第85話 俺、異世界でオークキングの報告書を読むその1
それからというもの・・・妹様によるセンチネルへの糾弾は本当に凄まじかった。まぁ彼女が怒る理由はなんとなくではあるが察している。
討伐対象が本当にオークキングだったのならば最悪、俺とエリンが倒せずに依頼を失敗したとしてもセルーンがいる限り、ほぼ100の確率で生存すること、無事に町に帰って来ることが出来る。
ただそれが上位種のオークキングのさらに上である・・・最上位種のオークエンペラーとなれば話は別だ。
やつの動き自体はそれほど速くはなかったが、あの時オークエンペラーが放つ威圧は生物の本能のようなものに直接恐怖を刷り込むような感じがした。
最初に目や額に攻撃が当たった時はあれほど痛そうに悲鳴を上げ、余裕で倒せると思っていたのにやつが戦闘態勢に入った瞬間からなぜか逃げられない、勝てないというネガティブなイメージしか湧かなくなった。
これに関しては戦闘経験の差でかなり左右される、実際に俺はそんな状態に陥ったのに対し、エリンとセルーンはオークエンペラーの威圧ももろともせずに攻撃をしている。
だがそれももしかすると、オークエンペラーが俺たちを格下と判断し、手を抜いていただけかもしれない・・・。
あと挑発するかのように左目を指差していた時のことをよくよく思い出すと・・・あいつ、両目で俺を見ていなかったか・・・。
アクアレイで潰したはずの目で・・・こっちを見ていたということはやつも俺と同じように自動回復のような能力を持っていたのかもしれない。
俺がそんな考察をしている最中、絶賛継続中で糾弾されながらも書類を探し続けるセンチネル。そしてセレーンさんの神経を逆なでするかのように「あった・・・あった、これだよ!」と大きな声を出しながら、その書類を両手に持つと真上に向かって腕を伸ばし、見つけたことをアピールしている。
センチネルは見つけた書類を早速テーブルまで持って来ると、それを俺たちにも見えるように広げた。
どうやらその探していた書類は報告書のようだ、そのタイトルはオークキング偵察その6という何とも味気ないものだった。
それに報告書の中身も特に違和感もなく、オークキングをいつどこで見つけたを示すように地図に日時とバツ印が書かれていたり、あとは外見や装備などについて事細かく書かれていた。
彼がなぜこの報告書をあれほど必死に探していたのかを聞いてみた。
「斥候部隊の人たちがオークキングについて調べてくれた報告書のようだが・・・特に気になることも書かれていないような?」
「・・・そうなんだよ、実に見事なまでに完璧な報告書なんだ」
彼はそう言い放つと広げていた報告書をスライドさせるかのように横に押した、するともう一枚報告書が出てきた。
こっちの報告書のタイトルは冒険者のオークキング目撃情報その3と書かれている。
そしてセンチネルは一枚目の報告書の時のように俺たちに見えるように広げると・・・一枚目の報告書に書かれている文章と二枚目の報告書に書かれている文章、それぞれを左右の人差し指で示した。
彼がどういう意図でこんなことをしているのかは分からなかったが、ギルドマスターがわざわざここまでするということは何かがあると思いそれぞれの文章を読み比べをした。
すると、驚きの事実が見つかった・・・文章などは微妙に変えられてはいるが、書いてある中身は全く同じ・・・それはまるでカンニングをしてそのままではバレるからと、ちょっとずつ言葉を変えただけのような浅はかなレベルのものであった。
一枚ずつならば気づかれないかもしれないが二枚並べて確認すると、一目瞭然だった。
そして俺が両方の報告書を読み比べたのを確認したセンチネルは次にこう質問した。
「アスティナ君、セルーン率いる斥候部隊とBランクの冒険者・・・どっちの方が正確な情報を手に入れられると思う?」
「それは間違いなく斥候部隊の方だろ、Bランクだと近づくだけでも命がけな気がするんだが・・・」
センチネルは俺の答えに対して無言で頷くとセレーンさんの方をチラッと確認するように目を向ける。セレーンさんは彼が報告書を二枚並べた辺りから急に黙り込んで、何か考え事をしている。
そして次に彼の口から出た言葉に俺は驚愕することになる。
「アスティナ君・・・一枚目の報告書は斥候部隊のもの・・・二枚目はBランクの冒険者からの情報をまとめたものなんだ」
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