第87話 俺、異世界でオークキングの報告書を読むその3
目が泳ぎ続けているセンチネルにセルーンはさっきの話について質問している。
「ねぇ、センチネル・・・わたしオークキングの事話したことあった?アスティナちゃんと特訓の事は全て覚えているんだけど、その事は覚えていないのよね」
彼女の言葉を聞いたセンチネルはこれはチャンスだと言わんばかりに、さっきまで目が泳いでいたのが嘘のように目を輝かせ話し始めた。
「セルーン、キミは話してなかったよ。それにボクもギルドマスターとしての仕事が溜まってて、なかなか時間も取れなかったね」
「・・・そうよね。わたしも次の日の偵察のために早めに寝てたし、あまり会ってなかったわね」
セルーンを上手いこと仲間に引き入れられたことが嬉しかったのか、やつが軽く右手で拳を作りガッツポーズをしたのを俺は見逃さなかった。
ただここでそれを指摘するとまた話が逆戻りするため、とりあえず黙っておくことにした。
それにしてもオークキングの討伐を報告しに来ただけなのに・・・まぁ実際はオークエンペラーだったがこれほど重大な事件にまで発展するとは思ってもみなかった。
オークエンペラーをガラクさんのとこに持って行くのはもう少し後になりそうだ・・・まずはそれよりもこの先どう行動するべきかをセンチネル・・・ギルドマスターに決めてもらわないといけないな。
犯人はオークエンペラーをオークキングだと、誤認させるような報告書を作ったということは討伐依頼を受けていた俺やエリンを依頼未達成にさせ、昇級の邪魔をするため・・・もしくは考えたくもないがオークエンペラーに俺たちを殺させるためだろう。
「それでセンチネル、これから俺はどう行動すべきなんだ?」
俺が今後の事について質問をすると、彼は俺たちの顔をひとりひとり見ながら答えた。
「ボクたちは誰一人オークエンペラーだと気づいていない・・・つまり犯人の思惑通りオークキングで通すことにする。簡単に言えば犯人に騙されているふりをしようじゃないか!!」
彼は証拠を見つけるまでの間、俺たちに騙されたように演じるように言ってきた。一番怪しいのはヒマリさんだがまだ犯人だとは言い切れない・・・確実な証拠を見つけるまでは彼の言う通りにしておくべきか。
エリンにはオークエンペラーだったということも教えないようにと釘を刺された・・・これに関しては俺もそうだなと頷いた。
最後に魔物買取所にオークエンペラーを持って行くことも今はやめて欲しいとも言われた、これもまぁそうだろうな・・・残念だが今は諦めよう。
ひと通り今後の予定を話し終えるとセンチネルは「くくく・・・」と含み笑いすると、最後に右拳を振り上げながらこう話を締めくくった。
「それじゃー、みんな、ボクたちをこけにした犯人に目にモノを見せてやろうじゃないか!!」
確かに一番の原因はこんな事をした犯人ではあるが、自分のミスをしれっと無かったことにしようとしているギルドマスターのセンチネル。
今回ばかりはセレーンさんも何も言わずにセンチネルの意見に賛同しているようだ。さすがに俺やセルーンに害をなした相手に容赦する気はないようで・・・まぁ俺もそこそこ鬱憤は溜まっていたりはする。
とりあえず今後の予定も決まったこともあり、俺はテーブルに置いてある紅茶を飲むためにカップを持とうと手を伸ばした時だった、後ろにいるシスティから声をかけられた。
「お嬢様、そちらもう温くなっております。少々お時間を頂けるのでしたら、淹れなおしたいのですが・・・よろしいでしょうか?」
システィの方から声をかけてきたことに多少驚きつつも、俺は彼女の提案を受け入れ紅茶を淹れなおしてもらうことにした。
「システィ、出来ればみんなの分もお願いな!」
「・・・かしこまりました、お嬢様」
彼女はそう言って軽く頭を下げると急にその場から消えた・・・それはもう瞬間移動とかそんなレベルのやつだ。
3人もその動きについてはさすがに驚いたのか・・・リリアーヌのように目を皿のようにしてさっきまでシスティがいた場所を見ている。
そして、その後・・・センチネルからある質問をされた。
「ところでアスティナ君・・・ずっと気になっていたんだけど、あのメイドの方はどちら様?」
彼らにシスティの事を紹介するのをすっかり忘れていた。
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