第90話 俺、異世界でシスティについて提案をされる
立ったまま気絶しているセンチネルをどう起こせばいいのか、悩んでいるとセレーンさんは慣れた手つきで何か粉末が入った袋をスカートのポケットから取り出し、封を開けるとすぐに粉末をセンチネルの口に放り込み、紅茶でそれを胃まで一気に流し込んだ。
多少温くなったとはいえ・・・一気飲みするのにはまだ熱いような・・・。
センチネルに飲ませた粉末は気付け薬だったらしく、さっきまでただの案山子だった彼が生気を取り戻したかのように動き出した。
ただ凄まじくあの気付け薬は苦かったらしく、喉をかきむしり、口に残った薬を流したいのか空になったカップを逆さにして、大きく開けた口に向かって底を叩き雫を落とそうとしている。
しかし、どれほど底を叩こうが雫・・・ほんの一滴すら、落ちることはなかった。センチネルはそれはもう悲し顔をしながらカップをテーブルに置くと、俺たちのカップをもの欲しそうに見ている。
口の中に残った苦味を流すためだけに飲ませるのはもったいないと思ったが、さすがにあのままでは可哀そうな気もするので、俺はストレージから水筒を取り出すと、センチネルが使っていたカップにリリアーヌお手製アイスティーを注いであげた。
センチネルは俺が注ぐとすぐにカップを手に取り、一気に流し込む。そしてすぐに俺の前に空になったカップを置き喋ることすらせずにそのカップを指差して、おかわりをお願いしてきた・・・。
本当にあの気付け薬は苦かったらしく、このやり取りが5回ほど続いた。
苦みは取れたかもしれないが、あいつの腹は水分の取り過ぎでタプタプだろうな・・・。
やっと苦みが取れたことにより、落ち着きを取り戻したセンチネルは何度も俺に向かって「ありがとう」と言ってきた。
このアイスティーまだ俺も一滴すら飲んでいないのにもう水筒の中身は空っぽだ、まぁ今回は仕方ないか、またリリアーヌに用意してもらおう。
この2週間の間にリリアーヌから色んな種類のハーブティーを淹れてもらった、そのハーブティーが入った水筒を俺はストレージの中に大量に収容している。
リリアーヌのハーブティーは温かいのがベストだが、でもそればかりだとゴクゴクと飲みたいときには不向きのため、冷やしたハーブティーも何種類か用意してもらっている。
今後はこのコレクションにシスティの紅茶も加わるとなると、もうお茶に関してはもうこれ以上のものはないかもしれない。
次の目標は果物を使ったジュースやあとはそれらを割って美味しく飲むための炭酸を仕入れなければ・・・。
俺が今後追加予定の飲み物について考えていると、回復したセンチネルから質問された。
「ちょっと記憶が飛んでて・・・確認なんだけど、システィ君がアスティナを守護する者という認識でいいのかい?」
「あー、それで間違いないよ。俺もだがシスティ自身もそうだと認識しているしな」
「さらにシスティ君の召喚制限も完全になくなったということでいいんだよね?」
「前みたいに15分経つと消えたりすることもなく、ずっとシスティを召喚することが出来るようになったみたいだ。それに実際にもう30分以上一緒にいるしな」
俺の説明を聞いたセンチネルは目を閉じて頷き始めた、久しくこの動きを見ていなかったなと感じながら、彼が目を開き何か話すまで紅茶を飲んで待つことにした。
今回はかなり早く目が開いた・・・というか3秒も経っていない、これはあれだ目を閉じる前から何を話すか決めていたんじゃないか。
センチネルから突拍子もない言葉が彼の口から出てくるのであった。
「アスティナ君、システィ君を冒険者ギルドに登録させたいと言ったら、キミは断るかい?」
「・・・はっ?システィを冒険者にするってことか・・・彼女は俺と違って、あくまで召喚で呼び出されているだけだぞ」
「だけど、それはアスティナ君が彼女に帰るように言わない限りは居続けるんだよね。それなら別に問題ないんじゃないかい?」
「それはそうなんだが・・・なぁシスティ、お前はどうしたいんだ。冒険者になるかどうかはシスティに決めて欲しい」
俺は冒険者になるかどうかをシスティ自身に決めてもらうことにした。メイドとして俺の世話をするだけじゃなくて、せっかくこの世界に来ることが出来たんだし、彼女にも好きな事、したい事を選びこの世界を楽しんで欲しいと思った。
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