第62話 俺、異世界で買い取り額に驚愕する
1時間が経過したのを確認した俺たちは師匠の本屋からおいとまするとその足で買取所に向かうことにした。師匠は別れ際に「今度はちゃんと酒持ってくるんだよ」といい残して部屋に戻っていった。
その様子を見て俺は「あっ、この人また寝る気だな・・・」と思ったが特にエリンも気にしていない様子だったのでいわないことにした。
魔法については前に読んだ魔法書の本棚にある本でまだ読んでいなさそうな魔法書を選んで読んでみたが結局一つも覚えることはできなかった。しかしなぜか主婦が手に取りそうな生活の知恵という本で一つだけ魔法を覚えることができた。
初級無属性のウォッシュという魔法で効果は対象を指定すると洗浄し汚れを落としてくれるらしい。どこでも食器を洗うことができるようになるのは助かる・・・が毎回金貨1枚分の魔法をホイホイと使うわけにもいかないけど。
それよりも魔法書以外の本でも魔法を取得できることを知れたのが一番の成果だろう。これからは色んな本を読んでみるか、まぁ元々本を読むこと自体はそんなに嫌いではないし、それに魔法書以外の本は普通に文字が読める。ただ一ついいたいことがあるとすれば、漫画ならもっと良かったということぐらいか。
この先どんな魔法を覚えられるのか楽しみだなと思いながら歩いているとやっと魔物買取所が見えてきた・・・がさっきとは様子がいささかおかしく思えた。
人混みというのに相応しいほどに人の数が増えていた・・・そしてなぜかみんな買取所の中の様子を見ようと必死になっているようだった。
俺とエリンは一体なにがあったのか知るために走って買取所に向かった。買取所に近づくとガラクが騒ぎを抑えるためか入り口の前まで出てきていた。
俺たちが帰ってきたことに気づいたのかガラクはこっちを見ながら手招きをしながらなにかいっているように思えた。ただこっちに来いというジェスチャーは分かったがそれ以外はなにを伝えようとしているのかは全くといっていいほど分からない・・・。
ガラクもそのことに気づいたのか今度は後ろを向いては指差しをするジェスチャーに変化し、その次は両手を挙げては一気に降ろす動作を繰り返し始めた。その2連の動作でやっと俺は彼がなにを伝えようとしていたのかを理解できた。相棒はまだ考えている様子だったが俺は「あとで正解教えてやるから、まずは移動しようぜ!」というと彼女の手を掴むとガラクの指示通り解体場のシャッターを目指した。
買取所の反対側まで行くとシャッターの前で俺たちのことを待っていたのか職人さんがひとりで佇んでいた。そして俺たちが近づくとその職人さんはシャッターを叩きながら「翠弓姫のご到着だ!」と俺たちが来たことを解体場の中にいる職人に伝えると大人がしゃがんで通れるかどうかぐらいの高さまでシャッターを開けると中に入るように促した。
俺たちが解体場に入ったことを確認するとすぐにまたシャッターを降ろした。そしてつい先ほどまで買取所の前にいたはずのガラクもそこにいた。俺がガラクになにがあったのかと聞きだす前に彼の方からなにか書かれた紙を手渡された。
「外のことを説明する前に・・・まずはこれを見てくれ・・・」
その紙は今回買い取ってもらったシャドーウルフ11匹の値段が書かれた査定表のようだ。なぜ今ごろになってそんなことをするのかと不思議に思いながら、値段を確認すると・・・倒した11匹の買い取り額がそれぞれ金貨100枚に変更されていた。つまり合計金貨1,100枚ということだ・・・。
金貨1,100枚だと・・・1時間前までは金貨520枚だったはず・・・俺たちがここを出て行ってから一体なにがあったんだ・・・。エリンは買い取り額の高さを受け止められなかったのか現実逃避をするようにひとり遠くを見ている・・・。俺はその横で紙とガラクを交互に見ながらガラクに最初の査定額よりも高くなっていることを質問した。
「えっ・・・いや・・・倍以上になってるのもあるし・・・なんで?」
ガラクは少し興奮気味になぜ買い取り額が高くなったのか理由を教えてくれた。
「シャドーウルフが魔石を持っていたんだよ・・・しかも11匹全部が!こいつはさすがの俺も驚いたぜ!!」
また知らないワードが出てきた・・・魔石ってなんだ。俺はガラクにその魔石について聞く前に解体場にある石の中に魔石がないか次々と視界にいれて鑑定を試してみた。結果としては魔石は一つもヒットしなかった・・・というか全部ただの石として表記されなかった。・・・よし、素直にガラクに魔石がなにか聞いてみよう。
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