第60話 俺、異世界で間違い探しをする
さすがのエリンも信用していない様子だったが靴使うから靴屋という雑な発想で無理矢理押し通すと決めた俺は途中彼女にあーだこーだいいわれながらも無事に目的の靴屋に到着することができた。
靴屋に入るとすぐに「いらっしゃいませ!!」とセルーンの声が聞こえた・・・のだが・・・なぜかいつもと違う雰囲気がした。声の感じもいつものセルーンで間違いないはずなのになぜか違和感があった。
セルーンはシューズラックに置かれている靴を見やすいように陳列している最中だったようだが接客するために俺たちに近づいてきたときにその原因がハッキリとした。
「エリンにアスティナちゃん。いらっしゃいませ!今日はどうしたの?」
「・・・・・・あの・・・セレーンさんですよね・・・」
「・・・アスティナさんどうして分かったの?声色も姉さんに合わせていたはずなんだけどこんなにすぐに気づかれるなんて自信が無くなりそうだわ・・・」
「・・・・・・あなたセレーンなの?安心していいわよ。わたしは全然分からなかったから!!」
自信満々にいうエリンの言葉を聞いたセレーンさんは苦笑いを浮かべつつ「ありがとうございます・・・」と返すのであった。
俺が彼女はセレーンだと確信したのはもちろんあれだ・・・そう胸です・・・。さらしでも巻いているのか受付嬢として会ったときよりも多少ボリュームは無くなっているようには見えたがそれでもセルーンに比べると明らかに違っていた。
ただそれで気づいたということは絶対に口に出すわけにはいかない・・・。
ヒマリさんがいっていた用事がこのことだったのかと思い出しつつもまずはセルーンがどこにいったのか聞いてみることにした。
「それでセルーンお姉ちゃんはいまどこに?」
「姉さんはいま例のあれを探しに行ってるところよ。予定だと夕食前には戻ってくるとは思うわ」
「あー、すっかり忘れてた・・・。その時間からだとセルーンお姉ちゃん練習相手になってくれるんだろうか・・・」
「それは大丈夫だと思うわ。アスティナさんに会えば疲れなんて吹き飛ぶだろうしね」
そのことを聞いて俺は安心しつつもこれからは晩御飯を食べてからセルーンとの練習か・・・とつい思ってしまった。オークキングに挑むまでにできるだけ動けるようになっていたければいけないことを考慮するならばやるしかないか。
そしてここでの予定はもうこれで終わりだな。残っている予定は食器を見に行くか本屋に向かうかなのだがその前に一つ気になることがあったのでセレーンさんにそのことを聞いてみることにした。
「それで・・・セレーンさんどうしてセルーンお姉ちゃんの真似してたんだ?」
「店員さんが体調を崩してお店に出れないらしくて、それで姉さんにヘルプを頼まれたのよ。普通に手伝うよりもこっちの方が面白そうじゃないかと思ってね。それにアスティナさん以外には一度もバレなかったのよ?」
「ふむ・・・結構すぐに分かったけど・・・・・・あっ」
「アスティナさんどの辺が姉さんと違っていた?今後のためにも是非教えて欲しいのだけど」
すぐにボロを出してしまった・・・。セレーンさんに「違いは胸を大きさです!」とは絶対にいえない・・・。
なにか胸以外に双子を見分ける方法はないのかとセルーンの顔を思い出しながら前にいるセレーンさんの顔をジーっと見つめ続けると胸以外にも違う個所を見つけることができた。
「それは・・・ふたりの泣きぼくろの位置が左右逆だ!!」
俺がなんとか導き出した答えを聞いた彼女は「よく見ていますね、アスティナさん」といってくれた。とりあえずはこの答えで納得してくれたようだ・・・。
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