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第98話 俺、異世界でゲオリオさんに頼みごとをするその2

 ダンッ!と響く音の元凶は包丁でウルフの肉を切っている音だった、たまに包丁の背でドンッ!っと叩いている。


 これをすることによって肉を柔らかくしているんだろうな・・・これだけじゃないかもしれないが・・・それにしても音がこえーよ。


 思っていた以上にキッチンは広く俺が今まで見ていた場所はほんの一部分だけだったようだ。


 リリアーヌにはいつもの光景なのだろう・・・両手で手を振りながらゲオリオさんを呼んでくれた。


「おとう~さ~ん!アスティナちゃんがお願いがあるんだって~!!」


 ゲオリオさんは包丁を勢いよくまな板に突き刺すと水道で手を洗いすぐにこっちに来てくれた。


「ゲオリオさん、晩御飯の準備中にすいません。それでちょっとお願いがあるんだけど・・・」


 俺はゲオリオさんにエリンに秘密で料理を出してほしいことを伝え、シャドーウルフの肉をストレージから取り出しキッチンラックに置いた。


 どれぐらいの量が必要か分からなかったので、とりあえずガラクさんに解体してもらった良い部位とかいうやつを10匹分にしておいた。


 経木に巻かれたシャドーウルフの肉の重量は一つ300グラムほど、ということは合計3キログラムにもなる。


 少なくて困ることはあっても、多くて困ることはないだろうし・・・それに残ったとしても、ストレージに収容すればいいか。


 そのうちの一つをゲオリオさんは無造作に開けるとすぐに肉の状態を調べ始めた。指で押したり、香りをかいだりと他にも色々と調べている彼に俺は声をかけた。


「これで俺たちの晩御飯を作って欲しいんだ!!あと、エリンに黙っておいてくれると助かる」


 最後に指で肉を押したときについて脂を舐めた途端、今までずっと無口でたまに声が聞こえたとしても幻聴かなと思えるほどに小さい声だったゲオリオさんが突然饒舌になった。


 そして入手ルートについて怒涛の質問タイムに突入することになる。


「アスティナちゃん、これをどこで手に入れたのかおじさんに教えてくれないか?ガラクが切り分けたのは分かるが、素材そのものシャドーウルフの倒し方が実に素晴らしい。ほら、肉にストレスがかかっていないんだ。それがどういうことかというとね・・・・・・!!」


 料理人として何かに目覚めてしまったゲオリオさんの質問攻めがさらにヒートアップしようとしていた時だった。


「おとーさん!アスティナちゃんが困ってるでしょ!!」


 と暴走している自分の父親を制止させようとリリアーヌが横槍を入れた。


 ゲオリオさんは愛娘に叱咤されたことがかなりショックだったらしく、先程の威勢はどこにいったのかというほどに一気にシュンと寂しそうに俯いている。


 質問攻めされたのはしんどかったがさすがにここまで寂しそうなゲオリオさんを見るのもなかなか辛いものがある。


 さて、どうしたものか・・・・・・そうだ、俺の頼みを聞いてくれたこと、それに日ごろの感謝のお礼も兼ねて、ゲオリオ一家にもシャドーウルフの肉をおすそ分けすることにしよう。


 料理人としても色んな料理を試作したいだろうし、少し多めに渡しておこう。


 俺たちもその料理のご相伴に預かれるかもしれない・・・よし、さらに多めに渡しておくか。


 俺はさらにストレージからシャドーウルフの肉を20匹分、計6キログラムを取り出すとキッチンラックに置いた。


 どんどん肉が積み重なっていく様子をゲオリオさんはただただ無言で見ている。


「ゲオリオさん、こっちは日ごろの感謝と頼みを聞いてくれたお礼だ、是非受け取ってくれ!」


「・・・本当にこんなにもらっていいのか?」


「あぁ、日ごろ世話になっているし、それにリリアーヌにも食べて欲しいしな~」


「ありがとう、アスティナちゃん!お父さん、お父さん、今日の晩御飯、わたしもこれがいい!!」


「アスティナちゃんもなかなか策士だな・・・これじゃ断れない。ありがたく頂戴するよ」


 ふたりに手を振ると席に戻るためにキッチンをあとにした、背後では晩御飯がシャドーウルフの肉に決定したことにはしゃいでいるリリアーヌの声とシャドーウルフの肉をどう調理するか考えているのか、ぶつぶつとひとり呟いているゲオリオさんの姿があった。

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