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第93話 俺、異世界でゲオリオさんにお礼を言う

 俺はいまトボトボと徒歩で宿屋に向かっている途中だ・・・そんな俺の頭の中では別れ際にセルーンから聞かされた衝撃の事実が、ずっとそれはもう何周目ですかと自問自答したくなるほどにぐるぐるしている。


 そもそも・・・アスティナやシスティはいつの時代を生きていたのだろうか。前にセンチネルが見せてくれた500年前の文献にも不死族はいなかった・・・正確にはいたかもしれないが歴史から抹消されている。


 素人考えではあるが、わざわざ消したりするってことはその文献が書かれていた頃はまだ不死族はいたことになる。


 不死族がいないのであれば、いちいちそんなことする必要もない、つまり不死族が存在していては未来に語り継ぐのに都合が悪いなにかがあったはずだ。


 それが何かは分からないがとりあえず言えることはただ一つ、アスティナを歴史から抹消しようと企てたやつの正体を絶対に炙り出してやる。

 

 ただ今は焦っても仕方ない、センチネルも俺との契約を守って情報収集頑張ってくれているようだし、彼から連絡がはいるまで待つとしよう。


「お嬢様、お嬢様!宿屋を通り過ぎております・・・なにか考え事でしょうか?」


 自分でも驚くほどに考え込んでいたらしい、システィから声をかけられなかったら延々と歩き続けていただろう。


 その声の持ち主システィも先ほどまで俺の後ろを歩いていたはず、今は正面でお盆を持ったまま少し膝を曲げ、目線を俺に合わせるように姿勢を取りながら、少し心配そうにこっちを見ている。


 俺は彼女に「ごめん、ごめん。何でもないんだ」と返事をしながら、宿屋に入っていった。


 いつもなら俺やエリン、それに宿泊客が帰って来るとカテリーヌさんかリリアーヌが「おかえり」と出迎えてくれるのだが、宿屋の中を見渡してもふたりの姿はなく、キッチンにゲオリオさんがひとり見えるだけだ。


 まだ昼の13時過ぎだと言うのにめずらしく食事をしている客の姿が見えない・・・いつもならこの時間だとまだランチを食べている客がいるはずなのにな。


 その様子を見ながらキッチン前まで来た俺はゲオリオさんに「ただいま、ゲオリオさん!」と手を振って挨拶をした。

 

 ゲオリオさんも無言で手を振り返してくれた、俺はまだゲオリオさんとガーランさんの声を一度も聞いていない、毎日挨拶を続ければそのうち聞けるのではないかという長期的な挑戦をしていたりもする。


 挨拶を終えるとすぐにシスティは俺を2階のエリンが寝ている部屋に行くように勧めてきた。


「私めはゲオリオ様にお盆とカップを返却してきますので、そちらが済み次第お部屋に向かいます」


「わかった、それじゃまた後で。ゲオリオさん、カップやお盆貸してくれて、ありがとうございました」


 そう言い残して、キッチンに背を向けエリンの部屋を目指して歩き出した。その直後、後ろで「いいってことよ」とボソッと微かに男の声が聞こえたような。


 あの声がゲオリオさんの声だったのかを確認するためにすぐに後ろを振り向いたが、彼は黙って食器を洗っている・・・そして、その横で同じように食器洗いを手伝っているシスティの姿が見えた。  


 俺はもう一度、心の中で彼に「ありがとうございました」と言った。


 階段を上がり、エリンの部屋の前まで来ると何やら賑やかな声が部屋の中から聞こえてくる。


「エリンお姉ちゃん、それで・・・そのあとどうなったの?」


「それはね・・・ふふふ・・・でも、これ話すとアスティナ怒りそうだし、どうしようかな~」


「え~、そこまで話しておいてそれはないよ~、エリンお姉ちゃんのいじわる~!」


「ふふふ、アスティナがそんなことで怒る訳ないじゃない。ごめん、ごめんって、リリアーヌちゃん。全身筋肉痛なんだから、叩かないでよぉ!」


 うちの眠り姫が目を覚ましたらしい・・・そういや、俺も一週間寝てたからどっちかというと俺の方が眠り姫っぽいような・・・。


 そしてその目を覚ましたエリンの相手はリリアーヌがしてくれている。どんな内容の話をリリアーヌに聞かせていたのかがとても気になる。


 俺は部屋で女子会を開いている彼女たちが気づくように少し強めにドンドンッ!っとノックしつつ、「エリン、起きたのか?」と声をかけた。


 するといつもの元気な声で「アスティナ、おかえり」と返事が返ってきたのとほぼ同時ぐらいにドアが開いた。 


 部屋の様子を見るとエリンはまだベッドから出ておらず、座って壁に背を預けている。


 どうやらドアを開けてくれたのはリリアーヌのようだ、まぁさっきの会話でエリンが筋肉痛という情報は仕入れているからそうだろうなとは思っていた。


 ドアを開けてくれたリリアーヌに「ただいま、リリアーヌ。エリンの面倒を見てくれてありがとうな!」と言うと、少女は頬を膨らませながら「おかえり、アスティナちゃん。だけど、もう少し遅くても良かったのに!」となぜか怒られた。

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