第64話 俺、異世界で生肉を手に入れる
今ごろになってやっと状況を理解したことに気づいた俺を見たガラクはさらに話を続けた。
「そんな魔石を見たいと思っている連中と、どうやって魔石を傷つけずに倒したのか方法を聞きに来ている連中が集まりやがってあーなっちまってるってわけだ・・・。まぁそれ以外の考えのやつもいそうだがな・・・」
「なるほど・・・な。でも、ここにはもう魔石置いていないだろ?」
「あぁ、お前さんの言う通りだ。ここで買い取った魔石は職人ギルドに流す決まりだしな!とはいっても買取額が変更されたからあと一歩のとこでまだ止まってはいるがな」
「あー、そういうことか。そのまま進めておいてくれて構わない、買取額が下がったのならともかく上がったのに断る要素など皆無だろ」
ガラクはそう返事されることを見越していたのか受領書をすぐに発行できる準備をしていた。そして金貨1,100枚で買い取り手続きを完了するとガラクが俺に冒険者カードを確認するように言ってきた。
ガラクに言われるがままエリンと同じように首から下げていた冒険者カードをドレスの首元から手を突っ込んで取り出し、確認してみるとなぜかカードそのものが光ってはすぐ消えるという点滅状態になっていた。
俺はこれがなにを意味しているのかさっぱり分からなかったので冒険者カードを見ながら停止しているとガラクは冒険者カードを指差しながら「下部分の白いとこを触ってみな!」と言ってきた。
ガラクの指示通りにカードの白い箇所に触れてみると・・・先ほどまでただ白いだけだった部分に文字が浮かび上がるとそこには「金貨1,100枚増えました」という何とも言い難い文章が表示された・・・。表示された文章を見ながら俺は「振込完了の通知か・・・これ」と呟いた。
これで俺の残高はカード購入費用としての金貨100枚といま振り込まれた金貨1,100枚を足した額・・・合計金貨1,200枚になっているということか。金貨1,200枚・・・つまり1,200万円か・・・最高額だった俺のコレクション1,000万円をスッと塗り替えたなぁ・・・まぁいいんだけどさ。
「ガラク、この文章が出たってことは手続きを完了ってことでいいんだよな?」
「あぁ、これでお前さんのとこに金貨1,100枚が振り込まれているはずだ。それとあとで冒険者ギルドにもよっておけよ。買い取りが完了したことは冒険者ギルドにも伝わっているからよ。これで依頼も達成されているはずだぜ!」
「りょうかいだ!いろいろとありがとうな・・・それで出るときもシャッターの方がまだ良さそうか・・・?」
「・・・あぁ、そうだな。まだ買取所からは出ない方がいいと思うぜ!」
「わかった。エリンそういうことだから、またあのシャッターを通るぞ!」
そう言いながら俺は彼女の肩に手を置いたのだが反応が無かった・・・これはあれだ・・・まだ現実逃避をしているなと思い、彼女にある言葉を耳打ちすることにした。
「シャドーウルフのお・に・く」
効果てきめんらしく、「お・に・く」どころか「シャドー」と言った辺りでもうすでに動き始めていたように思えた。こちらの世界に戻ってきた彼女はすぐにガラクに「どこにあるの!わたしのおにくはどこ!どこにあるの!!」と催促し始めた・・・その切羽詰まった形相に言葉を失くした彼は指でただ場所を示すことしかできなかったようだ。
目的の物を見つけた彼女はシャドーウルフを討伐したときの弓捌きよりも早いのではないかという動きを見せたと思ったときにはもう彼女の手中に収まっていた。そしてすごく嬉しそうに笑みを浮かべながら、袋に入れられている生肉を抱きしめている・・・。
さすがに生肉をそのまま持って移動はどうかと思った俺は「それストレージに収容するから渡してくれ」と彼女に伝えると、エリンはとても・・・それはとても悲しそうな顔をしながら手渡してくれた。いや・・・楽しみにしていたのは分かるが・・・それほどなのかと思いながら袋に入ったまだ少しだけ温かい生肉をストレージに収容するのであった。
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