第57話 俺、異世界でヒマリに会う
「というわけなんでカテリーヌさんも内密でお願いします!」
「誰にもいうわけないから安心しな。それにあんたらになにかあったら娘のリリアーヌが悲しむからね。もちろん、わたしも旦那もね」
「カテリーヌさんならそういってくれると思ってたぜ!」
「それにしてもこれだけの量・・・食べきれるか分からないよ」
「皿ごとに大まかだけど日持ちするやつと日持ちしないやつで分けておいたから・・・それに」
「食べきれないなら、カテリーヌさん・・・客にハーブティーとセットで出すっていう手もあるが?」
「あんたねぇ・・・あんたがそれでいいのならわたしは別に構わないけどさぁ・・・」
俺の提案に対してカテリーヌさんはため息をつきながらも食べきれずに最後に捨てることになるのならばそれも悪くはないと肯定はしてくれた。
ただしその提案はひとりの少女の魂がこもった叫びによって拒否されることになる。
「だ~~め~~~~!わたしがもらったの!わたしが全部食べるの!た~べ~る~の~!!」
「あんたって子は・・・・・・本当に全部食べるんだろうねぇ!!」
「たべる・・・全部たべるんだもん!!」
「あははははは!!まぁすぐに食べない分は冷凍庫にでも入れて置けばいいよ。それに凍ったケーキとかも案外うまいぜ!」
「・・・・・・なにそれ・・・わたし聞いてないんだけど?」
「いや・・・そりゃ今さっき初めていったからな?」
「・・・わかったよ、わかりましたよ。カテリーヌさんすまないがエリンの分もついでに冷凍庫に入れて置いてくれないか」
そういうと俺はエリン用にまたケーキを何種類か取り出し、皿に載せるとカテリーヌさんに凍らせてもらえるように頼むのであった。ふと時計に目をやるとこのお菓子パーティーで1時間ほど経過していることに気づいた。
別に報告をするだけならば多少遅れようが構わないのだがこのあとの予定のセルーンとの近接戦闘の練習や食器などの買い物・・・まぁこの食器の方は野宿をするようなハードな依頼が来ない限りはそれほど急ぐ必要ないかもしれないが・・・。
「エリンちょっとゆっくりし過ぎた。このあとの予定が・・・」
「あ~、そうだったわね。それじゃまずはギルドに報告に行きましょうか」
「カテリーヌさん、リリアーヌそれじゃ行ってくるよ」
「はいよ。ちゃんと凍らせておくから安心していってきな」
「いってらっしゃい!お菓子いっぱいありがとうね。アスティナちゃん!」
俺たちは宿屋を出るとシャドーウルフの依頼達成を報告するべく冒険者ギルドに向かった。ギルドに到着した俺はまずは受付窓口にセレーンさんがいないか確認した。しかしセレーンさんらしき人物を見つけることができなかった。
どうせなら報告もセレーンさんにしたかったがこのあともまだやることがある・・・残念だが今回は他の受付嬢に依頼達成の報告をすることにした。
俺はセレーンさん以外の受付嬢に会うのはこれが初めてだがエリンは彼女のことを知っているらしく、いつものようにフレンドリーに会話をし始めた。
「ねぇヒマリ!セレーンに報告しに来たんだけどいないのかしら?」
「こんにちは・・・エリンさん。セレーンさんはいま他の要件で外出されてます」
「そう・・なのね。それじゃヒマリ、悪いんだけど代わりに依頼達成の手続きやってもらっていい?」
「・・・はい、大丈夫です。え~とエリンさんの依頼は・・・シャドーウルフの討伐ですね。それでは討伐の証拠となる品の提出をお願いします」
「あっ・・・アスティナ・・・・・・あれ・・・そのまま出したらまずいわよね?」
「だろうなぁ・・・しかも11匹いるからなぁ・・・・・・人によってはあれトラウマになるんじゃないか・・・」
「あのぉ?エリンさんどうされましたか?」
「ごめんヒマリ!今回は買取所経由でお願いするわ。さすがにシャドーウルフを提出するのはまずいわ・・・」
「牙じゃなくて・・・シャドーウルフですか?・・・あ~、それは買取所の方が良さそうですね・・・」
そんなヒマリさんは深々と帽子を被った緑の髪と黄色い瞳をした少し大人しそうな雰囲気がある女性だった。
エリンと会話をしているヒマリさんだが最後まで相手の目を見て話そうとはしなかった。ちょっとあることを試してみたいという悪戯心もあったが今回はやめておいた。
目を見て話すのがとても苦手なお姉さんです。見つめ続けるとパニックを起こし暴走状態に入ります。
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