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第80話 俺、異世界で門番にシスティを紹介する

 気持ちよさそうに寝ているエリンを起こさないように安全運転で帰ったこともあってか、町の入り口である大きな門が上から見える距離まで近づいた時にはすでにシスティの姿が確認できた。


 ただ・・・安全運転とは言っても普通に歩いて帰るよりもかなり早く帰れているはずなんだけどな・・・。


 道が作られているとは言っても邪魔な木々を伐採して、通り道を作った程度でしかない。町に近ければ近いほど道も整備されて歩きやすくはなっているが、俺たちが戦っていた場所はそこそこ町から離れていたこともあり、歩くだけでも足元を確認しないと躓きそうになるほど荒れていた。


 そんな道を通りながら、しかもセルーンをお姫様抱っこした状態でシスティは俺よりも早く到着したことに驚愕した。俺は町の入り口で待っているシスティの近くまで飛行で移動をすると、そこから徐々に風力を下げていき、ゆっくりと着陸する。


 上空からシスティを確認していた時に気づいてはいたが・・・彼女は手ぶらだった。そして樹海で別れた時に彼女の両手に抱えられていたはずのセルーンの姿がどこにも見当たらなかった。  


 その事について俺はシスティに質問しようと思ったが・・・その前におんぶしているエリンをシスティにも手伝ってもらい降ろした。


 システィにはそのままエリンをお得意のお姫様抱っこで運んでもらうことにした。


「システィ、エリンのことお願いな。あとさ、なんか両手が空いているように見えるんだけど・・・俺の気のせいかな?」


「いえ、お嬢様、気のせいではありません。彼女は町に着いてすぐにセレーン様にお渡しいたしました」


「さすがはセレーンさん・・・」


 最初は手ぶらのシスティを見て内心、不安でいっぱいだったが話を聞いてセレーンさんなら安心して預けられる。


 そういうことならオークキングの討伐依頼報告については今頃きっとセルーンがしてくれているはずだ。冒険者ギルドに向かうのはエリンをベッドに運んでからでも問題ないだろう。


 門番のリスタは俺たちの会話が終わったことを確認するために「アスティナちゃん、もう話しかけても大丈夫かい?」と聞いてきたので、俺は「あぁ、大丈夫だ」と返事をした。


 リスタはなにかを警戒するかのようにキョロキョロと周りを見ながら、俺に近寄って来た。

 

「おかえり、アスティナちゃん。それで今日は何があったんだい・・・冷静沈着なセレーンさんがあれほど慌てているのを初めて見たんだけど?」 


 俺はこのリスタの質問に対して、どう返すべきなのだろうか・・・あの様子だと彼は仮面の人がセルーンということに気づいていないはず、それにセルーンは靴屋以外に冒険者ギルドの諜報部員としてのもう一つの顔がある。


 ならば、ここはあまり情報を出さずに彼が納得できるような話で誤魔化すことにしよう。


「ただいま、リスタ。今回はいつもと違ってほかのパーティーとの合同で討伐依頼を受けたんだよ。その中の一人がセレーンさんの友達だったらしくてな?」


「・・・なるほど、それであんなに焦っていたんだね。彼女も一人では歩けないほどに体力が消耗していたし・・・確かに心配になるよな・・・」


「まぁ、そういうこと。こっちも体力を使い果たしたのかあんなにいつも騒がしいエリンが大人しく寝ているほどだし、あっ、リスタ。いまのは俺たちだけの秘密な!」


「あはははは、それエリンが聞いたら絶対に怒るやつだね。わかったよ、それで・・・そちらの綺麗な女の人もほかのパーティーの人かい?」


 さて・・次のリスタの質問にはどう答えるべきか、俺とシスティの会話を横で聞いて彼なりにある程度の予想はついているはず、それなら彼の予想通りの答えを出した方が後々楽そうだ。というかメイド服姿のシスティが俺の事を【お嬢様】と呼んでいる時点で・・・それ以外の選択肢はない。


 俺は紹介も兼ねて彼の質問に答えることにした。どうせなら、ふたり一緒に紹介した方が楽だと思った俺はガーランさんがいる門前まで移動することを提案した。


 俺が「ただいま、ガーランさん」と手を振り、挨拶をするとガーランさんはいつも通り会釈で挨拶してくれた。


 この町に来て寝ていた期間も含めるとそろそろ4週間になるのだが・・・それでもまだ一度も彼の声を聞いたことが無い。


「えーと、彼女の名前はシスティ、見ての通り俺の従者なんだ。リスタ、ガーランさん、ふたりとも仲良くしてやってくれ。システィからもなにか一言あるか?」


 システィに軽く自己紹介しておくかと聞いてみたが、ただただ無言でこちらを見続けている・・・まさかのガーランさん2号かと思っていると彼女の口が動き出した。


「アスティナお嬢様のお世話をさせていただいております、システィと申します。どうぞよろしくお願いいたします」


 とエインを抱えたまま頭を下げた、するとシスティのサラサラな髪がエリンの顔にかかり、彼女はそれがむずがゆいのかまぶたがピクピクと動いていた。

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