第91話 俺、異世界でシスティの職業について考える
システィは俺に冒険者になるか、ならないかを自分で決めるように言われ戸惑っている。
彼女がどちらを選ぼうとそれを尊重する、彼女は俺の従者なのかもしれないが、それでも夢の中で見た時のように姉妹としての関係を今の俺とも築けるようになれれば良いと思っている。
だが、正直なところ結構不安だったりもする、理由は実に単純明快な話でシスティは俺じゃない本当のアスティナを知っている。それはつまり彼女からすれば、大事なアスティナの身体を勝手に使っている偽者でしかない。
そのことを直接彼女に聞くことはまだ俺には出来そうもない。これまで彼女に色んな指示をしたが、それも実は内心ビクビクしながらしていたりもする。
システィはやっと自分がどうしたいのか心に決めたらしく、俺の肩に手をそっと置くと俺たちに自分の意見を聞かせてくれた。
「私め・・・・・・私もアスティと同じ冒険者になりたい、それが私の願いです」
「・・・分かった、そういう訳だからセンチネル。システィの冒険者カード頼むな!」
センチネル、セレーンさんのふたりはこうなる事が分かっていたらしく、テーブルには用紙、冒険者カードと水晶がすぐに用意された。
前回俺が冒険者登録した時はわざわざ受付窓口に行って登録したはずなのに今回はここで済ませるようだ、というかここで問題なく出来るのなら俺の時もそうした方が早かったんじゃないか・・・。
「システィ、それじゃ俺の横に座ってくれ、書き方を教えるから、とはいっても簡単なんだけどな。さぁ、こっちこっち」
俺は座っているソファーを右手で叩くと、彼女にここに座るように誘った。
彼女は「ふふ・・・はい、お嬢様」と嬉しそうに返事をしながら、横に座った。
さっきまでソファーの左側も空いていたはずなのにシスティが俺の右側に座った瞬間、左側にも誰か座ったのか同じタイミングでソファーが軽く沈んだ。
左側を見てみると、デュラハン事件から復帰したのかセルーンがそこに座っていた。
セルーンが復帰したのなら、それはそれで良いのだが・・・もし登録を邪魔をしようものなら、またシスティにお願いしてアレをやってもらおうか。
俺はセレーンさんが用意してくれた用紙をシスティの前に持ってくると、まずはここに名前を書くように指で場所を示しながら教えた。
次に職業を書くのだが、システィは大剣を使うから、ソードマン、大剣使い・・・どれもしっくりとはこないな・・・。
職業についてはシスティに決めてもらおうかな・・・俺だと微妙なセンスしか出てこない気がする。
「システィ、あとは職業なんだけど、何かアイディア・・・えっと、自分が名乗りたい職業ってないか?」
「そうですね・・・・・・それでしたら、私めはこの職業を名乗りたいです」
彼女はそう言うと、職業欄にこう書いた【ロイヤルガード】と、それは日本風に言えば近衛兵。
俺は彼女がどうしてこの職業に決めたのか聞いてみると、システィもなぜだか分からないがこの言葉が頭に浮かんだらしい。
エリンやリリアーヌが言ってたようにアスティナは本当にお嬢様だったようだ。しかも、システィの職業を考えると、もしかすると王家のお嬢様・・・なわけないか。
あとはセレーンさんが用意してくれた水晶に手を触れて、犯罪歴が無いかを調べて終わりだ。
システィにそこにある水晶に手を触れるように言うと、彼女は手を添えるようにそっと水晶に触れた。
これで終わりだなと、俺の時と同じように水晶が変化することなく、そのまま冒険者に登録できるだろうと思っていたのだが・・・今まで見たことがないほどに真っ赤な色に水晶が変化した、それはもうこのドレスやアスティナの瞳なんて足元にも及ばないほどに真紅に染まっている。
これはダメじゃないのかな・・・と思っていたが、セレーンさんは何事も無かったかのようにシスティに「お疲れ様でした」と言ってる。
センチネルもセルーンも特に気にする様子もなく、それどころかシスティが冒険者になったことを喜んでいる・・・あれ、俺がおかしいのか。
そして最後にどのタイミングでシスティの冒険者カードを作成したのかと、思えるほどの手際の良さで用意されたカードがシスティに手渡された。
「こちらがシスティさんの冒険者カードとなります。出来る限り、肌身離さずお持ちください」
「はい、ありがとうございます、セレーン様」
システィは冒険者カードを両手で持って「出来ました、お嬢様」と嬉しそうに俺に見せてくれた。
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