを当然とし、番が見付かった事を本心より祝うのだ。獣人達の本能である。
だが人間はそうではない。
王太子と王女と男爵令嬢だけならば、簡単に誰も傷付かず、誰も傷付けず、穏やかな婚約解消が出来ただろう。そこに獣人国が加わっても同じだ。番を何よりも最優先、「真実の愛」と相性が良い。彼女の「おめでとうございます」は本心からだ。
だが人間側がそれを許さない。
番を最優先にする獣人は時に愛を貫くに当たって、邪魔する者が有るならば、容赦しない。容赦出来ない。そんな獣人の本能を持つ彼女は、幼少期よりホーリンラブ国から育った為、人間側こそが邪魔になると分かっていた。
幾ら獣人国が婚約解消を了承したとしても、人間側はそれを信じず、必ず疑心暗鬼となるからだ。自身を中心に余計な時間を掛けるならば、いっそ自分なぞ居なければ良い。王女はそう考え、実行した。王太子はそれを予期し、それでも念の為に「冤罪計画」も組み入れて(コッチは無駄だったが)、この婚約破棄を行った。
そして王女の侍女ーー此方も獣人であるーーが王太子の味方として、事態の収拾に動いた。後日、獣人国の王は「『真実の愛』の為、命を捨てた娘の誇りに懸けて、王太子殿下を我が国は支持する」と表明した事で、王太子と男爵令嬢の婚姻は決まった。獣人国の本能を国に招き入れる事を愚かにも手遅れな今になって恐れながら………。
数百年前。獣人が番と見定める相手は同じ獣人だけに限らない事が知られていた。人類が相手に選ばれる事があったからだ。
そして人類が相手であった場合、相思相愛なハッピーエンドだけとは限らない。人類には番と言うものを受け入れる本能が無く、人類が獣人を愛するとは限らないからだ。
そんなケースの場合、人類はほぼ間違いなく誘拐される。獣人が人間よりも身体能力が優れている為だ。下手に止めようと周囲が動けば、周囲が傷付けられ、最悪殺される。
そんな獣人達は、当時は国と言う形では纏まって居らず、個人単位で動いていた。それが救いだった。その頃から国を築いていた人類は対獣人に力を合わせ、遂に生きていく事も難しい、ある辺境に押し込め、管理する事に成功した。このまま絶滅してくれれば、と願った。
しかし。
獣人達はその厳しい環境に適応した。以前よりも更に高い能力を得た。知能も高くなった。国として纏まり、管理される立場から独立した。その際、「『番を見定めたとしても、相手が人類ならば人類のルールに合わせる』事は不可能故に、国外に出るのは盛りを過ぎた雄か番を見定める事が出来ない雌のみ。逆に人類を国内に招く場合は男性のみ。但し婚姻を目的としたケースやその他、この条約の外になる様な契約を結ぶ時が有るならば、必要な条件をその度に付随させる」と正式に国交を結んだ。
そしてそうなると、少しずつ国同士の交流が始まり、遂に軍事利用を考える国が現れた。それがホーリンラブ国である。未来の為に結ばれた政略婚姻の約束は、ホーリンラブ国側の有責で破られた筈で、本来ならばその対応に国は追われていた筈だ。
しかしそうはならなかった。
果たして「真実の愛を見付けた王太子バンザイ」と宣う獣人国との軍事同盟は上手く纏まるのか。数百年前の誘拐事件がまた繰り返される世界になるのではないか……。
王太子と男爵令嬢は全く以て深く考えていない。何故ならば「自分達の代で獣人達の力を借りなければならない様な戦争は起こらないだろう」と思っているからだ。根拠が無い訳では無かったが、それでも未来は読めない等と考えていないのだ。
お読み頂きありがとうございます。大感謝です!
前作達への評価、ブグマ、イイネ、大変嬉しく思います。重ね重ねありがとうございます。