第56話 俺、異世界でお菓子パーティーをする
それから俺はレモンステーキを美味しく頂くと、いつものように食後のハーブティーを飲みながら優雅なひとときを満喫していた。その隣ではエリンとリリアーヌによるお菓子パーティーが始まろうとしていた・・・。
ことの発端はそもそも俺があのタイミングで大福を出したことがいけなかったのだが・・・あのあとエリンにあれやこれやとお菓子を出すことを催促されたので仕方なくリリアーヌにお皿を持って来て欲しいと頼んだ。
リリアーヌは不思議そうに白い皿を1枚持ってきてくれた。俺はリリアーヌに「いまからすること俺たちだけの秘密だからな?」というと白い皿にセンチネルのところから大量に回収してきたお菓子を載せていった。種類を多めにしてその分少量ずつにすることで色んなお菓子を楽しめるようにしておいた。
それからリリアーヌの目は自分が持ってきた皿に釘付けになっていた。
「アスティナちゃん、アスティナちゃん、これ食べていいの?」
「あぁ、もちろん!ただし・・・秘密を守ると誓えるのならな?」
「・・・もぐもぐ・・・・・・はい、守ります!!」
「エリンお前じゃねぇよ・・・。それに食べてからいうなよ・・・・・・」
「はい、わたしも守ります!ねぇアスティナちゃんこれでいい?」
「リリアーヌは本当に良くできた子だわ・・・。好きなだけ食べていいぞ」
「わぁい!え~と、え~と・・・どれにしようかな・・・う~ん・・・あれも美味しそうだしなぁ」
最初の1個目をどれにするか悩んでいる彼女に俺は「早く選ばないとエリンお姉ちゃんに全部食べられちゃうぞ!」というと、その言葉で急に焦り出したのか目の前にあったクッキーを手に取って食べ始めた。そしてクッキーを飲み込むと彼女の動きが止まった。
その様子を見ていた俺とエリンはタイミングを合わせたかのように顔を見合わせてはまたリリアーヌへと視点を移した。それから10秒ほど経つとリリアーヌがまた動き出したと同時にお菓子を一心不乱に食べ始めた。
「なにこれ!なにこれ!どれもおいしいよ!!」
「でしょ?わたしのお勧めはこの口にいれた瞬間溶けてなくなっちゃうチーズケーキよ!!」
「・・・・・・!?本当に無くなっちゃったよ!エリンお姉ちゃん!!」
「俺のお勧めはこの白くて丸いやつ・・・その名も大福だ!!」
「こっちはまんまるで可愛いね!それにやわらかいし、もちもちしてるし・・・おいしい!!」
気づけば先ほどまで優雅な時間がとかいっていた俺はどこにいったのかというぐらいに彼女たちと一緒にお菓子パーティーを楽しんでいた。だがそんな楽しい時間もそろそろ終わりを告げようとしている・・・。なぜなら皿に載っていたお菓子もあとはクッキーが1枚残るのみとなったから。
その最後の1枚をリリアーヌに食べてもらおうと皿を彼女の方に寄せた。しかしリリアーヌは手を伸ばそうとはしない・・・。
この感じ・・・雰囲気を俺は良く知っている気がする。最後の1個になるとなぜか遠慮してみんな食べようとしないあの例の現象のやつだ・・・。
「リリアーヌ、それ食べないのなら俺が食うけどいいのか?」
「・・・・・・う~ん」
「リリアーヌちゃん食べないの?それならわたしが食べるわね!」
エリンが最後の1枚に手を伸ばそうとしたときリリアーヌが食べられまいと手を伸ばして口に放り込んだ。その食べ方が小動物のようでとても愛らしく見え、気づいたときは俺はリリアーヌの頭をナデナデしていた・・・。
そのとき俺は相棒のエリンの影響を確実に受けているのだろうと思った。なぜならやっていることがエリンにいつもやられていることと同じだった・・・。
「可愛いは正義っていうしな・・・これは仕方ないよな・・・仕方ない」
「アスティナちゃん・・・いきなりどうしたの?」
「いや・・・リリアーヌはいい子だなと思ってな。というわけで余っている皿とかない?」
「お母さんにいえば使っていないお皿を用意してくれるかも」
「それじゃカテリーヌさんに聞いてもらえるか?」
「ちょっと待っててね」
それからカテリーヌさんとリリアーヌが皿を持って来てくれるとそこに次々とお菓子を載せていくのであった。
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