第7話 俺、異世界で樹海を彷徨う
「なぁ、エリンさん・・・。いつになったら町に着くのでしょうか?」
「あっれぇ~、おっかしいな~。こっちだと思ったんだけどなぁ」
冒険者の町ミストを目指し歩き始めて、もうかれこれ3時間以上歩き続けている。このままでは町に着く前に天に召されてしまうのではと思い始めていた。
『クインテット・ワールド』にはスペルカードで墓地蘇生もあったりはするが、それはあくまでクリーチャーカードを蘇生するのであって、プレイヤーの分身体であるリーダーカードは蘇生できない。そう考えると急に不安になってきた。
そもそもなぜ迷子になっているかというとエリンが自分の種族をフォレストエルフと言ったことから始まる。
「この樹海の出口、っていっていいのか分からんがどっちにいけば出られるんだ?」
「それなら、わたしに任せない!わたしこう見えてもフォレストエルフなんだから!!」
「なにをどう見て、フォレストエルフなのかは知らんが自信ありげだな」
「それはもちろん!フォレストエルフは森の友人とも呼ばれるほど森に詳しい種族なのよ!」
俺はそんな会話を思い出しながらエリンの後ろをついていくのであった。
「あのぉ、エリンさんまだですか~?さすがにこの景色はもう見飽きてるんですが?」
「・・・・・・・・・お願い、お願いだから、その他人行儀な喋り方やめてよぉぉ!」
まだあって半日どころか5時間も経っていないのだが、彼女のことを大体把握できるようになった。彼女はあれだ外見は完璧だが中身が残念なタイプのヤツだ。
なんの根拠もないのにただそれを信じて全力で進んで行こうとする。猪突猛進とはまさにこのことだ、俺も他人のことはいえないけど。
「この感じ懐かしいわー、第一印象こんな感じだったな。今日中に樹海から出れるんだろうか・・・そういやエリンが疲れたら、これを飲めって初級ポーションくれてたな。エナジードリンクみたいなものなのか?お言葉に甘えて早速いただきます」
ひと口飲んだだけなのに初級ポーションを持っている右手がブレーキをかけるように2回目を飲むことを拒絶するほどに凄まじい味がした・・・。あえて例えるなら・・・料理をしない人がとりあえず健康だから栄養があるからとありとあらゆるモノをミキサーに入れて味見もせずに作ったようなやつだ・・・。
「なんだこの味、マズイとかっていうレベルじゃないぞ、冒険者は毎回これを飲んでいるのか。でもポーションってことはアイテムの可能性が高い・・・念のためショップ(カード)を確認してみるか」
この3時間の迷子の間に俺は心の中でステータスオープンと言うと画面が表示されることを新しく覚えていたのである。商品を確認するためにショップ(カード)の文字に触れた。すると彼女からもらった初級ポーションが販売されていた。
「お、思ったとおり売ってたな。値段は銅貨4枚か・・・。これが適正価格なのかわからんな。こういうのはやはりエリンに聞いてみるのが一番だな、いうても冒険者だし」
俺は先行しているエリンに早速聞いてみることにした。
「なぁ、エリン俺にくれたあの初級ポーションの値段教えてくれ」
「初級ポーションの値段・・・?えーとね、銅貨2枚だけど、それがどうしたの?ま、まさか初級ポーション代を払おうとしてるんじゃないでしょうね。断固として受け取らないわよ!」
銅貨2枚だと・・・、ショップ(カード)で見たら銅貨4枚だったはず・・・。
どうやらカードとして購入をする場合、金額が相場の2倍になるようだ。いまは金貨1,000枚はあるがなんでもかんでもショップ(カード)で買わない方が良さそうだ。
出来るだけこの世界の店で買うことにしようと俺は心に決めた。それとなにか前で声が聞こえた気がしたが無視した。
「あれ・・・聞こえてますか~?またこの感じですか~?あれ・・・あれれ、無視しないでよぉぉぉ!」
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