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第6話 俺、異世界で不死族がいないことを知る

「それにしてもアスティナって、貴族のお嬢様っぽいのにどうして樹海ミストにいたの?しかも、靴も履いてないし護衛も見当たらないし」


 彼女からそう聞かれた俺は・・・この場合どう答えるべきか悩んだ。素直に転生したことを伝えるべきか、それとも定番の記憶喪失か。もしくは、靴を履いていないことを考慮して道中襲われたことにするか。ここはやはり記憶喪失のパターンにしておくか。


 出来るだけ情報は開示しない方がいまのところは良さそうだしな。まぁ、もう例の騎士様を見せている時点で軽くアウトなんだけど・・・。


「それがどうして樹海にいたのか分からないんだ、ここが樹海ミストっていうのもエリンが教えてくれるまで知らなかったしな」


「えっ、それって記憶喪失とかいうのじゃないの?」


「あー、そうみたいだな。だからエリン俺に色々とこの世界についてを教えてくれよ!」


「ま、任せてなさい!アスティナが記憶を取り戻すまでわたしが一緒にいてあげるわ!!」


 なにがどう変換されて、一緒にいることになったのかはこの際スルーしておこう。俺は彼女からこの世界について、いろいろと教えてもらった。まず、俺がいるこの樹海ミストはアルトグラム王国という人族の領土であるらしい。

 

 彼女が言うには種族間で争っていたのは500年以上も前だというのだ。ただ種族内でもまだ古い考えの人もいて、交流をしようとしない人たちもいるらしい。


 それ以外にも色々と聞いたのだが、彼女は話に熱中するとスキンシップが多くなる癖があるらしく、俺は後半耐えることに精一杯で聞いてる余裕がなかった。


 とりあえず彼女の話が一段落し、やっと激しいスキンシップも終わったことを確認すると俺は冷静を装うために呼吸を整えるのに必死だった。たくさん教えてくれたんだけど、ほとんど覚えてないわ・・・。


 この樹海の近くにはミストという町があるらしく、まずはエリンとその町に向かうことにした。ただ樹海ミストの近くにある町だから、冒険者の町ミストとか安直すぎなんじゃないかと思ったが黙っておいた。


 俺は彼女が教えてくれた中で種族のことが気になり聞いてみた。


「なぁ、エリン不死族って聞いたことないか?」


「不死族・・・、わたしは聞いたことがないかも」


 俺はそこで軽く思考停止してしまった。不死族を聞いたことがないと彼女は言った。アスティナはカテゴリーとしては不死族のはずだ。確かにハーフヴァンパイアという種族にはなってはいたが、それでも俺は不死族のハーフヴァンパイアだといままで思い込んでいた。


「うそだろ・・・」


 不死族がいないという言葉が心に突き刺さり、気づけば俺はこの世界に来て初めて涙が零れた。隣を歩いている”エリン”はそんな俺の様子を見て不安そうにしていた。


「アスティナどうしたの?どこか痛いの?」


 彼女にいらぬ心配をさせてしまったか・・・、しっかりしろ俺。女の人を不安にさせるとか最低だな。


 さて、この場合どうやって雰囲気をよくすればいいのか分からん。なんか話のネタはないだろうか、考えろ考えろ。


「そういや、エリンはどうして冒険者になったんだ?俺のイメージではエルフは自分の領土から出ないイメージなんだが」


「えっ、そうね。確かにアスティナが言うようにエルフ族はあまり友好的ではないし、外にも出ない人が多いわね。それでもみんながみんな、そういう人たちってわけでもないのよ?わたしはずーと同じ景色を見るのに飽きたのよね、だから自分の国から出ることにしたの」


 そう彼女はさっきまでの不安そうだった表情が消え、いまは笑顔で話しかけてくれている。


「それに森を出て冒険者になったおかげでアスティナにも会えたんだから♪」


「だから、急にそういうのやめろよ。こっちまで恥ずかしくなるだろ!」


 そんな会話をしつつも、不死族がいないという言葉が心にずっと突き刺さっているのを感じた。

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