第59話 俺、異世界で査定結果を教えてもらう
ガラクが査定している間、俺は解体場をもう一度見てみることにした。第一印象がワインレッドなのはいまもまだ変わってはいない・・・が全体を見渡すと右奥に大きな棚があるのが見えた。
どうやらその棚にはここで働いている職人が使用する道具が置かれているようで素人の俺が遠目から見てもすぐに分かるほどに綺麗に整理整頓がなされていた。
解体場に入ったときには気づく余裕もなかったが正面は壁ではなくシャッターが降りているようだった。大型の魔物を持って来ることを考えた場合、どう考えても俺が通ってきた入り口の大きさでは無理がある。そのために買取所の裏側である解体場にそのまま持って来れるようにしているということか。
俺もそのうちシャッター側から持って来るような大型の魔物と対峙することもあるかもしれないな・・・と考えているとガラクの査定が終わったらしく俺たちに声をかけてきた。
「シャドーウルフの査定終わったぜ!・・・11匹全部でこの額でどうだ?」
俺とエリンはガラクが提示した金額を確認すると顔を見合わせはまた金額を確認するという流れを3回してしまった・・・。
ヘッドショットで倒した9匹がそれぞれ金貨50枚・・・合計450枚で残り2匹がそれぞれ金貨30枚と40枚・・・つまりは全部で金貨520枚だというのだ。
それは俺が集めたコレクションの半分を占める金額だ。そして女神に売却されたことを思い出して・・・またちょっと泣きそうになった。
「ガラク、本当にこんなに高く買い取ってもらっていいの?」
「これでも正直なところまだ安いと俺は思っている!だけど出せるのはこれが限界なんだ・・・すまねぇな」
「金貨520枚よ・・・わたしたちはこれで大満足よ!でも・・・ガラクまだ安いと思っているのなら、ちょっとご相談があるんだけど?」
「あぁ、なんでもいってくれ!買い取り額は上げることはできないがそれ以外ならなんでもやるぜ!!」
このときあとエリンがガラクになにをいうのか手に取るように分かってしまった。討伐依頼を受けたときから倒すまでそしていまに至るまで彼女の目的は最初から一切変わっていないからだ。
「それじゃシャドーウルフの美味しい部分を切り分けて頂戴!!」
「・・・・・・おぅ?それぐらいならお安い御用だ!多少にくが減ったところで買い取り額は変わらねぇ!!」
「エリンの我がままを聞いてくれてありがとうな」
「お前さんが気にすることじゃないぜ!最高の部位を切り分けておいてやるから楽しみに待っておきな!この額で手続きをやっておくから1時間後ぐらいにまた来な!そのときに切り分けたにくも用意しておくからよ!!」
彼はそういうと道具が置かれている棚に向かって歩いて行った。俺はその移動する後ろ姿を見ながら1時間をどう過ごすべきか悩んだ。
靴屋に向かいセルーンにレッスンを指導してもらうか・・・それとも食器類などを買いに行くか・・・それか他にまだ読んでいない魔法書があるかもしれないので師匠のとこで本を物色しに行くべきか・・・。
どちらにせよまずは移動をしないことには始まらないのでとりあえず魔物買取所から出ることにした。外に出ると空気がとても美味しく感じた・・・どうやらあの場所にいたときはさほど気にならなかったが魔物をひたすらバラしているんだからそう感じるのも当たり前か・・・。
「それでアスティナ次はどこに行く?」
「そうだなー、まずは靴屋に行ってみようと思う」
「・・・本当にセルーンに教わる気なのね・・・」
「あぁ、そうだよ」
そう返すと彼女は大袈裟に驚いて見せるとすぐに冷静さを取り戻したのか真顔でこっちを見ながら「本当にセルーンで大丈夫なの?」と念を押してきた。
仮面バージョンの彼女を知らない人からすれば確かにそう思ってしまうことも無理はないだろう。ただ一度でもあの状態の彼女と交戦したことがある人なら俺と同じ意見になるだろう。
問題は仮面バージョンのことをエリンに説明することができない点だ・・・まぁ靴使うから靴屋に教えてもらうということすればいいか・・・。
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