第75話 俺、異世界でオークキング討伐その3
結論から言うと俺の作戦で進めることになったが俺の命中精度を知っているエリンは二の矢として、俺が外したときのために同じタイミングで矢を射ることが追加された。タイミングを合わせるのはアクアレイと矢とでは速度に違いがある、
アクアレイは空気抵抗を無視しているかのように時間差を感じることなく、ただただ真っすぐに放たれるのに対して、聖弓ユグドラシルは持ち主のエリンに合わせて性能が変化しているのもあるのか、彼女が思い描いている速度や軌道に合わせるように放たれる。
まぁその軌道の方・・・自動追尾については一度もまだ発動すらしていないどころか、3種類ある能力で自動生成しか未だに使っていない。
オークキングはそれで倒す、残ったオークはセルーンとの特訓で体に覚えさせた格闘術とエリンの弓で各個撃破で依頼達成というすごく大味な作戦だ・・・考えた俺が言うのもあれだが。
2週間の努力の成果を確かめたくて魔法や格闘術で倒すことばかりを考えていた俺は、センチネルが昨日会ったときに助言してくれた「アスティナを守護する者は絶対に呼ぶこと、分かったかい?」という言葉を完全に忘れていた・・・。
作戦も決まり、あとは行動に移すのみとなった俺はドローをして、アクアレイを手元に出現させる、横でその様子を見ていたエリンも弓を引く体制を取るといつでも射れると言わんばかりにこちらを見て、合図を待っているようだ。
「ふぅ・・・準備はいいか、エリン?」
「えぇ、いつでもいけるわよ」
「よっし、3から数えるから0なったらタイミングで狙撃だ」
狙撃するタイミングを決めると彼女は無言で頷くとオークキングに向け、弓弦がギリリィッ!音が出るまで引いた状態で待っている。
そんな彼女を横目に俺もカードを人差し指と中指の間で挟みながら持つとオークキングの額に照準を合わせた。
「カウント、3、2、1、ゼロッ!アクアレイ!!」
その掛け声とともに俺が放ったアクアレイとエリンの矢がオークキングに向けて放たれた。
少しタイミングが遅れたがやはりアクアレイの方が先に目標に届いたが、額には当たらずにオークキングの左目を直撃した。いままでの中ではかなりマシな部類なのは間違いないが即死させることは出来なかった。
「ぐおおおおおぉぉぉおおおおぉぉぉ!!」
樹海に響き渡るほどのオークキングの大きな叫び声が聞こえ、俺はたまらず両耳を手で塞いでしゃがみ込んだ。
フォレストエルフであるエリンは俺よりも聴覚が鋭いはずなのに耳を塞ぐことなく、真っすぐとオークキングを見据えている。
たまにあんな風に翠弓姫エリンとしての顔を出すの卑怯だよな、カッコいい上に可愛くて綺麗とか・・・ちょっと悔しいがさすがは俺の相棒だな。
何をされたのか分からずに激痛が走る左目を抑えようと、左手を顔に持って行こうとしていたとき、二の矢としての放たれたエリンの矢は見事、額に命中した。
「があああぁぁ・・・があぁ・・・・・・」
オークキングの左目を抑えようと力が入っていた左手がだらんと力が抜けると、座っていた切り株からそのまま仰向けで倒れた。離れていてもあの巨体が倒れた衝撃は凄まじくドオォォンッ!と激しい音と土煙が舞っている。
急にオークキングが倒れて動かなくなったことに動揺しているオークをエリンは坦々と1体ずつ、ヘッドショットで倒していく。さすがに半分を過ぎたあたりでオークもこちらに気づき、襲ってはきたが・・・結局、俺たちを攻撃できるほど近づくことは出来ずに全滅した。
思ったよりもすんなりと終わったことに安堵していると木の上で見ていたセルーンが降りてきた。
「もう終わっちゃったのね・・・心配して損したわ」
「俺は特に何にもしてないけどなぁ、狙撃も外したし・・・一番頑張ったエリンにご馳走を振る舞ってやらないとな、作るのはゲオリオさんだけど」
俺の話を聞いていたのかエリンは眼を見開いて、想像しただけでよだれが出たのか右手で口元に拭きながら話しかけてきた。
「今日・・・ご馳走なの!そういやあのシャドーウルフのお肉まだ食べてないわね・・・じゅる・・・」
「翠弓姫のときはあんなにカッコ良くて惚れ惚れするのになぁ」
そう呟くきながら、俺はエリンが倒したオークをストレージに収容していった。
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