第一話(3)
執筆
2021/08/22
「んじゃ後はよろしくお願いします」
「あぁ、2人ともお疲れ様。明日も学校頑張れよ」
「……行きたくない。寝たい」
午後3時、私達は次の班の方達と交代し、家に帰る。
そしてお風呂に入り布団に入る。
それが私達の一日だ。
「……もう嫌だこんな生活」
「え?なになに?」
つい今登校してきた香織がぴょこっと顔を出す。
「生まれ変われるなら普通の金持ちに生まれて美少女でモテモテで勉強も運動もできてチヤホヤされて生きていきたい」
「うわっ!なんて都合のいい人生なの!?」
「呆れて何も言えんな。少しは兄ちゃんを見習ってみい」
次は後ろから呆れながら首を横に振る祐輔。
「………。」
何も言えないのが悔しい。
「………そういえば2人は幽霊って信じる?」
「「……はい?」」
「……幽霊……っていうか妖怪みたいのっていると思う?」
唐突に話を持ちかけたのは香織だった。
「……またお前のオカルト話か?何度目や?」
「あ、めんどくさそうにした!」
香織は大のオカルト話好きだ。
幽霊や妖怪、神様などの存在を信じ、今のブームは今流行りの【陰陽妖怪物語】というアニメで推しキャラが超絶イケメンということからそれがさらに拍車が掛かってきたのだ。
「でも私見ちゃったんだよねー!妖怪!」
「へぇ。」
「あ、祐輔!聞き流さないで!」
「祐輔、聞いてあげよ?聞かないと後からめんどくさいんだから」
「………そやな。」
「……杏里も杏里で酷いね」
妖怪や幽霊、神様は確かにいる。
しかし普通の人が接触することはほぼないから私は祐輔や香織が羨ましく思う。
「………なんで私なんだろう」
「……バカ杏里!喋ってないでそっちの結界ちゃんと貼っておけよ」
「………はいはい。」
本日も夜22時から朝の4時まで陰陽師の仕事です。睡眠時間を削られるし明日は小テストがあるしもう最悪……。
「あ、そういえば今日から陰陽師の仕事に来る子が研修で来るんだっけ?」
「あー、そうだったな。まだ9歲の女の子だっけ?すごいよな。その歳でもう外回りなんて」
「ふっふっふ。もしかしたら私、先生と呼ばれるかも……!いや、先輩………いやいやいや!!もしかしたらお姉様なんて呼ばれたりして……」
「……とりあえず基本中の基本はわかると思うけどそこから教えないといけないんだからな。変なこと教えんなよ」
「いやぁ、楽しみだなぁ」
数分後。
「あ、あなたが安倍晴明以来の天才と言われてる藤原隼人さんですか!?ずっと前からファンです!!今日からよろしくお願いします!!」
「………あー……うん。よろしく」
「……………。」
「……いや、杏里、嫉妬するな。指導係はお前なんだしこれから……」
「私隼人さんに指導していただきたいのですが?」
「はぁ?」
「天才の双子の妹は基本的な陰陽術しか使えない平凡以下の陰陽師だと聞いてます。私これでも陰陽十家の7門の跡取り娘です。どうせなら才あるお方に御教授して頂きたいのですが」
「……えっと……」
「わたくし環七雲雀と申します。よろしくお願いします」
「………雲雀ちゃん?わがまま言ったらダメだよ?ほら、隼人は仕事が多いから忙しくて……」
「忙しいのはあなたのせいではなくて?確かに役割分担は効率いいですがさっきから隼人さんの方が仕事量多いです。これはあなたがノロマで要領悪くて陰陽術もろくに使えないからでは?」
……ふぅ。
我慢だ私。そう、相手はまだ小学三年生。
彼女の言ってることも正しいしここは私が大人になって……
「ま、そこで全部隼人さんに任せるから上達しないんじゃないんですかね?私の指導よりも自分の修行を見つめ直したらいかが?」
うん、我慢だ。
まだ私は我慢できる!
「……今の貴方よりは陰陽術を使える自信がありますわ。ま、下と比べても自慢にもなりませんがね」
その時杏里の頭の何かがプツンと切れた。
「…フフフフフッ……。」
「な、なんですかいきなりっ!」
「……そこまでいうなら試してみる?」
「おい杏里、何考えて……」
「隼人は黙ってて!黙って聞いてりゃ平均以下とか下とかノロマとか貧乳とか悪口ばっかり言って!!大人の威厳というものを分からせてあげる!」
「貧乳は言ってないだろ」
「良いですわね!ここで立場をはっきりさせましょうか!」
「勝負よ!」
「望むところですわっ!」
こうして謎の陰陽対決が始まった。
「はぁ、とりあえず勝負内容はポイント制の討伐バトル。ポイントは模擬戦と同じくランクによって変わるものだ。制限時間は朝方まで。それで良いか2人とも」
「いいよ!」
「あの……あぁ言った手前言いづらいんですが……」
雲雀は隼人の方へと耳打ちする。
「朝方までってことは今日の範囲の結界を張る予定だったのは……」
「あぁ、気にしなくて良いよ。俺が2人分のリカバリーしとくから。」
「勝負しょーうぶ!!」
「………それに杏里のやつがうるさいからそっちの方が助かる」
「すいません。ではお言葉に甘えさせていただきます」
この時点で何かしらの分野で雲雀の勝ちだな、と思った隼人であったが口には出さなかった。
「なら俺が2人に簡易式神を付けるからそれでポイント集計するぞ」
そういうと隼人は二枚の式神札をだし、球型の式神が出てきて杏里と雲雀の周りについてくる。
「じゃあ始めるぞ!スタート!」




