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第70話 俺、異世界でセルーンとの特訓その2

 初回デコピン負けから、かれこれ2時間ほど経ったが・・・まだ一度もセルーンにこちらから触れられていない・・・。俺の戦闘スタイルとしては手はカードを使用するために開けておく必要があるため、足も使って戦えるようにするための特訓なのだが・・・さすがに一度も当たらないので両手も使ってとりあえずなにか一撃でもと試すのだが・・・やはり付け焼き刃ということもあり、自分でもビックリするほどに空振りを連発している。


 その間、ひたすらデコピンをされ続け・・・もう俺のおでこはずっとヒリヒリしている、吹っ飛ばされるほどのデコピンを受けてもヒリヒリですんでいるのはこのドレスによる自動回復のおかげだろう・・・だが、ずっとヒリヒリが継続しているということは回復が完全には追いついていないのか。


 ちょっとステータスを確認したいなと思っても、その時間を・・・1秒すら・・・まばたきする時間でさえ、彼女は与えてくれない。


 それでも最初に比べるとなんとなくではあるが彼女の動きが見えるようになってきた、まぁそれで回避できるかはまた別の話ではあるが・・・。


 最初の方はセルーンに近づくためにひたすら追いかけながら攻撃をしていたが・・・ただでさえ近づくのが困難な相手、しかも射程距離に入ったと思っても何事もなく躱されるばかり、中盤以降は俺なりに考え方を変えて、相手の動きを良く見て回避に専念し、攻撃を躱してから後の先・・・カウンターで一撃いれることが出来ないかやってみたが集中すればギリギリ、デコピンを躱すことは出来る・・・がそこからカウンターなどをする余裕が全くない。


 終盤はもうひたすらデコピンをただ躱すことだけに集中してみた・・・すると前までよりかは少し余裕をもって躱すことが出来た。セルーンの移動は遅い速いに関わらず、基本無音に等しい・・・そのため足音だけではどこから攻めて来るのかが判断出来ない・・・。


 だが、地面に足をつけている以上は足跡は必ず出来るものだ、俺はその足跡と彼女がどの方向に移動しようとしているのかを推理することにより70パーセントぐらいの確率で躱すことが出来るようになった。


 セルーンは俺がデコピンを躱せていることを褒めるように「アスティナちゃん、もうそこまで見えるのね!それじゃ最後にとっておきを見せてあげる♪」と言うと背伸びをし始め、次は両腕をだら~ん垂らす姿勢になる・・・そこからさらに彼女は左右に揺れ始め・・・最後にこう言った。


「一瞬だから・・・ヨクミテテネ・・・」


 ただ左右に揺れているだけのはずなのに俺には彼女の姿が2重に重なっているようにブレて見えた、なにか仕掛けてくると思い、急いで距離を取ろうとバックステップをしたのだが結果としては1歩も後ろに下がることも出来なかった。


 なぜなら彼女に背後から両肩をガッチリと抑えられて身動きが取れなかった・・・彼女と俺との距離は3メートルは離れていたはずなのにそれを一瞬で距離を詰めた上に背後にまわられていた。


 セルーンがまだ全然本気を出していなかったことに気づいた俺は「2週間で触れるようになれればいいなぁ・・・」と独り言を呟きながら後ろを振り向いた。


 背後を取っていたセルーンはそんな俺の顔を見て「アスティナちゃん、今日はここまでにしましょう」と特訓の終わりを告げてきた。そんな彼女に俺は「・・・・・・分かった」とまだ続けたい気持ちを抑えるように、そして自分の不甲斐なさを噛み締めるようにゆっくりと彼女に返事をした。


 最後に特訓をつけてくれたセルーンに「ありがとうございました!」と頭を下げると彼女は「はい、お疲れ様でした」と右手を振って返事をしてくれた。


 エリンはなにか食べ物をポーチから取り出してはスポーツ観戦をするおっさんのようにコップ片手に特訓を見ていたし、センチネルはあのあとすぐにセレーンさんに仕事が大量に残っていることを指摘され、1人寂しく帰っていった。セレーンさんはコップを受け取ったあとふらふらっとどこかに行った。


 今日の特訓も終了したし、エリンのところに行こうと歩き出すとふらふらっとどっかに行ったはずのセレーンさんがいるのが見えた。ただ肌も髪もツヤツヤしている上に少し湯気が出ているような・・・そして服装も受付嬢スタイルではなくて、部屋着のようなラフなものに変わっていた。


 この感じのセレーンさんも実にグッド!と心の中で親指を立てつつ、その姿を見て俺もさっさとここから離れて、風呂に入って汗を流したいという衝動に駆られた。


 宿屋に帰る前に今回のために結界を張ってくれたセレーンさんにお礼を言うと「どういたしまして、明日もこの時間から始めるので時間厳守でね♪」とセルーンとはまた逆で左手を振ってくれた。

 

 スポーツ観戦気分のエリンが散らかしているゴミを付近にあったゴミ箱に捨てると次に空になった水筒やコップを洗うために覚えたてのウォッシュを試してみた。水筒と人数分のコップにつき、それぞれ1枚ずついるのか分からなかったがとりあえず6枚取り出して「対象・・・水筒とコップ5つ」と唱えた。


 するとブクブクと泡が水筒やコップを包み込みはじめるとすぐに完全に見えなくなるまで泡が広がっていった。それから10秒ほど経つとポンッ!泡が急に消え、茶渋などが綺麗に取れた状態の水筒と指紋までも綺麗に取れた新品のようなコップが現れた。


 ウォッシュは洗浄する対象物の大きさや数などによって使用枚数が変更されるのかもしれない、なぜならいま手元にはまだカードが5枚ある。残ったカードをストレージに収容すると演習場を出る前にセルーン姉妹にもう一度会釈をすると宿屋に急行した。


 思った以上に体が疲れていたのか、風呂に入って寝る準備をするとすぐに夢の中に誘われた。

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