第一話 双子の陰陽師
執筆
2021/08/22
「‥‥‥うぅ」
張り出されたテストの順位の張り紙の前にぐったり落ち込んでいた。その少女の名前は藤原杏里。中学三年生である。
「……最下位……ね。」
「さすが杏里だな」
聞こえた方へ顔を向けると友人である香織と雄介が立っていた。
「うるさいなぁ。夜は用事で勉強できないんだよぉ」
「用事?」
「な、なんでもないっ!つ、つまり私はやれば出来るんですっ!」
そうだっ!私はやれば出来る子!
夜忙しいからテストの点数がとれないだけ!
そう思うことが出来るのに……。
あいつさえいなければ!
「……んだよ」
「ふんだっ!」
「は?わけわからん」
深夜すぎ、杏里は2人組のもう1人とベンチにてちょっと遅い夜ご飯を食べていた。
そのもう1人こそ杏里の双子の兄である藤原隼人である。杏里とは違い、テストはいつもトップであり、藤原兄妹の最上位と最下位は言わば学校の名物となってるのである。
杏里が夜の仕事が大変だと分かってもらえないのは兄である隼人の方がやることが多い上にきちんと勉強をしているからグウの音も出ないのだ。
「…じゃあ飯食ったらやるぞバカ杏里」
「バカ杏里っていうなぁ!」
その兄妹の夜の仕事とは陰陽活動、つまり2人は陰陽師なのだ。
夜には危険が潜んでいる。
というのも夜になると怪の力が強まるためである。
怪とはすなわち妖や妖怪といったもので、悪意のある妖怪などを退治するのが彼らの主な仕事である。