第9話 俺、異世界でオークに出会う
俺はいまアスティナ・・・つまり、女の子になってるってわけだ。で、相手は繁殖力の化け物。捕まったことを想像してしまった俺は一気に血の気が引いた。
「エリンさぁぁぁん、待ってぇぇ!エリンさぁぁぁぁん!この先はマジでマズいんだって!!」
「なにか言った~?ねぇ、なにか村みたいなのが見えてきたよぉ。あれなんだろアスティナ知ってる?」
ヤバい!ヤバい!ヤバい!ヤバい!もうあの距離だとオークは気づいているかもしれない。どうする、どうする、俺。叫びながら彼女のあとを追いかけ、残り5mぐらいまで追いついた時のことだった。
ドーン!ドーン!腹に響くようなデカい音が聞こえた。どうやら太鼓らしきものを叩いているようだ。俺はそれがなにを示すことものなのかすぐに理解した。
エリンを射程距離まで捉えた俺は彼女の腕を掴むとすぐに全力で逆走するのだった。
「マズイ!あれは非常にマズイ!エリンここから離れるぞ!」
「アスティナ痛い、腕が痛いよ!ねぇ、ねぇってば、それにあの大きな音はなんなの、・・・・・アスティナ?」
「あー、ちょっとだけマズイ状況になってるだけだ・・・、まぁエリンは気にするな!俺に任せておけ!」
と俺は引きつった顔で出来るだけ笑顔になるように表情を作ってそう言った。俺も彼女もただただ無言で汗びっしょりになりながらも走り続けた。
そして、隠れるのにちょうど良さげな木を見つけたのでそこで休憩を取ることにした。俺は隠れているようにとエリンにいうと、木から顔を出してオークが追いかけてきていないか様子を見ることにした。
「ふぅ、なんとか撒けたようだな・・・、いやぁ、さすがに焦ったわ」
「・・・・・・・・・・・・・」
と安堵している俺の見て彼女はなにか言いたそうにしていた。俺の方から話かけると彼女はやっと口を動かしてくれた。
「エリンどうした、いつものお前らしくないじゃないか?」
「・・・ご、ごめんなさい・・・、それとありがとう・・・アスティナ」
「気にするなよ、そんなこと。それに俺の記憶を取り戻すまでは一緒にいてくれるんだろ?」
「うん・・・、もちろんよ!フォレストエルフに誓って、一緒にいてあげるわ!」
「フォレストエルフに誓って、ってなんだよ初めて聞いたわ!」
やっといつもの雰囲気になったと思って俺は油断していたんだと思う。自分が木の陰から体がはみ出していたことに気づいていなかった。
グサッ!?っと、なにかが刺さったような音がした。どうやらそれは俺の身体から出た音のようだった。さっきまで笑顔で会話していたエリンの顔がどんどん暗くなっていき、いまにも泣きそうな顔に変化していた。
俺は無意識に音がなった箇所を手で押さえていた。その触れた手のひらを見てみるとべったりと真っ赤な液体が付着していた。左のわき腹に矢が刺さったようだ。まさかと思い俺は痛みに耐えながら、後ろを振り向いた。
そこにはこちらに向かってくるオークの大群がいた。
「面白い」「続きが気になる」と思っていただけましたら
是非ともブックマーク、評価よろしくお願いいたします。




